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大商人への道
347ー2 覇王・勇者学園都市(3)ー2
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「よし、スイッチを入れる」
ゴウンゴウンと音をたて魔術具は起動し、3分経過したところで、エクレアが【再生草】を入れてと最後の指示を出した。
どうかいつものようにピカッと光り輝きますようにと祈りながら、魔術具を凝視する。
魔術具の音が一段と高くなり、魔石の魔力がどんどん減っていく。
……これほどの魔力を消費するのは初めてだ。
……魔力の高い素材を使うには、どうやら250以上の魔力量が必要だな。
七色の魔石が透明に近付いた時、出来上がったポーションが、いつもより眩しくピカッと光り、美しい緑色の霧のようなモノが魔術具から溢れてくる。
『完成したわよアコル』
「ああ、どうやら上手くいったようだ。ありがとうエクレア」
満面の笑顔を俺に向けるエクレアに、俺は心から礼を言う。
いつもどんな時も、エクレアは俺を信じて勇気と元気を与えてくれる。
「できることなら商業ギルドに行って、鑑定魔術具を使いたいところだが時間がない。エリス、俺を信じて任せてくれ」
出来上がったポーションを持って、急いでラリエスたちの所へ戻った俺は、開口一番、任せろと不敵な笑みを浮かべて言った。
『エクレア様がにこにこしているから、絶対に大丈夫だエリス』と、守護妖精のトワがエリスに言う。
……なんだよ、俺じゃなくてエクレアの方が信用高いのかよ。
「ラリエス、小さな穴で試すが、効果が現れて穴が塞がったら、30分は様子を診てから、大きな穴を塞ぐ治療はお前がやってやれ。
俺は足に取り付けられている籠を外し、その後は覇王軍本部や冒険者ギルド龍山支部と連絡を取り指示を出す」
「承知しました」
俺は中身の見えない黒色の中瓶に入ったポーションをラリエスに渡し、自分は同じ黒色の小瓶を持ってエリスの左翼の前に立つ。
「大丈夫、絶対に上手くいく」と、俺は自分に言い聞かせるよう口に出し、20センチ程の穴があいている部分に、ポーションをぽたりぽたりと落としていく。
わずか3滴ほど落としたところで、信じられない奇跡のような現象が起こった。
「えっ、もう穴が塞がった?」とラリエスが驚きの声を上げる。
「う~ん、金色というより銀色に近い色で修復されていく」と、内心恐れていた現象を目の当たりにし、俺はう~んと唸った。
……いや、黒じゃなくて良かったんじゃないか? いやいや、ずっと銀色のままだったらどうする?
『グレードラゴンとも違う色だわ。あれはくすんだ灰色だけど、これは光り輝くシルバーだもの』
俺の契約妖精ユテがエリスの翼をまじまじと見て、金色より眩しいかもと付け加える。
「エリス、痛みはないか? 気分が悪くなったりしてないか?」
『いいえアコル様、痛みも違和感もないです。あっ、でも、なんだか少し元気になったような気がします』
……やはり心臓は、生命力を上げる効果があるのかもしれない。
「ポーションが有効なのは分かったが、まだ油断はできない。ラリエス、しっかり経過観察してから、少しずつポーションを垂らしてくれ。
人間用じゃないから、決して手で触れるなよ」
「はいアコル様。良かった。本当に良かったなエリス。ありがとうございますアコル様」
嬉し涙を流しながらエリスの首に抱き付くラリエスを見て、トワもユテもエクレアも、もらい泣きしながら喜んでいる。
エリスの足の籠を外して、俺は1人で少し開けた場所へと移動する。
上空のグレードラゴンの動きに注視しながら、ユテには覇王軍本部へ、エクレアには冒険者ギルド龍山支部へと瞬間移動してもらった。
『大変よアコル。グレードラゴンの群の一部が、マギ領内で人間を襲い始めたらしいわ。きっとティー山脈から来たグレードラゴンの方だわ』
瞬間移動して僅か10分で戻ってきたエクレアが、最悪の報告をする。
ゴウンゴウンと音をたて魔術具は起動し、3分経過したところで、エクレアが【再生草】を入れてと最後の指示を出した。
どうかいつものようにピカッと光り輝きますようにと祈りながら、魔術具を凝視する。
魔術具の音が一段と高くなり、魔石の魔力がどんどん減っていく。
……これほどの魔力を消費するのは初めてだ。
……魔力の高い素材を使うには、どうやら250以上の魔力量が必要だな。
七色の魔石が透明に近付いた時、出来上がったポーションが、いつもより眩しくピカッと光り、美しい緑色の霧のようなモノが魔術具から溢れてくる。
『完成したわよアコル』
「ああ、どうやら上手くいったようだ。ありがとうエクレア」
満面の笑顔を俺に向けるエクレアに、俺は心から礼を言う。
いつもどんな時も、エクレアは俺を信じて勇気と元気を与えてくれる。
「できることなら商業ギルドに行って、鑑定魔術具を使いたいところだが時間がない。エリス、俺を信じて任せてくれ」
出来上がったポーションを持って、急いでラリエスたちの所へ戻った俺は、開口一番、任せろと不敵な笑みを浮かべて言った。
『エクレア様がにこにこしているから、絶対に大丈夫だエリス』と、守護妖精のトワがエリスに言う。
……なんだよ、俺じゃなくてエクレアの方が信用高いのかよ。
「ラリエス、小さな穴で試すが、効果が現れて穴が塞がったら、30分は様子を診てから、大きな穴を塞ぐ治療はお前がやってやれ。
俺は足に取り付けられている籠を外し、その後は覇王軍本部や冒険者ギルド龍山支部と連絡を取り指示を出す」
「承知しました」
俺は中身の見えない黒色の中瓶に入ったポーションをラリエスに渡し、自分は同じ黒色の小瓶を持ってエリスの左翼の前に立つ。
「大丈夫、絶対に上手くいく」と、俺は自分に言い聞かせるよう口に出し、20センチ程の穴があいている部分に、ポーションをぽたりぽたりと落としていく。
わずか3滴ほど落としたところで、信じられない奇跡のような現象が起こった。
「えっ、もう穴が塞がった?」とラリエスが驚きの声を上げる。
「う~ん、金色というより銀色に近い色で修復されていく」と、内心恐れていた現象を目の当たりにし、俺はう~んと唸った。
……いや、黒じゃなくて良かったんじゃないか? いやいや、ずっと銀色のままだったらどうする?
『グレードラゴンとも違う色だわ。あれはくすんだ灰色だけど、これは光り輝くシルバーだもの』
俺の契約妖精ユテがエリスの翼をまじまじと見て、金色より眩しいかもと付け加える。
「エリス、痛みはないか? 気分が悪くなったりしてないか?」
『いいえアコル様、痛みも違和感もないです。あっ、でも、なんだか少し元気になったような気がします』
……やはり心臓は、生命力を上げる効果があるのかもしれない。
「ポーションが有効なのは分かったが、まだ油断はできない。ラリエス、しっかり経過観察してから、少しずつポーションを垂らしてくれ。
人間用じゃないから、決して手で触れるなよ」
「はいアコル様。良かった。本当に良かったなエリス。ありがとうございますアコル様」
嬉し涙を流しながらエリスの首に抱き付くラリエスを見て、トワもユテもエクレアも、もらい泣きしながら喜んでいる。
エリスの足の籠を外して、俺は1人で少し開けた場所へと移動する。
上空のグレードラゴンの動きに注視しながら、ユテには覇王軍本部へ、エクレアには冒険者ギルド龍山支部へと瞬間移動してもらった。
『大変よアコル。グレードラゴンの群の一部が、マギ領内で人間を襲い始めたらしいわ。きっとティー山脈から来たグレードラゴンの方だわ』
瞬間移動して僅か10分で戻ってきたエクレアが、最悪の報告をする。
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