キャラ交換で大商人を目指します

大商人への道

345ー１ 覇王・勇者学園都市（１）ー１

　王立高学院と学園都市を行ったり来たりの日々で、あっという間に時間は過ぎていき、目が回りそうに忙しい。
　学園都市で働くことを了承してくれた主要メンバーには、高学院の卒業に全力を尽くしてもらため、７月15日まで全ての任務を休みにした。

　覇王と勇者が直轄地を作ったことで、覇王軍と王立高学院特別部隊は、前払いが絶対条件で、払わなければ出動しないと全ての依頼を断っている。

　……覇王講座であれだけ教えたんだから、出動は必要ないよな。
　……泣き言なんて一切聞かないよ。何を甘えてるの？
 
　勿論、魔獣大氾濫の真っただ中だから、各領地は度々魔獣の恐怖に曝されている。でも、俺たちは便利な捨て駒じゃない。
　覇王軍第二部隊はそのまま勤務地で活動してるから、協力はしているはずだ。

　だってさ、小規模氾濫なのに自らは戦わず、避難所や支援物資の準備は最低限にも満たない状態で、覇王に要請すれば何とかなるって思考、統治者として失格なんだよ。

「無責任な貴族を処罰しない国には、一切協力しない！」と、俺は国王に断言しておいた。

　……もう政敵もいないんだから、王らしく力を示せよ。

　トーマス王子がラレスト王国で使ったポーション代金と被災者の日当は、王妃様が謝罪しながらご自分のお金を出してくださった。
　トーマス王子とポーションを使った者は、５年かけて王妃様に返済するらしい。

　……俺はさ、見切りはしたけどトーマス王子には期待してるんだよね。
　……ここまで失敗を重ねたら、優先事項が何なのか分かったはずだし。


　忙しくても、ブラックドラゴンへの警戒は緩められない。
　ラリエスとエイトが雌のブラックドラゴンに苦戦したから、これまで以上に強い攻撃を考える必要がある。
　驚異の再生能力もだが、ラリエスのエアーカッターが通用しない硬さも問題だ。

　……俺の覇気が通用するのは、幼体までだろう。

　ぼんやりしていたら、グレードラゴンも数を増やすだろうし、ブラックドラゴンの雄が１頭残っているから、いつ洗脳して大氾濫を起こすか分からない。

　そのブラックドラゴンの雄は、何処を探しても見付からない。
　可能性として考えられるのは、ホバーロフ王国との境にあるティー山脈だ。
　ホバーロフ王国とは国交が断絶していて、残念ながら情報が入ってこない。

　先日こっそりランドルで上空を飛んでみたけど、雄の姿は発見できなかった。
　だがホバーロフ王国側のグレードラゴンは、人間を餌だと判断しているので、秋になったら大変な被害がでるだろう。

　……俺は覇王として、どうすべきなのだろうか？


　７月に入り、王立高学院には王宮各部署や商会などの求人表が貼り出された。
　申し訳ないけど、優秀な人材は学園都市が採用済みだ。
　王宮から泣きが入ったけど、今年の卒業生は、一般貴族部の学生でさえ近年稀に見る優秀さだから大丈夫だろう。高学院は地方にもあるよね。

　学園都市の求人に、予想を上回る数の学生が希望を出し、選定が大変だった。
　そこで王立高学院特別部隊に所属していて、就職を希望していた７人に、こっそりアエラボ商会に来ないかと声を掛けさせてもらった。
　学園都市発足後に、アエラボ商会は覇王関連商会だと公表していたので、大喜びで了承してもらった。

　そう言えば、呆れるというか腹が立つというか、またフロランタン商会の爺さんが、孫のイバレンを学園都市で就職させようと、俺ではなく勇者に寄付を申し出たんだよね。
　しかも、イバレンを勇者学園の事務長にと交換条件を出したらしい。

「申し訳ありませんが、覇王様に敬意も払わず、卒業できるかどうかも分からない程度の学生など、雇う気もありませんし、フロランタン商会からの寄付も必要ありません。
　もしもまた来たら、学園都市はフロランタン商会の出店を認めません」

　と、ラリエスがぴしゃりと言って撃退した。
　平民出の覇王を見下している爺さんも、名門公爵家のラリエスには、何も言い返せなかったと聞いて笑った。
　もちろん、商会に与える奨学生枠は、フロランタン商会には与えない。