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天の導き
336ー1 激流(14)ー1
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◇◇ 従者エイト ◇◇
シーブルが隠れていた屋敷を特定した俺たち覇王軍の4人は、逃げ出すようわざと誘導し、疑心暗鬼にさせる作戦に出た。
覇王様と関わろうとしてこなかったシーブルは、妖精が動いていることなんて絶対に気付かないだろうし、気付いたところで何もできないはずだ。
本来なら今回の任務は、魔獣討伐と民の救済だったが、大事な覇王軍メンバーが魔法攻撃を受け、ボンテンク先輩は片目を失い、新人は背中に大火傷を負ってしまった。
覇王様が売られた喧嘩を買うと仰ったので、覇王軍として俺たちは報復する。
『エイト、シーブルが屋敷から逃げ出すよ。覇王様のご指示通り、もしもシーブルが覇王軍や民を攻撃したらシルバーが反撃するって』
「了解トラジャ君。それじゃあ俺たちは、治安維持活動をしながらシーブルの半径300メートル以内を移動して行くから、逃げる方角を教えてね」
シーブルをマークするのは、俺の契約妖精であるシルバードラゴンの守護妖精シルバーとトラジャ君だ。
この地の妖精たちも、ノリノリで手伝ってくれていて、シーブルの尾行に5人、そしてシーブルの手足となり指示を出す奴を探すのに、15人が動いてくれる。
残った妖精たちは、王立高学院特別部隊や覇王軍メンバーと契約してもいいと言ってくれたので、今頃契約しているだろう。
頑張っている仲間の中には、まだ妖精と契約出来ていない者もいたので、今頃、大喜びしているだろう。
余談だが、これまでの常識を覆し、光適性を持っていなかった覇王軍のゲイルとヤーロン先輩も、先程男の子の妖精と契約した。
……いやもう本当に、歴史がひっくり返る出来事だよ。
なんでも、倒壊した王城に住んでいた妖精が、住処を失い消沈していたらしい。
見かねたエクレアちゃんが、覇王軍メンバーで優秀だけど、光適性の無い者がいるから契約したらどうかと勧めたんだとか。
エクレアちゃんは妖精王様から、特殊な石を与えられていたそうで、その石を持っていると、光適性持ちと同等になれるそうだ。
……意味が分からない。
2人の喜びようと言ったら、そりゃもう大号泣だったよ。
当然、光適性を持っていない他の覇王軍メンバーの目の色も変わった。
……覇王様も規格外だけど、エクレアちゃんの能力も計り知れないよな。
シーブルを追跡しながら、慎重に移動する。
どうやらシーブルはフードを深く被ってはいるが、これといった変装はしていないようだ。
逃げ出そうとする貴族たちとすれ違うが、シーブルは声を掛けることもなく、貴族たちも国王だと気付くことはない。
シーブルが屋敷を出て20分後、貴族街を抜けごちゃごちゃした路地の多い地区に入ってきたので、目視できる距離まで詰めていく。
すると間もなく、シーブルは部下らしき者と合流した。
『エイト、どうやら部下はトーマス王子の行動を探っていた者みたいだよ。これからトーマス王子たちの後方に回るって言ってる』
「ご苦労様トラジャ君。シルバーに、もしもトーマス王子とシーブルが戦闘状態に入っても、絶対に手を出すなって伝えて。
覇王軍はトーマス王子たちと共闘する気はないし、うちの目標はシーブルを捕らえて罰を与えることだから」
『了解』
トーマス王子もシーブルも、今夜寝る場所もなく困窮している民のことなど見ていない。
政権争いをしている場合ではないだろうと、覇王様は仰った。
覇王軍メンバーも王立高学院特別部隊メンバーも、その通りだと呆れるというより情けなくなった。
……俺は従弟として、なんとか覇王様のお気持ちを伝えようと、シーブルを捕らえる行いを、そのようなことと比喩して言ったが、トーマス王子には意味が理解できなかったようで残念だ。
今回トーマス王子に同行してきた魔獣討伐専門部隊の3人の中に、妖精と契約している小隊長が居る。
3人は、今後トーマス王子には従わず別行動をとると妖精経由で連絡があった。魔獣討伐専門部隊は、常に覇王様の指揮下にあるので当然だろう。
シーブルが隠れていた屋敷を特定した俺たち覇王軍の4人は、逃げ出すようわざと誘導し、疑心暗鬼にさせる作戦に出た。
覇王様と関わろうとしてこなかったシーブルは、妖精が動いていることなんて絶対に気付かないだろうし、気付いたところで何もできないはずだ。
本来なら今回の任務は、魔獣討伐と民の救済だったが、大事な覇王軍メンバーが魔法攻撃を受け、ボンテンク先輩は片目を失い、新人は背中に大火傷を負ってしまった。
覇王様が売られた喧嘩を買うと仰ったので、覇王軍として俺たちは報復する。
『エイト、シーブルが屋敷から逃げ出すよ。覇王様のご指示通り、もしもシーブルが覇王軍や民を攻撃したらシルバーが反撃するって』
「了解トラジャ君。それじゃあ俺たちは、治安維持活動をしながらシーブルの半径300メートル以内を移動して行くから、逃げる方角を教えてね」
シーブルをマークするのは、俺の契約妖精であるシルバードラゴンの守護妖精シルバーとトラジャ君だ。
この地の妖精たちも、ノリノリで手伝ってくれていて、シーブルの尾行に5人、そしてシーブルの手足となり指示を出す奴を探すのに、15人が動いてくれる。
残った妖精たちは、王立高学院特別部隊や覇王軍メンバーと契約してもいいと言ってくれたので、今頃契約しているだろう。
頑張っている仲間の中には、まだ妖精と契約出来ていない者もいたので、今頃、大喜びしているだろう。
余談だが、これまでの常識を覆し、光適性を持っていなかった覇王軍のゲイルとヤーロン先輩も、先程男の子の妖精と契約した。
……いやもう本当に、歴史がひっくり返る出来事だよ。
なんでも、倒壊した王城に住んでいた妖精が、住処を失い消沈していたらしい。
見かねたエクレアちゃんが、覇王軍メンバーで優秀だけど、光適性の無い者がいるから契約したらどうかと勧めたんだとか。
エクレアちゃんは妖精王様から、特殊な石を与えられていたそうで、その石を持っていると、光適性持ちと同等になれるそうだ。
……意味が分からない。
2人の喜びようと言ったら、そりゃもう大号泣だったよ。
当然、光適性を持っていない他の覇王軍メンバーの目の色も変わった。
……覇王様も規格外だけど、エクレアちゃんの能力も計り知れないよな。
シーブルを追跡しながら、慎重に移動する。
どうやらシーブルはフードを深く被ってはいるが、これといった変装はしていないようだ。
逃げ出そうとする貴族たちとすれ違うが、シーブルは声を掛けることもなく、貴族たちも国王だと気付くことはない。
シーブルが屋敷を出て20分後、貴族街を抜けごちゃごちゃした路地の多い地区に入ってきたので、目視できる距離まで詰めていく。
すると間もなく、シーブルは部下らしき者と合流した。
『エイト、どうやら部下はトーマス王子の行動を探っていた者みたいだよ。これからトーマス王子たちの後方に回るって言ってる』
「ご苦労様トラジャ君。シルバーに、もしもトーマス王子とシーブルが戦闘状態に入っても、絶対に手を出すなって伝えて。
覇王軍はトーマス王子たちと共闘する気はないし、うちの目標はシーブルを捕らえて罰を与えることだから」
『了解』
トーマス王子もシーブルも、今夜寝る場所もなく困窮している民のことなど見ていない。
政権争いをしている場合ではないだろうと、覇王様は仰った。
覇王軍メンバーも王立高学院特別部隊メンバーも、その通りだと呆れるというより情けなくなった。
……俺は従弟として、なんとか覇王様のお気持ちを伝えようと、シーブルを捕らえる行いを、そのようなことと比喩して言ったが、トーマス王子には意味が理解できなかったようで残念だ。
今回トーマス王子に同行してきた魔獣討伐専門部隊の3人の中に、妖精と契約している小隊長が居る。
3人は、今後トーマス王子には従わず別行動をとると妖精経由で連絡があった。魔獣討伐専門部隊は、常に覇王様の指揮下にあるので当然だろう。
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