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天の導き

331ー2 激流(9)ー2

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 俺はラリエスとエリスを招集し、王都ラレスト近くで合流してから、瓦礫と化した王宮前広場に一緒に舞い降りた。

 光のドラゴン2頭が並び立つ姿に住民たちは感動し、「王都を救ってくれてありがとう」とか、「覇王軍・王立高学院特別部隊を出動してくれてありがとう」と、感謝の言葉を掛けてくれる。

 ……シーブルが見ているだろうから、極上の笑顔で手を振って応えておこう。

 勇者伝説を作ったラリエスも、その活動の噂が王都まで届いていたようで「勇者さまー!」と、女性や子供を中心に大人気だ。
 勇者であるラリエスは、今では国王と同列に並ぶ発言権を持っているから、トーマス王子の相手は任せて、俺は王立高学院特別部隊の救護所へと急ぐ。

「どうやらトーマス王子は、まだ偽王シーブルを捕らえてはいないようですね」

渋い顔をしていたトーマス王子の表情を読んで、エイトが走りながら話し掛ける。

「ああ、でもきっと、俺たちの姿を何処からか見ているさ。
 あの男とワートン公爵は、覇王である俺がトーブル先輩を離さないから、皇太子としての役目を果たせず、戻ってこれないのだと本気で思っているらしいぞ」

「はあ?」とエイトが変な声をあげる。

 うちのエクレアとユテは、ちょいちょい瞬間移動して、ラレスト王国の王宮に潜入していた。
 王宮周辺に住んでいる妖精たちは、エクレアとユテがお土産に持って行くお菓子が大好きで、何でも情報を教えてくれた。

 しかも魔獣に怯える妖精たちは、無責任なシーブル王や宰相が嫌いだった。


『アコル、ケガ人は、トーブルが直ぐに【慈悲の雫】のハイポーションで治療したから、見える部分のケガは塞がったけど、1人はかなり出血したみたい。
 ただ、ボンテンクの左目には尖った石が突き刺さり、意識を失ったままだわ。
 見えない脳や内臓を、損傷しているかもしれないわ』

 肩の上に現れたエクレアの報告を聞き、怒りで漏れそうになる魔力をなんとか押し込めながら走る。
 走りながら、シーブルの目をくり抜こうとする自分の姿を想像し、奥歯を噛み締め己を戒める。


「あっ、覇王様、エイト君」

 救護所とは少し離れた場所に立っていたエリザーテさんが、俺たちの姿を見付けて走り寄ってくる。
 そして、救護所から少し離れた場所に作られた大きなかまくらを黙って指さし、ケガをした覇王軍メンバーが居る場所を教えてくれた。

 救護所には、まだ多くの人が列をつくっており、再び攻撃を受ける可能性を考慮し、救護所とは離した場所にかまくらを作るよう、覇王軍のゲイルが指示を出したらしい。

 ……みんな適切な判断ができるようになったな。


 6人は余裕で寝れる広いかまくらの中に入ると、トーブル先輩と薬師部の学生が、ボンテンクの目の中の石の欠片やごみを取り除こうと、目を洗浄しているところだった。

「どうですかトーブル先輩?」

「これは覇王様。一度意識が戻ったのですが、あまりに目の痛みが酷く辛そうだったので、麻酔効果のある薬を投与しました。
 それから、とても残念なのですが、角膜と網膜まで損傷しているようで・・・」

そこまで言って、トーブル先輩は口をつぐんだ。

 そして深く頭を下げ、申し訳ありませんと言って涙を零した。

「何故先輩が謝るんです? そんな必要、全くないですよ。
 先輩はコルランドル王国の伯爵として、立派に犯人を撃退しました。
 俺はね先輩、売られた喧嘩を買って、負けた記憶がないんです。
 皆の怒りは、覇王である俺が必ず晴らしてみせます」

「あ、ありがとうございます。私は、コルランドル王国の伯爵でした。
 私は自由を手に入れ、自らの手で鎖を断ち切った。
 そして多くの人を救うと誓ったはずなのに・・・もう二度と、心を惑わされたりしません」

そう言ったトーブル先輩の目には、迷いも揺らぎも見えなかった。

 俺は、青く生気のないボンテンク先輩の顔にそっと手を当て、マジックバッグの中から新しく作ったエリクサー【再生の息吹】を取り出した。
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