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天の導き

330ー2 激流(8)ー2

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 ランドルは視界に赤々と燃える炎を捉え余裕でかわしたが、ブラックドラゴンが高速で目の前に迫ってきた。

「早い!」と俺は声を出し、直ぐに攻撃態勢をとる。
 エイトは俺より早く、得意なドラゴントルネードをブラックドラゴンに向け放った。
 ブラックドラゴンは渦に巻き込まれ、なんとか逃れようと翼を動かそうとするが、300メートル後方に飛ばされる。

「ランドル、ユテ、攻撃は任せて警戒を頼む!」

『了解』と2人の声が揃う。

「エイト、ここで必ず仕留めるぞ」
「はい! 必ず」

 ブラックドラゴンは体勢を立て直すと、いつものように耳障りな洗脳音を出し始める。
 俺とエイトは耳栓を素早く装着し、用意していた改良版古代魔法陣を描いた特別紙を手に持ち、攻撃を開始する。

 俺は目の前に100以上の拳大の氷の矢尻を出し、ブラックドラゴン目掛けて一斉に放つ。
 矢じりは四方八方に曲線を描きながら飛び、ブラックドラゴンの逃げ場を塞ぐように全方向から襲い掛かる。

 俺の放った氷の矢じりがブラックドラゴンの全身に命中する瞬間を待っていたエイトは、新しく取得した巨石魔法を放った。
 ブラックドラゴンの翼と同じくらいの大きさの2つの巨石が空中に現れ、ブラックドラゴンの左右に展開したかと思うと、超高速で頭を挟んで押し潰していく。

 ブラックドラゴンを完全に倒すには、首を刎ねるか体の3分の2以上を焼き、魔石を取り出すしかない。穴をあけたくらいでは、翼も胴体も再生してしまう。
 だから俺の攻撃で動きを止め、エイトは頭を狙った。
 首と胴体が離れ離れにならないので、落下後の回収も楽になる。

 頭を潰されて再生するとは思えないが、念のため落下していくブラックドラゴンを追う。
 ドーンと大きな音がして、山の上部の雪が振動で雪崩を起こし始める。
 さほど大きな雪崩ではないが、ブラックドラゴンを呑み込み4合目辺りの窪地まで一気に下っていく。

「どうやら討伐できたようですね」
「ああ、折角だからじっくりブラックドラゴンを検分しよう」

 ランドルに見張りを頼んで地上に降り、俺とエイトは雪に半分埋まっているブラックドラゴンを検分していく。
 翼を見ると、以前にも穴が空いて再生したのか、翼の厚さが数か所違っているし、尾は他のブラックドラゴンより短かった。

 どうやらこいつは、ラリエスが瀕死にしたヤツで間違いない。
 そして死んだ後でも、空いた穴がほんの少しだが小さくなった。

「凄い再生能力だ。ブラックドラゴンの血液とか心臓とか肝とか、人間の薬にできないだろうか?」

「ええぇーっ、ブラックドラゴンを薬に使うのですか?」

エイトはいったい何を言い出すんだろうって、嫌そうな顔をして俺に問い返した。

「いやいや、あの巨大な亀は立派にポーションの素材になっているし、古い医学書にはドラゴンの心臓は生命力を増すと書いてあるぞ。
 これまで討伐したブラックドラゴンもグレードラゴンも、ポーションの素材にしてこなかったけど、多くの人を助けるため一計を案じる価値はある」

 いや、本当にそうだよ。
 なんで今まで試さなかったんだろう・・・冒険者ギルドに売ったモノは、確か内臓も血液も廃棄されていた・・・はずだけど、どうだったっけ?
 取りあえず魔石を取り出し、ブラックドラゴンをマジックバッグに収納する。

「この再生力だ。飲み薬じゃなくても、ケガの塗り薬として期待できる」

 なんだかお宝を見付けたような気がして、俺の気分は上昇する。
 
「そ、そう言われたら、そんな気もします」と、エイトはまだ懐疑的だ。

 遠目から見たらブラックドラゴンもグレードラゴンも、色と大きさと翼と目の数が違うくらいにしか感じないが、こうして間近で検分するとかなり違う。
 翼はグレードラゴンはざらざらだけど、ブラックドラゴンはつるつるしている。
 血の色だってグレードラゴンは深緑色だが、ブラックドラゴンは黒色に近い。


『主よ、大変だ。ラレスト王国で活動していた覇王軍が、何者かに魔法攻撃を仕掛けられ、ケガ人が出た』

 ふんふんと鼻歌を歌っていたら、ラレスト王国に様子を見に行った賢者妖精ロルフが、とんでもない情報を持ってきた。 
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