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天の導き
325ー2 激流(3)ー2
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◇◇ トーマス王子 ◇◇
目的地に到着したのは、夕日が傾き山がオレンジ色に染まり始める時刻だった。
街の惨状は予想以上で、討つべき相手がいるはずの建物は完全に倒壊していた。
我々の少し前に到着していた覇王軍は、街に残っていた魔獣の討伐中で、指揮を執っているボンテンク君によると、昨日グレードラゴンとブラックドラゴンが飛来し、王城として使われていた建物を攻撃したらしい。
覇王様は、グレードラゴンとブラックドラゴンを討伐し、念のために隣国に向かわれたようだ。
勇者であるラリエス君は、これ以上魔獣が溢れないよう、コーチャー山脈の麓で睨みを利かせているそうだ。
残念ながら、覇王軍は瓦礫と化した王城にはまだ行っておらず、討つべき人物の安否は不明だった。
到着した瓦礫の山の前には、数人の貴族らしき夫人や使用人の姿があった。
おそらく、王城で働いていた者たちの家族だろう。
本来なら反国王派の貴族であり、罪人の家族だから捕えるべきところだが、それは優先すべきことではない。
「トーマス王子、瓦礫を撤去しようとする者は誰も居ないようです。
平民は王城を囲む城壁の中に立ち入ることを禁じられているようで、撤去作業を手伝うことはできないと言っています」
壊れた城壁の一部から、中を覗き込んでいる住民に手伝いを頼みに行った側近が、断られたとすまなそうに報告する。
「助けたいとも思わない・・・というのが本心なのだろう。
仕方ない。家を失くした者や、お金が必要な被災者に日当を払って作業してもらおう。私は役場に向かうので、側近以外はこの場に残ってくれ」
「承知しました」
私は魔法省の精鋭を現場に残し、逆賊が逃げないよう見張れと指示を出した。
ぱっと見た感じでは、地下室にでも避難していなければ、生存の可能性は低いだろう。確か地下牢があったとサナへ侯爵が言っていた。
既に日も暮れ始めていたので、役場に求人を出す手続きだけして、私たちは瓦礫と化した建物の側にかまくらを作った。
遠征も何度か行くと慣れてきて、土魔法が得意な部下が短時間で3つのかまくらを作り終えた。
覇王様のようにはいかないが、私もスープくらいは作れるようになったので、カマドを作って準備を始める。
討つべき敵が瓦礫の中に閉じ込められているので、どうも緊張感に欠けてしまう。
「ちょっとアナタたち、のんびり休憩していないで、早く主人を助けなさい! 覇王軍なんて役に立たないわね」
「おい、お前たちの馬を半分寄越せ。俺はラレスト王国建設大臣の嫡男だ。
その馬は、我が伯爵家で有効に使ってやる。逆らうと痛い目を見ることになるぞ!」
如何にも無知で無能な貴族でございますって感じの、ご婦人と若者に声を掛けられた。態度もデカいし声も大きい。
なんで伯爵家の子息程度でそこまで威張れるんだろう? ああ、自分たちより高位の貴族に会ったことがないんだな。
どうやら親子のようだが、私たちを覇王軍だと思って命令しているようだ。
覇王軍に対する無礼も許せないが、堂々と他者から馬を奪おうとする態度はいただけない。
今はまだ、自分の身分は明かせない。
私は部下に目配せし、どのみち反逆者の家族として捕えることになる2人を、かまくらに閉じ込めるよう指示を出す。
こういう事態は想定済みで、その時の対処法も決めてあった。
夜半まで口汚く叫んでいた親子は、叫び疲れたのか夜明け前には大人しくなっていた。
私たちの動向を、遠巻きに眺めていた者の視線には気付いていたので、油断せず備えて夜を過ごした。
その結果、2人用のかまくら1基、4人用のかまくら1基が増えた。
2人は男爵の娘と婿。4人はワートン公爵家に仕える私兵だった。
「食べ物を寄越せ」と言われたので、盗賊として捕縛した。
……情けない。フーッ。
目的地に到着したのは、夕日が傾き山がオレンジ色に染まり始める時刻だった。
街の惨状は予想以上で、討つべき相手がいるはずの建物は完全に倒壊していた。
我々の少し前に到着していた覇王軍は、街に残っていた魔獣の討伐中で、指揮を執っているボンテンク君によると、昨日グレードラゴンとブラックドラゴンが飛来し、王城として使われていた建物を攻撃したらしい。
覇王様は、グレードラゴンとブラックドラゴンを討伐し、念のために隣国に向かわれたようだ。
勇者であるラリエス君は、これ以上魔獣が溢れないよう、コーチャー山脈の麓で睨みを利かせているそうだ。
残念ながら、覇王軍は瓦礫と化した王城にはまだ行っておらず、討つべき人物の安否は不明だった。
到着した瓦礫の山の前には、数人の貴族らしき夫人や使用人の姿があった。
おそらく、王城で働いていた者たちの家族だろう。
本来なら反国王派の貴族であり、罪人の家族だから捕えるべきところだが、それは優先すべきことではない。
「トーマス王子、瓦礫を撤去しようとする者は誰も居ないようです。
平民は王城を囲む城壁の中に立ち入ることを禁じられているようで、撤去作業を手伝うことはできないと言っています」
壊れた城壁の一部から、中を覗き込んでいる住民に手伝いを頼みに行った側近が、断られたとすまなそうに報告する。
「助けたいとも思わない・・・というのが本心なのだろう。
仕方ない。家を失くした者や、お金が必要な被災者に日当を払って作業してもらおう。私は役場に向かうので、側近以外はこの場に残ってくれ」
「承知しました」
私は魔法省の精鋭を現場に残し、逆賊が逃げないよう見張れと指示を出した。
ぱっと見た感じでは、地下室にでも避難していなければ、生存の可能性は低いだろう。確か地下牢があったとサナへ侯爵が言っていた。
既に日も暮れ始めていたので、役場に求人を出す手続きだけして、私たちは瓦礫と化した建物の側にかまくらを作った。
遠征も何度か行くと慣れてきて、土魔法が得意な部下が短時間で3つのかまくらを作り終えた。
覇王様のようにはいかないが、私もスープくらいは作れるようになったので、カマドを作って準備を始める。
討つべき敵が瓦礫の中に閉じ込められているので、どうも緊張感に欠けてしまう。
「ちょっとアナタたち、のんびり休憩していないで、早く主人を助けなさい! 覇王軍なんて役に立たないわね」
「おい、お前たちの馬を半分寄越せ。俺はラレスト王国建設大臣の嫡男だ。
その馬は、我が伯爵家で有効に使ってやる。逆らうと痛い目を見ることになるぞ!」
如何にも無知で無能な貴族でございますって感じの、ご婦人と若者に声を掛けられた。態度もデカいし声も大きい。
なんで伯爵家の子息程度でそこまで威張れるんだろう? ああ、自分たちより高位の貴族に会ったことがないんだな。
どうやら親子のようだが、私たちを覇王軍だと思って命令しているようだ。
覇王軍に対する無礼も許せないが、堂々と他者から馬を奪おうとする態度はいただけない。
今はまだ、自分の身分は明かせない。
私は部下に目配せし、どのみち反逆者の家族として捕えることになる2人を、かまくらに閉じ込めるよう指示を出す。
こういう事態は想定済みで、その時の対処法も決めてあった。
夜半まで口汚く叫んでいた親子は、叫び疲れたのか夜明け前には大人しくなっていた。
私たちの動向を、遠巻きに眺めていた者の視線には気付いていたので、油断せず備えて夜を過ごした。
その結果、2人用のかまくら1基、4人用のかまくら1基が増えた。
2人は男爵の娘と婿。4人はワートン公爵家に仕える私兵だった。
「食べ物を寄越せ」と言われたので、盗賊として捕縛した。
……情けない。フーッ。
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