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天の導き
320ー2 勇者と覇王(2)ー2
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◇◇ ラレスト王国 宰相ワートン ◇◇
昨日部下から妙な話を聞いた。
その部下は旧ワートン領の伯爵で、現在は建設大臣をしている。
任されている領地はコーチャー山脈に近く、昨年末の魔獣の氾濫で、いくつかある村の内の一つが被害に遭っていた。
建設大臣は、早い段階で私と共に旧ヘイズ領に入り、シーブル様と独立の準備をしていた。
だから被害に遭った村の救済をする時間などなかった。
まあ私も、村など放っておいても問題ないと言った気がする。
昨日久し振りに自領に戻ったところ、その村に近い町を任せていた準男爵が、その村に勇者の指示で覇王軍メンバーが救済に来たと言うのだ。
ケガ人の手当をしたり、食料を提供したり、魔獣の襲撃に備えてかまくらを作ったりしたらしい。
しかも、覇王軍や王立高学院特別部隊の悪評を広めるため、活動させていた偽物のうちの1人が、その村で捕らえられていると……
……チッ、余計なことを喋る前に始末するしかないな。
なんでも勇者の指示で救済に来た者が、覇王軍を騙る偽物がいるので気を付けろと注意していたらしい。
……フン、余計なことを。勇者が何の目的で救済しているのだ?
そして今日、ラレスト王国の首都からさほど離れていないコーチャー山脈の麓の村や町に、勇者本人と従者が光のドラゴンに乗って現れたとの報告が届いた。
たった2人でやってきて、医療行為を行ったり避難用のかまくらを幾つか作ったようだ。
勇者といえども、此処はコルランドル王国ではない。
他国に無断で侵入し、王であるシーブル様の許しも得ず、勝手に救済活動をするなど許されるはずがない。
かと言って、自国民を救済する者を攻撃すれば、民の反感を買うことになる。
しかもその2人は光のドラゴンで移動し、既に国のあちらこちらで活動しているというではないか。
……なんとも忌々しい。
まあ本来なら国や領主がすべき救済だろうが、この国には今、そんなことに使う余分な金などない。
こちらの懐が痛むわけではないから、勝手にさせておけばいいと考えることもできるが、これが政治的な思惑無しに行われているとは思えない。
……今更、出動料を払って覇王軍に魔獣討伐を依頼するのは癪に障る。
まあ部下の中には、このまま魔獣の討伐をせず被害が増えると、民が逃げ出してしまうとか、反乱を起こす可能性があるのではと心配する者もいる。
だから先日、冒険者の出入国税は免除すると公布したし、隣国の冒険者ギルドに通達も出した。
いっそのこと、勇者が無料で魔獣討伐してくれれば問題は減る。
だがシーブル陛下は、それを決して許されないだろう。
あの方は、自国民が魔獣に襲われ死ぬことより、自国内で他人が好き勝手する方を嫌悪される。
魔獣の氾濫さえなければ、これほど苦労することはなかっただろう。
だが、魔獣の氾濫があったから、どさくさに紛れて建国できたとも言える。
……先ずは、本物の勇者かどうか確認する必要がある。
……従者などは殺してしまえばいいが、勇者はワイコリーム公爵子息だ。
「宰相、隣国コッタリカ王国の冒険者ギルドから連絡が来ました。
コッタリカ王国でも魔獣の襲撃があるので、冒険者の派遣はできないとのことです。
あ、あの、コルランドル王国の冒険者を呼ぶことはできないのでしょうか?」
疲れ果てた顔をして報告に来たのは、軍務大臣だ。
まあ、兵士の数は激減しているようだから無理もないが、魔獣くらい軍や警備隊で撃退できなくてどうする! と怒鳴りたいのが私の本心だ。
「アホール山の冒険者を王都に呼び出している。
そんなに人手が足らないなら、お前がマギ領へ行き、冒険者を連れてこい。
龍山は昨年大きな氾濫があったから、討伐料を2割増しにしてやると言えば、暇になった奴等が喜んでくるだろう」
アホール山の冒険者ギルドの職員や冒険者に、王都に移ってこいと命令してある。
これ以上私も魔獣の話は聞きたくないから、何処の冒険者がやってこようと構わない。
昨日部下から妙な話を聞いた。
その部下は旧ワートン領の伯爵で、現在は建設大臣をしている。
任されている領地はコーチャー山脈に近く、昨年末の魔獣の氾濫で、いくつかある村の内の一つが被害に遭っていた。
建設大臣は、早い段階で私と共に旧ヘイズ領に入り、シーブル様と独立の準備をしていた。
だから被害に遭った村の救済をする時間などなかった。
まあ私も、村など放っておいても問題ないと言った気がする。
昨日久し振りに自領に戻ったところ、その村に近い町を任せていた準男爵が、その村に勇者の指示で覇王軍メンバーが救済に来たと言うのだ。
ケガ人の手当をしたり、食料を提供したり、魔獣の襲撃に備えてかまくらを作ったりしたらしい。
しかも、覇王軍や王立高学院特別部隊の悪評を広めるため、活動させていた偽物のうちの1人が、その村で捕らえられていると……
……チッ、余計なことを喋る前に始末するしかないな。
なんでも勇者の指示で救済に来た者が、覇王軍を騙る偽物がいるので気を付けろと注意していたらしい。
……フン、余計なことを。勇者が何の目的で救済しているのだ?
そして今日、ラレスト王国の首都からさほど離れていないコーチャー山脈の麓の村や町に、勇者本人と従者が光のドラゴンに乗って現れたとの報告が届いた。
たった2人でやってきて、医療行為を行ったり避難用のかまくらを幾つか作ったようだ。
勇者といえども、此処はコルランドル王国ではない。
他国に無断で侵入し、王であるシーブル様の許しも得ず、勝手に救済活動をするなど許されるはずがない。
かと言って、自国民を救済する者を攻撃すれば、民の反感を買うことになる。
しかもその2人は光のドラゴンで移動し、既に国のあちらこちらで活動しているというではないか。
……なんとも忌々しい。
まあ本来なら国や領主がすべき救済だろうが、この国には今、そんなことに使う余分な金などない。
こちらの懐が痛むわけではないから、勝手にさせておけばいいと考えることもできるが、これが政治的な思惑無しに行われているとは思えない。
……今更、出動料を払って覇王軍に魔獣討伐を依頼するのは癪に障る。
まあ部下の中には、このまま魔獣の討伐をせず被害が増えると、民が逃げ出してしまうとか、反乱を起こす可能性があるのではと心配する者もいる。
だから先日、冒険者の出入国税は免除すると公布したし、隣国の冒険者ギルドに通達も出した。
いっそのこと、勇者が無料で魔獣討伐してくれれば問題は減る。
だがシーブル陛下は、それを決して許されないだろう。
あの方は、自国民が魔獣に襲われ死ぬことより、自国内で他人が好き勝手する方を嫌悪される。
魔獣の氾濫さえなければ、これほど苦労することはなかっただろう。
だが、魔獣の氾濫があったから、どさくさに紛れて建国できたとも言える。
……先ずは、本物の勇者かどうか確認する必要がある。
……従者などは殺してしまえばいいが、勇者はワイコリーム公爵子息だ。
「宰相、隣国コッタリカ王国の冒険者ギルドから連絡が来ました。
コッタリカ王国でも魔獣の襲撃があるので、冒険者の派遣はできないとのことです。
あ、あの、コルランドル王国の冒険者を呼ぶことはできないのでしょうか?」
疲れ果てた顔をして報告に来たのは、軍務大臣だ。
まあ、兵士の数は激減しているようだから無理もないが、魔獣くらい軍や警備隊で撃退できなくてどうする! と怒鳴りたいのが私の本心だ。
「アホール山の冒険者を王都に呼び出している。
そんなに人手が足らないなら、お前がマギ領へ行き、冒険者を連れてこい。
龍山は昨年大きな氾濫があったから、討伐料を2割増しにしてやると言えば、暇になった奴等が喜んでくるだろう」
アホール山の冒険者ギルドの職員や冒険者に、王都に移ってこいと命令してある。
これ以上私も魔獣の話は聞きたくないから、何処の冒険者がやってこようと構わない。
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