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笑顔と涙
317ー1 勇者伝説(2)ー1
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◇◇ 勇者ラリエス ◇◇
久し振りに覇王軍の隊服で下級地区に行く。
冒険者ギルド王都支部に向かいながら町の様子を観察すると、王都の復興は順調のようだ。
勇者である私に気付いた子供が「勇者様だ!」と声を上げると、他の者も視線を向け「いつもありがとうございます」とか「お疲れ様です」と次々に声を掛けてくれる。
冒険者ギルドの直ぐ近くにある一番大きな避難所には、まだ多くの人々が暮らしている。
長い避難所生活を強いられている西地区住民は、そろそろ疲れが見え始める頃だろう。
同時に、【王立高学院特別部隊】から救済活動をバトンタッチされた【王宮対策室】の役人たちが、手を抜く頃だとアコル様は懸念されている。
そこで睨みを利かす役目も兼ね、私は勇者として励ましの言葉を掛けに行く。
私より覇王様の方が被災者は喜ぶのではと言ったのだが、アコル様いわく、平民出の覇王より、名門公爵家の嫡男が慰問に行く方が、貴族に対する不満が減り、勇者様は平民の味方なんだと思い嬉しくなるんだよって。
それと【王宮対策室】の役人を指導する姿を皆に見せると、国はちゃんと西地区を復興してくれると信じることができ、もう少し避難生活を頑張ろうと思えるだろうって・・・
初代覇王様時代に公爵になったワイコリーム家の祖先は、残した指示書の中で、次の覇王様は市井で育つことで多くの民の心を癒すだろうと書かれている。
そして指示書の最後には、子孫は覇王様を探し出し、【勇者】としてお支えしろと書いてあった。
あまりにも古い書物で、羊皮紙の文字が擦れており、つい最近まで【勇者】ではなく【従者】だと思われていた。
ワイコリーム公爵家の文官が年末に全文を調べ直したところ、【勇者】として相応しい働きをせよと書かれた部分を発見した。
アコル様が不敬罪から私を助けるため、突然私を【勇者】だと発表されたと思っていたので、私はずっと居心地が悪かった。
側近に選ばれただけで満足だったし、【勇者】なんて大仰な身分が重すぎて、自分に相応しくないと心が苦しかった。
でも、指示書にも【勇者】という言葉が書いてあったことで、少し自信が持てるようになった。
父上は、ご先祖様の指示書も大事だが、今代の覇王であるアコル様が【勇者】だと任命されたことに意味があり、アコル様のご期待に応えて【勇者】としての働きをすることが大事なのだと仰った。
……確かにそうだ。信じるべきはアコル様だ。
ついアコル様が身近すぎて思い違いしそうになるが、アコル様は偉大なる【覇王】なのだ。
だから、今回与えられたミッションを完璧にこなし、【勇者伝説】?をつくらねばならない。
避難所前に到着すると、なんだか微妙な空気が流れていた。
この避難所には女性や子供が多く身を寄せており、日中は元々の仕事をしたり復興作業をしいる。
残っているのは、炊き出しや子守りなどの仕事をしている者と子供で、この時間は人数が少ない。
どうしたのだろうかと、こっそり建物の陰に隠れるようにして様子を窺っていると、男性の大きな声が聞こえてきた。
「肉を入れたい? はあ? 国の世話になっている厄介者が、毎日肉を食べたいと言うのか!」
本部テントで食事をしていた青シャツの役人が、ガラの悪い態度で、小さな子供を連れた女性に怒鳴っている。
「せめて子供の分だけでも、昼のスープに肉を入れてください。有料の炊き出しには肉を入れると指示があったはずです」
必死に頼んでいる女性は、どうやら炊き出しの仕事をしている女性のようでエプロン姿だ。
自分が受けていた指示と違うと女性が言うと、今度は派手なシャツの男が、ドン!と乱暴にテーブルを叩き悪人顔で女性を睨み付けて怒鳴る。
「うるさい! そんなに肉が食べたければ冒険者ギルドで恵んでもらえ!」と。
……なんという言い草だ! それが被災者に対して取るべき態度なのか?!
久し振りに覇王軍の隊服で下級地区に行く。
冒険者ギルド王都支部に向かいながら町の様子を観察すると、王都の復興は順調のようだ。
勇者である私に気付いた子供が「勇者様だ!」と声を上げると、他の者も視線を向け「いつもありがとうございます」とか「お疲れ様です」と次々に声を掛けてくれる。
冒険者ギルドの直ぐ近くにある一番大きな避難所には、まだ多くの人々が暮らしている。
長い避難所生活を強いられている西地区住民は、そろそろ疲れが見え始める頃だろう。
同時に、【王立高学院特別部隊】から救済活動をバトンタッチされた【王宮対策室】の役人たちが、手を抜く頃だとアコル様は懸念されている。
そこで睨みを利かす役目も兼ね、私は勇者として励ましの言葉を掛けに行く。
私より覇王様の方が被災者は喜ぶのではと言ったのだが、アコル様いわく、平民出の覇王より、名門公爵家の嫡男が慰問に行く方が、貴族に対する不満が減り、勇者様は平民の味方なんだと思い嬉しくなるんだよって。
それと【王宮対策室】の役人を指導する姿を皆に見せると、国はちゃんと西地区を復興してくれると信じることができ、もう少し避難生活を頑張ろうと思えるだろうって・・・
初代覇王様時代に公爵になったワイコリーム家の祖先は、残した指示書の中で、次の覇王様は市井で育つことで多くの民の心を癒すだろうと書かれている。
そして指示書の最後には、子孫は覇王様を探し出し、【勇者】としてお支えしろと書いてあった。
あまりにも古い書物で、羊皮紙の文字が擦れており、つい最近まで【勇者】ではなく【従者】だと思われていた。
ワイコリーム公爵家の文官が年末に全文を調べ直したところ、【勇者】として相応しい働きをせよと書かれた部分を発見した。
アコル様が不敬罪から私を助けるため、突然私を【勇者】だと発表されたと思っていたので、私はずっと居心地が悪かった。
側近に選ばれただけで満足だったし、【勇者】なんて大仰な身分が重すぎて、自分に相応しくないと心が苦しかった。
でも、指示書にも【勇者】という言葉が書いてあったことで、少し自信が持てるようになった。
父上は、ご先祖様の指示書も大事だが、今代の覇王であるアコル様が【勇者】だと任命されたことに意味があり、アコル様のご期待に応えて【勇者】としての働きをすることが大事なのだと仰った。
……確かにそうだ。信じるべきはアコル様だ。
ついアコル様が身近すぎて思い違いしそうになるが、アコル様は偉大なる【覇王】なのだ。
だから、今回与えられたミッションを完璧にこなし、【勇者伝説】?をつくらねばならない。
避難所前に到着すると、なんだか微妙な空気が流れていた。
この避難所には女性や子供が多く身を寄せており、日中は元々の仕事をしたり復興作業をしいる。
残っているのは、炊き出しや子守りなどの仕事をしている者と子供で、この時間は人数が少ない。
どうしたのだろうかと、こっそり建物の陰に隠れるようにして様子を窺っていると、男性の大きな声が聞こえてきた。
「肉を入れたい? はあ? 国の世話になっている厄介者が、毎日肉を食べたいと言うのか!」
本部テントで食事をしていた青シャツの役人が、ガラの悪い態度で、小さな子供を連れた女性に怒鳴っている。
「せめて子供の分だけでも、昼のスープに肉を入れてください。有料の炊き出しには肉を入れると指示があったはずです」
必死に頼んでいる女性は、どうやら炊き出しの仕事をしている女性のようでエプロン姿だ。
自分が受けていた指示と違うと女性が言うと、今度は派手なシャツの男が、ドン!と乱暴にテーブルを叩き悪人顔で女性を睨み付けて怒鳴る。
「うるさい! そんなに肉が食べたければ冒険者ギルドで恵んでもらえ!」と。
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