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笑顔と涙
311ー1 新しいポーション作り(2)ー1
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夕食の最終注文時間ギリギリに学院に戻った俺は、いつもの執行部・覇王軍専用席で皆から報告を受けていた。
「現在医務室で治療を受けている学生は3人です。内1人は私が持っていた中級ポーションで治療しましたが、意識も戻らず危ない状態です。
彼はグレードラゴンが城壁に激突した衝撃で、城壁の上から落下し瓦礫の下敷きになりました。
残りの2人も重症ですが、骨折や外傷だけで内臓の損傷はありませんでした。
この2人は、グレードラゴンに攻撃を仕掛けていた際、興奮のあまり自ら城壁の上から落下したとのことです。
もうポーションがないので、自力で回復する必要があります。
グレードラゴン討伐後、私が直ぐに現場に駆け付けポーションを飲ませていたら、あれほど出血しなくて済んだかもしれません。
申し訳ありませんでした覇王様。私の力不足です」
自分のせいで後輩を守れなかったと、トゥーリス先輩が申し訳なさそうに報告する。
……先輩は、相変わらず自己評価が低い。
「城壁の一部が崩落したことで、直ぐに動けなかったのだから、きみが責任を感じる必要はない。
初めてのドラゴン討伐で、みな臆することなくよく戦ってくれた。
謝罪ではなく、ここは胸を張ってもいい場面だと私は思うぞ」
項垂れているトゥーリス先輩に、謝罪の必要はないと慰めの言葉を掛けるのは、作戦本部で指揮を執っていたハシム殿だ。
「そうです。先輩も後輩たちも懸命に頑張って王都を守り抜きました。
初めてのドラゴン討伐で、多くの死傷者が出なかったことを誇りに思うべきです。
先輩が後悔したら、頑張った後輩たちまで胸を張れなくなります」
先輩の指揮は何も間違っていなかったと、俺は微笑みながら断言した。
その場に居た他のメンバーも、優しく微笑みながら俺に同意して頷く。
「覇王様、私から大事な報告がございます。
今回、最大の手柄を立てた赤のダイキリさんは、グレードラゴンを真っ二つにして討伐に成功しましたが、その直後、グレードラゴンの尻尾に跳ね飛ばされました。
トーマス王子や黒のハーキムさんが駆け付けた時、落下したダイキリさんの体には、先日の火災で焼失した建物の柱の燃え残りが刺さっていました。
剣聖として恥ずかしくない活躍だっただろう? トーマス王子、俺の大剣を任せるぞと言い残し、息を引き取ったそうです」
「そうですか・・・分かりました」
ハシム殿の報告を聞いた俺は、それ以上言葉が出ず、黙々と夕食を口に運ぶ。
俺が食べ終わるまで、皆は気を利かせてテーブルから離れていく。
いつの間にか味のしない夕食を終え、報告を待っていた仲間たちから今日の話を順に聞いていく。
次に報告をしたのは、【覇王探求部会】の責任者であるログドル王子と部会員2人だった。
3人は、古代魔術具の起動の様子や、グレードラゴンに与えたダメージを中心に報告していく。
複製を急いで各領地にも配置できるよう頑張りますと、若い部会員の2人が誓ってくれる。
実際にグレードラゴンを追い払ったことで、自信とやる気に溢れている。
「よく頑張ってくれました。覇王探求部会の活躍を、これからも期待しています」
俺は2人の部会員に、今夜はゆっくり休んで欲しいと労い、明日からもよろしくと言って握手を交わした。
ログドル王子には、今日討伐したグレードラゴン5頭分の魔石を渡し、王宮に設置している魔法障壁の魔術具の復元を急いで欲しいと指示を出した。
「現在医務室で治療を受けている学生は3人です。内1人は私が持っていた中級ポーションで治療しましたが、意識も戻らず危ない状態です。
彼はグレードラゴンが城壁に激突した衝撃で、城壁の上から落下し瓦礫の下敷きになりました。
残りの2人も重症ですが、骨折や外傷だけで内臓の損傷はありませんでした。
この2人は、グレードラゴンに攻撃を仕掛けていた際、興奮のあまり自ら城壁の上から落下したとのことです。
もうポーションがないので、自力で回復する必要があります。
グレードラゴン討伐後、私が直ぐに現場に駆け付けポーションを飲ませていたら、あれほど出血しなくて済んだかもしれません。
申し訳ありませんでした覇王様。私の力不足です」
自分のせいで後輩を守れなかったと、トゥーリス先輩が申し訳なさそうに報告する。
……先輩は、相変わらず自己評価が低い。
「城壁の一部が崩落したことで、直ぐに動けなかったのだから、きみが責任を感じる必要はない。
初めてのドラゴン討伐で、みな臆することなくよく戦ってくれた。
謝罪ではなく、ここは胸を張ってもいい場面だと私は思うぞ」
項垂れているトゥーリス先輩に、謝罪の必要はないと慰めの言葉を掛けるのは、作戦本部で指揮を執っていたハシム殿だ。
「そうです。先輩も後輩たちも懸命に頑張って王都を守り抜きました。
初めてのドラゴン討伐で、多くの死傷者が出なかったことを誇りに思うべきです。
先輩が後悔したら、頑張った後輩たちまで胸を張れなくなります」
先輩の指揮は何も間違っていなかったと、俺は微笑みながら断言した。
その場に居た他のメンバーも、優しく微笑みながら俺に同意して頷く。
「覇王様、私から大事な報告がございます。
今回、最大の手柄を立てた赤のダイキリさんは、グレードラゴンを真っ二つにして討伐に成功しましたが、その直後、グレードラゴンの尻尾に跳ね飛ばされました。
トーマス王子や黒のハーキムさんが駆け付けた時、落下したダイキリさんの体には、先日の火災で焼失した建物の柱の燃え残りが刺さっていました。
剣聖として恥ずかしくない活躍だっただろう? トーマス王子、俺の大剣を任せるぞと言い残し、息を引き取ったそうです」
「そうですか・・・分かりました」
ハシム殿の報告を聞いた俺は、それ以上言葉が出ず、黙々と夕食を口に運ぶ。
俺が食べ終わるまで、皆は気を利かせてテーブルから離れていく。
いつの間にか味のしない夕食を終え、報告を待っていた仲間たちから今日の話を順に聞いていく。
次に報告をしたのは、【覇王探求部会】の責任者であるログドル王子と部会員2人だった。
3人は、古代魔術具の起動の様子や、グレードラゴンに与えたダメージを中心に報告していく。
複製を急いで各領地にも配置できるよう頑張りますと、若い部会員の2人が誓ってくれる。
実際にグレードラゴンを追い払ったことで、自信とやる気に溢れている。
「よく頑張ってくれました。覇王探求部会の活躍を、これからも期待しています」
俺は2人の部会員に、今夜はゆっくり休んで欲しいと労い、明日からもよろしくと言って握手を交わした。
ログドル王子には、今日討伐したグレードラゴン5頭分の魔石を渡し、王宮に設置している魔法障壁の魔術具の復元を急いで欲しいと指示を出した。
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