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絶望と希望
303ー1 本当の脅威(6)ー1
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王都からグレードラゴンの情報を持ってきた賢者妖精ロルフに、俺は新たな指示を出す。
「ロルフ、俺たちはサナへ領に行く。
王都は王立高学院、魔獣討伐専門部隊、そして、Sランク冒険者たちに任せる。
古代魔術具を持って帰って、ログドル王子か副学院長に起動させろ。
これで洗脳解除できない時は、炎の攻撃で洗脳を解くよう伝えてくれ。
どうしても討伐できなくて、俺が必要だと学院長かログドル王子が判断したら知らせろ」
『了解じゃ』と、ちょっと渋い顔をしてロルフは戻っていった。
先程の実験では、グレードラゴンより上の位置から下に向かって魔術具を起動させ洗脳を解いた。
下から上に向かって起動させて上手くいくかどうかは、やってみなければ分からない。
それでも、使える手段は全て使わなければ、巨大なグレードラゴンに対抗するのは難しい。
単独でグレードラゴンの首を落とせる覇王軍主要メンバーは、現在誰も王都に居ない。
覇王である俺も、勇者であるラリエスも、何よりグレードラゴンに対抗できる光のドラゴンも不在なのだ。
まるで、こうなることが分かっていたかのような、いや、こうなることを狙ってのグレードラゴンを使った洗脳攻撃なのだろう。
……悔しい! 自分の無力さに腹が立つ。
今回、王都を含めた各領地の被害は、甚大なものになるだろう。
特に王都は、昨日の今日で疲れが残っているし、救済活動を始めたばかりだった。
そこに今度はグレードラゴンの襲撃だから、間違いなく最悪の事態だ。
……同時襲撃の予測は甘かったし、ブラックドラゴンの能力を知らな過ぎた。
覇王として、最悪の事態に備え出来る準備をしてきたつもりだ。
覇王講座を開講し、魔獣討伐専門部隊と覇王軍、冒険者や役人も鍛えた。
当然、万全だなんて思っていないし、まだまだ準備不足だ。
……すべては魔獣の大氾濫について、理解せず備えなかった王族と貴族の無責任が招いた結果だと、弱い自分はそう思いたくなる。
……いや、本当にそうだろうか? 覇王である俺は、己の責務をちゃんと果たしていると言えるのか?
俺は、何もかも覇王や勇者が何とかしてくれるなんて、甘えた考え方が許せなかった。
だから腐った貴族ではなく、学生を鍛えてリーダーにした。でも、本当にそれがベストな判断だったのだろうか?
「アコル様、領都サナへが見えてきました。
どうかされましたか? 顔色がよくないです。お疲れが溜まっているのではないですか?」
考え込んでいた俺の顔を覗き込むようにして、ルフナ王子が声を掛けてきた。
「ああ、ブラックドラゴンにまんまとしてやられたことと、己の無力に腹が立って、柄にもなく反省してしまった」
薄ら笑いをしながら、心配そうに俺を見ているルフナ王子に答える。
いくら頑張っても、多くの人が犠牲になってしまう。
魔獣の大氾濫なのだから仕方ないと考えるのは簡単だ。でも、そう思った瞬間に、俺は覇王としての資格を失ってしまう気がする。
「えっ? 何事も全力で取り組まれているアコル様が反省ですか?
一昨日も昨日も、今日だってフル活動で大活躍されているじゃないですか。
今回だって同時襲撃を予測され、事前に第一級警戒態勢を発令されたからこそ、被害は最小限で済んでいるはずです。
情けない王族や大臣に代わり、誰よりも懸命に努力されてきたのを私は知っています。
そもそも覇王様はまだ成人さえされていないのに、働き過ぎです」
俺よりも辛そうな顔をして、ルフナ王子が励ましてくれる。
「ロルフ、俺たちはサナへ領に行く。
王都は王立高学院、魔獣討伐専門部隊、そして、Sランク冒険者たちに任せる。
古代魔術具を持って帰って、ログドル王子か副学院長に起動させろ。
これで洗脳解除できない時は、炎の攻撃で洗脳を解くよう伝えてくれ。
どうしても討伐できなくて、俺が必要だと学院長かログドル王子が判断したら知らせろ」
『了解じゃ』と、ちょっと渋い顔をしてロルフは戻っていった。
先程の実験では、グレードラゴンより上の位置から下に向かって魔術具を起動させ洗脳を解いた。
下から上に向かって起動させて上手くいくかどうかは、やってみなければ分からない。
それでも、使える手段は全て使わなければ、巨大なグレードラゴンに対抗するのは難しい。
単独でグレードラゴンの首を落とせる覇王軍主要メンバーは、現在誰も王都に居ない。
覇王である俺も、勇者であるラリエスも、何よりグレードラゴンに対抗できる光のドラゴンも不在なのだ。
まるで、こうなることが分かっていたかのような、いや、こうなることを狙ってのグレードラゴンを使った洗脳攻撃なのだろう。
……悔しい! 自分の無力さに腹が立つ。
今回、王都を含めた各領地の被害は、甚大なものになるだろう。
特に王都は、昨日の今日で疲れが残っているし、救済活動を始めたばかりだった。
そこに今度はグレードラゴンの襲撃だから、間違いなく最悪の事態だ。
……同時襲撃の予測は甘かったし、ブラックドラゴンの能力を知らな過ぎた。
覇王として、最悪の事態に備え出来る準備をしてきたつもりだ。
覇王講座を開講し、魔獣討伐専門部隊と覇王軍、冒険者や役人も鍛えた。
当然、万全だなんて思っていないし、まだまだ準備不足だ。
……すべては魔獣の大氾濫について、理解せず備えなかった王族と貴族の無責任が招いた結果だと、弱い自分はそう思いたくなる。
……いや、本当にそうだろうか? 覇王である俺は、己の責務をちゃんと果たしていると言えるのか?
俺は、何もかも覇王や勇者が何とかしてくれるなんて、甘えた考え方が許せなかった。
だから腐った貴族ではなく、学生を鍛えてリーダーにした。でも、本当にそれがベストな判断だったのだろうか?
「アコル様、領都サナへが見えてきました。
どうかされましたか? 顔色がよくないです。お疲れが溜まっているのではないですか?」
考え込んでいた俺の顔を覗き込むようにして、ルフナ王子が声を掛けてきた。
「ああ、ブラックドラゴンにまんまとしてやられたことと、己の無力に腹が立って、柄にもなく反省してしまった」
薄ら笑いをしながら、心配そうに俺を見ているルフナ王子に答える。
いくら頑張っても、多くの人が犠牲になってしまう。
魔獣の大氾濫なのだから仕方ないと考えるのは簡単だ。でも、そう思った瞬間に、俺は覇王としての資格を失ってしまう気がする。
「えっ? 何事も全力で取り組まれているアコル様が反省ですか?
一昨日も昨日も、今日だってフル活動で大活躍されているじゃないですか。
今回だって同時襲撃を予測され、事前に第一級警戒態勢を発令されたからこそ、被害は最小限で済んでいるはずです。
情けない王族や大臣に代わり、誰よりも懸命に努力されてきたのを私は知っています。
そもそも覇王様はまだ成人さえされていないのに、働き過ぎです」
俺よりも辛そうな顔をして、ルフナ王子が励ましてくれる。
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