570 / 709
絶望と希望
299ー1 本当の脅威(2)ー1
しおりを挟む
◇◇ 建設大臣ログドル王子 ◇◇
昨日負ったケガと火傷は、助けに駆け付けてくれた執行部部長のトゥーリス君がポーションで治療してくれた。
軽い貧血症状が出ていたので、用心のため医務室に泊まった方がいいと学院長に言われ、昨夜は王宮に戻らず高学院に残った。
前の夜は魔法部の学生と一緒に徹夜で魔法陣を描いていたし、西地区の被災者の誘導で走り回り疲れたのか、夕食後は倒れるように眠りについた。
ぐっすりと眠れた私は、夜明けとともに王宮へ帰ろうと医務室を出て、見上げた空にランドルと覇王様、弟ルフナの姿を見付けた。
一昨日はワイコリーム領で戦われ、昨日は王都でブラックドラゴンの討伐と西地区で大魔法を使われたはずだ。
今日はリドミウム領に向かわれるようだが、少しはお休みになられたのだろうか?
覇王様の御身体も気になるが、王宮の火災の後始末は建設大臣である私の仕事だ。
急いで戻り被害状況を確認し、復興予算を計上しなければならない。
「ログドル王子、リドミウム領に飛来したブラックドラゴンが、龍山に向かいました。
大量のグレードラゴンを引き連れて、ブラックドラゴンが王都を再び襲撃する可能性があります。
覇王様が【覇王探求部会】に緊急招集をかけられました。ブラックドラゴンの音攻撃に対抗する魔術具を、急いで複製せよとのご命令です。
2時間後には、再び王都に第一級警戒態勢が発令されます」
医療棟から正門に向かっていた私に走り寄り、覇王様からのご命令を鬼気迫る感じで伝えるのは、執行部部長のトゥーリス君だ。
その顔色は悪く、本気で大惨事を予想しているのだと分かる。
「大量のグレードラゴン・・・よし、覇王探求部会の総責任者である私が緊急招集をかける。
緊急招集用の狼煙をあげ、王都中に散らばっている協力者と部会員を集めるため、高学院に設置された鐘を至急鳴らそう!」
「分かりました。私が演習場で狼煙を上げます。ログドル王子は鐘をお願いします。
鐘を鳴らせば、学生も教授もみな起きて体育館に集合します。そちらの説明は私にお任せください」
執行部部長に指名されるだけあって、トゥーリス君はしっかりしている。
こう言ってはなんだが、次期サナへ侯爵にはトゥーリス君こそが相応しいと思ってしまう。
トゥーリス君と別れて、高学院に設置された鐘を鳴らすため警備隊の詰め所に走って向かう。
高学院の鐘は、見張り塔の最上部に取り付けられている。
警備隊の詰め所の隣に先月建設された見張り塔は、王都が見渡せるギリギリの高さで、人ひとりが通れる幅の螺旋階段を登っていかねばならない。
がっしりした建物にするとドラゴンに狙われるので、のっぽな見張り塔だ。
「緊急事態だ! 至急【覇王探求部会】を招集する鐘を鳴らしてくれ。
それから、2時間後に再び第一級警戒態勢が発令される。
高学院警備隊は、緊急事態に備えて学院の門を開け! 代表者は体育館で行われる説明を受けろ」
「承知しました!」
早番の警備隊員に指示を出し、鐘を鳴らすのは緑色の狼煙が上がってからにするよう注意する。
昨日の今日で疲れの見える警備隊員だが、背筋を伸ばしてはっきりと返事をする。さすが王宮警備隊副隊長が選んだ隊員だ。
まだ寝静まている王都に鐘が鳴り響くと、何事かと皆が驚き家の外に飛び出してしまう。
王宮が鳴らす警鐘と高学院が鳴らす鐘の音は全く違う。それでも人々は混乱するので、避難が必要な警鐘ではないと安心させるためにも狼煙を上げるのだ。
聡い者なら、夜明けとともに鳴らされる鐘の音に、ただ事ではないと気付き警戒するだろう。
私は図書館棟の1階にある覇王軍本部へと向かいながら、狼煙が上がるのを確認し、続いて鳴り始めた鐘の音を聞いて走る速度を上げる。
昨日負ったケガと火傷は、助けに駆け付けてくれた執行部部長のトゥーリス君がポーションで治療してくれた。
軽い貧血症状が出ていたので、用心のため医務室に泊まった方がいいと学院長に言われ、昨夜は王宮に戻らず高学院に残った。
前の夜は魔法部の学生と一緒に徹夜で魔法陣を描いていたし、西地区の被災者の誘導で走り回り疲れたのか、夕食後は倒れるように眠りについた。
ぐっすりと眠れた私は、夜明けとともに王宮へ帰ろうと医務室を出て、見上げた空にランドルと覇王様、弟ルフナの姿を見付けた。
一昨日はワイコリーム領で戦われ、昨日は王都でブラックドラゴンの討伐と西地区で大魔法を使われたはずだ。
今日はリドミウム領に向かわれるようだが、少しはお休みになられたのだろうか?
覇王様の御身体も気になるが、王宮の火災の後始末は建設大臣である私の仕事だ。
急いで戻り被害状況を確認し、復興予算を計上しなければならない。
「ログドル王子、リドミウム領に飛来したブラックドラゴンが、龍山に向かいました。
大量のグレードラゴンを引き連れて、ブラックドラゴンが王都を再び襲撃する可能性があります。
覇王様が【覇王探求部会】に緊急招集をかけられました。ブラックドラゴンの音攻撃に対抗する魔術具を、急いで複製せよとのご命令です。
2時間後には、再び王都に第一級警戒態勢が発令されます」
医療棟から正門に向かっていた私に走り寄り、覇王様からのご命令を鬼気迫る感じで伝えるのは、執行部部長のトゥーリス君だ。
その顔色は悪く、本気で大惨事を予想しているのだと分かる。
「大量のグレードラゴン・・・よし、覇王探求部会の総責任者である私が緊急招集をかける。
緊急招集用の狼煙をあげ、王都中に散らばっている協力者と部会員を集めるため、高学院に設置された鐘を至急鳴らそう!」
「分かりました。私が演習場で狼煙を上げます。ログドル王子は鐘をお願いします。
鐘を鳴らせば、学生も教授もみな起きて体育館に集合します。そちらの説明は私にお任せください」
執行部部長に指名されるだけあって、トゥーリス君はしっかりしている。
こう言ってはなんだが、次期サナへ侯爵にはトゥーリス君こそが相応しいと思ってしまう。
トゥーリス君と別れて、高学院に設置された鐘を鳴らすため警備隊の詰め所に走って向かう。
高学院の鐘は、見張り塔の最上部に取り付けられている。
警備隊の詰め所の隣に先月建設された見張り塔は、王都が見渡せるギリギリの高さで、人ひとりが通れる幅の螺旋階段を登っていかねばならない。
がっしりした建物にするとドラゴンに狙われるので、のっぽな見張り塔だ。
「緊急事態だ! 至急【覇王探求部会】を招集する鐘を鳴らしてくれ。
それから、2時間後に再び第一級警戒態勢が発令される。
高学院警備隊は、緊急事態に備えて学院の門を開け! 代表者は体育館で行われる説明を受けろ」
「承知しました!」
早番の警備隊員に指示を出し、鐘を鳴らすのは緑色の狼煙が上がってからにするよう注意する。
昨日の今日で疲れの見える警備隊員だが、背筋を伸ばしてはっきりと返事をする。さすが王宮警備隊副隊長が選んだ隊員だ。
まだ寝静まている王都に鐘が鳴り響くと、何事かと皆が驚き家の外に飛び出してしまう。
王宮が鳴らす警鐘と高学院が鳴らす鐘の音は全く違う。それでも人々は混乱するので、避難が必要な警鐘ではないと安心させるためにも狼煙を上げるのだ。
聡い者なら、夜明けとともに鳴らされる鐘の音に、ただ事ではないと気付き警戒するだろう。
私は図書館棟の1階にある覇王軍本部へと向かいながら、狼煙が上がるのを確認し、続いて鳴り始めた鐘の音を聞いて走る速度を上げる。
3
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
~まるまる 町ごと ほのぼの 異世界生活~
クラゲ散歩
ファンタジー
よく 1人か2人で 異世界に召喚や転生者とか 本やゲームにあるけど、実際どうなのよ・・・
それに 町ごとってあり?
みんな仲良く 町ごと クリーン国に転移してきた話。
夢の中 白猫?の人物も出てきます。
。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる