569 / 709
絶望と希望
298ー2 本当の脅威(1)ー2
しおりを挟む
「【王宮対策室】の皆さん、俺は皆さんが、この三日間で救済活動について真摯に学び、しっかり実践してくれると期待しています。
学生である覇王軍や王立高学院特別部隊が命を懸けているのですから、当然皆さんも同じ心構えで任務を遂行できると私に示してください」
自分の名前・・・というか責任の所在が明らかにされると知った【王宮対策室】のメンバーは、俺から軽い覇気まで受けカタカタと小さく震える。
寝る間もないほどの大変な仕事を任されたのに、それを名誉職だと喜ぶ貴族思考に、今更あれこれ言っても仕方ない。
何事も経験が必要だし、最初から完璧を期待してはいけない。
「それと今回の王都での活動料金は、ドラゴン討伐と消火活動に対し金貨100枚。王立高学院特別部隊の出動料として金貨50枚を請求いたします。
被害を最小限に食い止めたことを考えると、かなり格安ですわね」
支払いが5日以内に行われない場合は、王立高学院にも考えがあると更に脅しをかけるのは学院長だ。
夕食の時の話では、金貨200枚は取るべきだと学院長も副学院長も言っていた。
特に、医療チームが持ち出したポーションのことを考えると、今後ポーションを提供できなくなる可能性もあると心配していた。
「合計金貨150枚ですか・・・それは、王宮に戻って上司と相談しなければ返事ができません」
金貨150枚を高いと思っている【王宮対策室】は、緊急時の必要経費の支払いも任されている。
大きな予算を扱える部署だから、名誉ある役職だなんて勘違いするのだろう。
「今回持ち出したポーション代金だけでも金貨100枚を超えるので、実際に使用したポーション代金は、別途請求する方がいいだろう。
それを拒むなら、今後は王宮や貴族にはポーションを供給せず、全て個人で用意させるべきだ」
「そうですねマキアート副学院長。そもそも王立高学院特別部隊は、貴族や役人を救う必要などないのですから」
どんどん金勘定に詳しくなっていく副学院長を頼もしく思いながら、俺も自分の考えを伝えておく。
お前たちの態度次第で、全貴族や役人から恨まれることになるぞと、分かり易く説明したつもりだ。
……いや実際のところ、魔法陣を描いた特殊紙の代金、焼け焦げてしまった学生の制服代金、学生の治療に使ったポーション代金等を考えると、完全に赤字だ。
……国からお金を得て利益を出していると思われるのも我慢ならないから、経費明細は公表しよう。王立高学院は今も、自腹を切って活動しているのだと。
翌朝、出発準備を終え演習場に向かっていると、ラリエスの契約妖精トワから、ブラックドラゴンが龍山の方に向かったと緊急連絡が入った。
「覇王様、今回は私をお供させてください」
見送りに来ていたルフナ王子が、トワの話を聞いて同行を願い出る。
「まさか、今度は龍山のグレードラゴンを操るつもりか?」
自分で発した言葉に衝撃を受けているのはトゥーリス先輩だ。
そんなことになれば、今度はサナへ領やマギ領、レイム領だって危険に曝されるかもしれない。
もちろん、王都が再び襲われることだって考えられる。
「そんな最悪な事態は想像もしたくないが、龍山のグレードラゴンの数は30を越えている。
もしも10頭のグレードラゴンを同時に洗脳し襲撃してきたら、王都は間違いなく壊滅する」
俺は自分でそう言いながら、最悪の事態を想像する。
……覇王である俺は、どんな時でも最悪の事態を考えて行動しなければならない。
「ロルフ、国王と宰相にこのことを伝え、再び第一級警戒態勢を発令しろと指示を出せ。
トゥーリス先輩、【覇王探求部会】を緊急招集し、ブラックドラゴンや変異種の音攻撃に対抗する古代魔術具の複製を急いでください」
学生である覇王軍や王立高学院特別部隊が命を懸けているのですから、当然皆さんも同じ心構えで任務を遂行できると私に示してください」
自分の名前・・・というか責任の所在が明らかにされると知った【王宮対策室】のメンバーは、俺から軽い覇気まで受けカタカタと小さく震える。
寝る間もないほどの大変な仕事を任されたのに、それを名誉職だと喜ぶ貴族思考に、今更あれこれ言っても仕方ない。
何事も経験が必要だし、最初から完璧を期待してはいけない。
「それと今回の王都での活動料金は、ドラゴン討伐と消火活動に対し金貨100枚。王立高学院特別部隊の出動料として金貨50枚を請求いたします。
被害を最小限に食い止めたことを考えると、かなり格安ですわね」
支払いが5日以内に行われない場合は、王立高学院にも考えがあると更に脅しをかけるのは学院長だ。
夕食の時の話では、金貨200枚は取るべきだと学院長も副学院長も言っていた。
特に、医療チームが持ち出したポーションのことを考えると、今後ポーションを提供できなくなる可能性もあると心配していた。
「合計金貨150枚ですか・・・それは、王宮に戻って上司と相談しなければ返事ができません」
金貨150枚を高いと思っている【王宮対策室】は、緊急時の必要経費の支払いも任されている。
大きな予算を扱える部署だから、名誉ある役職だなんて勘違いするのだろう。
「今回持ち出したポーション代金だけでも金貨100枚を超えるので、実際に使用したポーション代金は、別途請求する方がいいだろう。
それを拒むなら、今後は王宮や貴族にはポーションを供給せず、全て個人で用意させるべきだ」
「そうですねマキアート副学院長。そもそも王立高学院特別部隊は、貴族や役人を救う必要などないのですから」
どんどん金勘定に詳しくなっていく副学院長を頼もしく思いながら、俺も自分の考えを伝えておく。
お前たちの態度次第で、全貴族や役人から恨まれることになるぞと、分かり易く説明したつもりだ。
……いや実際のところ、魔法陣を描いた特殊紙の代金、焼け焦げてしまった学生の制服代金、学生の治療に使ったポーション代金等を考えると、完全に赤字だ。
……国からお金を得て利益を出していると思われるのも我慢ならないから、経費明細は公表しよう。王立高学院は今も、自腹を切って活動しているのだと。
翌朝、出発準備を終え演習場に向かっていると、ラリエスの契約妖精トワから、ブラックドラゴンが龍山の方に向かったと緊急連絡が入った。
「覇王様、今回は私をお供させてください」
見送りに来ていたルフナ王子が、トワの話を聞いて同行を願い出る。
「まさか、今度は龍山のグレードラゴンを操るつもりか?」
自分で発した言葉に衝撃を受けているのはトゥーリス先輩だ。
そんなことになれば、今度はサナへ領やマギ領、レイム領だって危険に曝されるかもしれない。
もちろん、王都が再び襲われることだって考えられる。
「そんな最悪な事態は想像もしたくないが、龍山のグレードラゴンの数は30を越えている。
もしも10頭のグレードラゴンを同時に洗脳し襲撃してきたら、王都は間違いなく壊滅する」
俺は自分でそう言いながら、最悪の事態を想像する。
……覇王である俺は、どんな時でも最悪の事態を考えて行動しなければならない。
「ロルフ、国王と宰相にこのことを伝え、再び第一級警戒態勢を発令しろと指示を出せ。
トゥーリス先輩、【覇王探求部会】を緊急招集し、ブラックドラゴンや変異種の音攻撃に対抗する古代魔術具の複製を急いでください」
3
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる