キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん

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絶望と希望

291ー2 同時襲撃の恐怖(7)ー2

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 私は総指揮官として今後の方針を決め、皆に伝えなければならない。

「空が白んできたら警鐘を鳴らしましょう王様。
 同時に、執務棟に設置した魔術具を起動させます。
 問題は炎の攻撃です。水魔法が使える役人全てを使い、火災に備えて出動命令を出してください。誰一人、遊ばせる事などできません」

私は頭の中で段取りを組み、王様に今後の方針を提案する。

 王宮で働く全員の名簿をマジックバッグから取り出し、水魔法を使える者の名前に印をつけていく。
 そして作戦本部で待機していた王宮警備隊隊長に、王宮の消火班の指揮を執って欲しいと頼んだ。

「王都の他の地区から火災が発生した場合、王立高学院の魔術部に消火活動を依頼するしかないでしょう。
 学生や教授であれば、広域魔法陣が使える可能性がありますから。
 もしもに備えて、私はこれから高学院に向かいます宰相」

 覇王様から直接魔法陣攻撃の指導を受けている建設大臣ログドル王子が、これから高学院に向かい、消火活動に有効な魔法陣を大量作成し火災に備えたいと志願した。

「よかろう。頼んだぞ。
 もしも大規模火災が発生すれば、王都は地獄と化すだろう。
 ブラックドラゴンや魔獣の討伐も重要だが、王都民の命と財産を守ることを優先する」

王様はログドル王子の案に賛成し即断された。

「頼みますログドル王子」

私もそれしかないだろうと同意し、王子を送り出した。



 ほとんど仮眠することもできないまま、東の空が白み始めた。
 ブラックドラゴンは、王宮の天守に居座ったまま動きはない。

 寝ているブラックドラゴンを起こしてしまうだろうが、打ち合わせ通りに魔獣襲来を告げる警鐘が王都中で鳴り始める。
 不安で眠れぬ夜を過ごしたであろう王都民たちに、再び緊張が走るだろう。

 思った通り、けたたましく鳴り響く警鐘で、ブラックドラゴンは目を覚ました。
 警鐘と共に古代魔術具を起動し、火災に備えて水魔法を使える者はドラゴンの動きを一斉に注視する。

 目を覚ましたブラックドラゴンは、キィーともギィーとも聞こえる耳障りな金属音攻撃を開始した。

「なんて大きな音だ。全員耳を塞げ!」

不快音が頭に響く中、私は大声で皆に命令し自分も耳を塞ぐ。 

 ブラックドラゴンが、金属音のような鳴き声で魔獣を洗脳することは、既に国中の掲示板で民に知らせてある。
 しかも人間は洗脳されないので、きちんと耳を塞げば大丈夫だと対処法も教えてあった。

 だが現実は厳しく、少しでも耳の塞ぎ方が悪いと頭が割れるように痛んだ。
 この音の攻撃で、王都に入り込んだスノーウルフは再び洗脳されるだろうが、魔獣討伐専門部隊もできる限りの手を打っているはずだ。

 この音の攻撃に対抗する古代魔術具は、残念ながらまだ1台しか復元できていない。
 専門家である【覇王探求部会】メンバーが、懸命に頑張ってはいるのだが、なにせ絶対的な人数が足りないうえ、研究費用も足りていない。

 ……全ては国の怠慢が招いた結果だ。

 1台は高学院にあり、もう1台はリドミウム領に向かった覇王軍が持って行った。
 貴重な防御魔法の魔術具を王宮に貸し出してくださっただけでも、感謝しなければならない。

 音の洗脳攻撃が止んだと同時に、ブラックドラゴンは天守の一部を崩して、上空にふわりと浮かび上がった。
 洗脳されたモノが集まるのを期待しているのか、キョロキョロと辺りを見回し、上級地区の上空を何度も旋回する。

 張り詰めた緊張状態が続き、誰も言葉を発しないし、物音をたてないようひっそりと身を隠しながらブラックドラゴンを目で追う。
 攻撃班と消火班以外は、皆地下室と執務棟の1階に避難しており、ブラックドラゴンの視界には人の姿は映っていないはずだ。

 ごくりと唾を飲み込んだその時、ブラックドラゴンは口から5メートル級の火の玉を吐き出した。
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