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絶望と希望
286ー2 同時襲撃の恐怖(2)ー2
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「ブラックドラゴンだ。グレードラゴンの半分くらいの大きさで、背びれは銀色に輝き、目は4つ。そして翼は4枚・・・間違いない。
副指揮官、王都に設置した魔術具の使用許可を出す狼煙をあげろ!」
「承知しました!」
トーマス王子は、皆に聞かせるよう大きな声で説明し、直ぐ副指揮官に指示を出します。
そして視界から消えたブラックドラゴンを確認するため、図書館棟の屋上目指して駆け出します。
「警備隊は学院全ての門を開け、避難民の受けれを開始してください。
ミレーヌさん、王立高学院特別部隊の指揮をお願いします。
副学院長は、学院に残っている魔術具の起動準備を開始してください」
「承知しました」
私の指示を聞いたミレーヌさんと副学院長、警備隊の責任者が、急いで図書室を出ていきます。
「アトラ、覇王様に第一報をお伝えして」
『了解フィナンシェ。エクレア様の所に瞬間移動するね』
私の契約妖精アトラくんが、エクレア様から頂いた特別な魔石を握って瞬間移動していきます。
再び窓の外に視線を向け、王都に被害が出ていないか確認します。
……緊張の緩んだ王都民は、みな避難を開始したかしら?
……ちゃんと子供や女性や老人を優先して欲しいわ。
心配は尽きないけれど、私は学院長として学生や職員の指揮を執らねばなりません。
頼りの覇王軍は、半数が昼前にリドミウムの森に向け出動し、2時間前にはエイト君が率いる残り半数と、ノエルさんが率いる王立高学院特別部隊が、ワイコリーム領に向け出動しました。
ワイコリーム領は、かなりの被害が出ているようです。
ですが今回王都には、魔獣討伐専門部隊の半数が残っています。
「母上、ドラゴンの数は1頭ですが、アイツは口から炎を吐き攻撃しています。
現在、北門の下級地区に火の手が見えます。
もしかしたら覇王様の予見通り、北門には魔獣も来ているかも知れません」
トーマス王子と一緒に屋上に向かった息子のルフナが戻ってきて、厳しい顔をして現況を報告します。
覇王軍メンバーの中で王都に残ったのは、息子のルフナとサナへ侯爵子息のトゥーリス君だけです。
同時襲撃を懸念された覇王様が、この2人を王都に残してくださったのです。
たった2人でも魔獣討伐の指揮官として、その存在は心強いことでしょう。
トゥーリス君は一階にある覇王軍本部から、様々な人に指示を出しています。
逞しく成長した自慢の息子は、いざという時に学院を出て戦うため待機です。
「グレードラゴンを率いていないだけましだが、火災は厄介だ。北門の下級地区は住民の数は少ないが、あの辺りは木造住宅が半分くらいある。
それに住民は避難していて消火活動ができない。冒険者を応援に向かわせるしかないな」
私の隣で空を見上げていた冒険者ギルド連携部のダルトン代表は、冒険者ギルドに応援を頼むしかないと言い置き、正門前で待機している者に指示を出すため図書室を出ていかれました。
大演習場の方に視線を向けると、多くの住民が巨大地下壕に避難している姿が見えます。
中級地区の住民の多くは、教会の大聖堂崩壊を目撃しているので、ドラゴンの恐怖は身に染みているのです。
「もう日が暮れるというのに、ブラックドラゴンは夜でも活動するのかしら?」
私は恐怖で震える足をなんとか動かし、王宮が見える場所へと移動しながら、外の様子を注視しているハシム殿に声を掛けました。
「私の知る限りでは、昼間だけだったと思います。
ああ、嫌な予感というのは当たってしまうものですね。学院長、ブラックドラゴンが王宮の天守に降りたようです」
「覇王様の懸念通りですね。私はできるだけ照明を暗くするよう、各所に指示を出してきます」
弱気になりそうな自分を叱咤し、ハシム殿にそう告げた私は、背筋を伸ばして行動を開始します。
ブラックドラゴンが灯りに反応する可能性を考え、できることは全てやらねばなりません。
30分後、北門から魔獣が侵入したとの知らせが入り、再び緊張が走りました。
副指揮官、王都に設置した魔術具の使用許可を出す狼煙をあげろ!」
「承知しました!」
トーマス王子は、皆に聞かせるよう大きな声で説明し、直ぐ副指揮官に指示を出します。
そして視界から消えたブラックドラゴンを確認するため、図書館棟の屋上目指して駆け出します。
「警備隊は学院全ての門を開け、避難民の受けれを開始してください。
ミレーヌさん、王立高学院特別部隊の指揮をお願いします。
副学院長は、学院に残っている魔術具の起動準備を開始してください」
「承知しました」
私の指示を聞いたミレーヌさんと副学院長、警備隊の責任者が、急いで図書室を出ていきます。
「アトラ、覇王様に第一報をお伝えして」
『了解フィナンシェ。エクレア様の所に瞬間移動するね』
私の契約妖精アトラくんが、エクレア様から頂いた特別な魔石を握って瞬間移動していきます。
再び窓の外に視線を向け、王都に被害が出ていないか確認します。
……緊張の緩んだ王都民は、みな避難を開始したかしら?
……ちゃんと子供や女性や老人を優先して欲しいわ。
心配は尽きないけれど、私は学院長として学生や職員の指揮を執らねばなりません。
頼りの覇王軍は、半数が昼前にリドミウムの森に向け出動し、2時間前にはエイト君が率いる残り半数と、ノエルさんが率いる王立高学院特別部隊が、ワイコリーム領に向け出動しました。
ワイコリーム領は、かなりの被害が出ているようです。
ですが今回王都には、魔獣討伐専門部隊の半数が残っています。
「母上、ドラゴンの数は1頭ですが、アイツは口から炎を吐き攻撃しています。
現在、北門の下級地区に火の手が見えます。
もしかしたら覇王様の予見通り、北門には魔獣も来ているかも知れません」
トーマス王子と一緒に屋上に向かった息子のルフナが戻ってきて、厳しい顔をして現況を報告します。
覇王軍メンバーの中で王都に残ったのは、息子のルフナとサナへ侯爵子息のトゥーリス君だけです。
同時襲撃を懸念された覇王様が、この2人を王都に残してくださったのです。
たった2人でも魔獣討伐の指揮官として、その存在は心強いことでしょう。
トゥーリス君は一階にある覇王軍本部から、様々な人に指示を出しています。
逞しく成長した自慢の息子は、いざという時に学院を出て戦うため待機です。
「グレードラゴンを率いていないだけましだが、火災は厄介だ。北門の下級地区は住民の数は少ないが、あの辺りは木造住宅が半分くらいある。
それに住民は避難していて消火活動ができない。冒険者を応援に向かわせるしかないな」
私の隣で空を見上げていた冒険者ギルド連携部のダルトン代表は、冒険者ギルドに応援を頼むしかないと言い置き、正門前で待機している者に指示を出すため図書室を出ていかれました。
大演習場の方に視線を向けると、多くの住民が巨大地下壕に避難している姿が見えます。
中級地区の住民の多くは、教会の大聖堂崩壊を目撃しているので、ドラゴンの恐怖は身に染みているのです。
「もう日が暮れるというのに、ブラックドラゴンは夜でも活動するのかしら?」
私は恐怖で震える足をなんとか動かし、王宮が見える場所へと移動しながら、外の様子を注視しているハシム殿に声を掛けました。
「私の知る限りでは、昼間だけだったと思います。
ああ、嫌な予感というのは当たってしまうものですね。学院長、ブラックドラゴンが王宮の天守に降りたようです」
「覇王様の懸念通りですね。私はできるだけ照明を暗くするよう、各所に指示を出してきます」
弱気になりそうな自分を叱咤し、ハシム殿にそう告げた私は、背筋を伸ばして行動を開始します。
ブラックドラゴンが灯りに反応する可能性を考え、できることは全てやらねばなりません。
30分後、北門から魔獣が侵入したとの知らせが入り、再び緊張が走りました。
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