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策略と混乱
282ー1 逃げるサナへ侯爵と追うモノたち(3)ー1
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◇◇ サナへ侯爵 ◇◇
……商人が大剣? いや、確かに商人にしては立派な体躯だが、大剣は素人が扱えるモノではないぞ。
などと一瞬考え、私に剣を寄越せと言おうとしたが、荷馬車を囲んでいるスノーウルフは今にも飛び掛かってきそうで、声を出すこともできない。
「せめて自分の身ぐらい守れ!」
商人は偉そうにこの私に命令し、正面に居たスノーウルフの首を一撃で刎ねた。
……な、なに? 一撃だと!
……信じられない。商人如きが使える剣でも剣技でもない。
これで残っているスノーウルフは6頭と変異種1頭だ。
商人は倒れたスノーウルフには目もくれず、荷馬車から少し離れた場所まで迫っている巨大な変異種に向かって駆け出した。
……この私でも足が竦む変異種に向かっていくだと? あり得ない。
商人が一撃で正面のスノーウルフを倒したので、荷馬車を囲んでいたスノーウルフの群は二手に分かれた。
私を獲物として狙うスノーウルフは半分の3頭。
これを倒さなければ、死ぬことになる。
商人が変異種と3頭のスノーウルフを引き付けてくれる間に、目の前の魔獣を倒すことができるだろうか・・・
私も荷馬車から飛び降り、覚悟を決めスノーウルフと対峙する。
時間にして10分、いや、もっと長かったような気がする。
ハアハアと息が上がる。
苦しくてへたり込みそうになるが、1秒でも早くここから離脱しなければならない。
3頭のスノーウルフは、なんとか氷魔法で倒した。
商人は生きていないだろうが、脅威の変異種がどうなったのかが気になり、素早く視線を向け思わず大声で叫んでしまった。
「あ、危ない!」と。
視線を向けたその時、商人は高く高く跳躍した変異種に襲い掛かられようとしていた。
無残に殺され食いちぎられるであろう姿を想像し、思わず目を瞑り顔を背けてしまう。
ドーン! と大きな音と地響きがした。
私は無残に殺された姿と、間一髪避けた可能性を考えながら目を開ける。
ところが、視線の先に見えたのは、私の予想とは異なり、巨大な変異種の横たわる姿だった。
「はあ?」
思わず変な声を出した私は、我が目を疑った。
倒れた変異種は腹からドクドクと血を流しており、落ち着いてよく見たら、普通のスノーウルフ3頭も、見事に首を刎ねられていた。
……信じられない。これは夢か?
商人は地面に突き刺していた大剣を引き抜くと、剣の血を振り落としてカバンに・・・いや、おかしいだろう? 何で大剣があんなカバンに入るんだよ!
荷馬車で移動するような商人が、まさかマジックバッグを持っているだと?
いろいろ驚き過ぎて頭がまともに働かないが、どうやら危機は去ったようだ。
そう思った瞬間、私はその場にへたり込んでしまった。
……た、助かった~。アイツは、あの男はいったい何者だ?
普通の商人が変異種を、いや、普通のスノーウルフだって倒すことなんて出来ないだろう。
変異種なんて、Aランクのパーティー3組が協力しないと倒せない化け物だ。
それをたった一撃で倒すなんて、魔獣討伐専門部隊の指揮官クラスか、覇王軍メンバーくらいだろう。
そんな奴が何故、商人の真似事などしている?
味方だと考えるのは危険だが、シーブル派にそんな人材はいないはず。
……商人が大剣? いや、確かに商人にしては立派な体躯だが、大剣は素人が扱えるモノではないぞ。
などと一瞬考え、私に剣を寄越せと言おうとしたが、荷馬車を囲んでいるスノーウルフは今にも飛び掛かってきそうで、声を出すこともできない。
「せめて自分の身ぐらい守れ!」
商人は偉そうにこの私に命令し、正面に居たスノーウルフの首を一撃で刎ねた。
……な、なに? 一撃だと!
……信じられない。商人如きが使える剣でも剣技でもない。
これで残っているスノーウルフは6頭と変異種1頭だ。
商人は倒れたスノーウルフには目もくれず、荷馬車から少し離れた場所まで迫っている巨大な変異種に向かって駆け出した。
……この私でも足が竦む変異種に向かっていくだと? あり得ない。
商人が一撃で正面のスノーウルフを倒したので、荷馬車を囲んでいたスノーウルフの群は二手に分かれた。
私を獲物として狙うスノーウルフは半分の3頭。
これを倒さなければ、死ぬことになる。
商人が変異種と3頭のスノーウルフを引き付けてくれる間に、目の前の魔獣を倒すことができるだろうか・・・
私も荷馬車から飛び降り、覚悟を決めスノーウルフと対峙する。
時間にして10分、いや、もっと長かったような気がする。
ハアハアと息が上がる。
苦しくてへたり込みそうになるが、1秒でも早くここから離脱しなければならない。
3頭のスノーウルフは、なんとか氷魔法で倒した。
商人は生きていないだろうが、脅威の変異種がどうなったのかが気になり、素早く視線を向け思わず大声で叫んでしまった。
「あ、危ない!」と。
視線を向けたその時、商人は高く高く跳躍した変異種に襲い掛かられようとしていた。
無残に殺され食いちぎられるであろう姿を想像し、思わず目を瞑り顔を背けてしまう。
ドーン! と大きな音と地響きがした。
私は無残に殺された姿と、間一髪避けた可能性を考えながら目を開ける。
ところが、視線の先に見えたのは、私の予想とは異なり、巨大な変異種の横たわる姿だった。
「はあ?」
思わず変な声を出した私は、我が目を疑った。
倒れた変異種は腹からドクドクと血を流しており、落ち着いてよく見たら、普通のスノーウルフ3頭も、見事に首を刎ねられていた。
……信じられない。これは夢か?
商人は地面に突き刺していた大剣を引き抜くと、剣の血を振り落としてカバンに・・・いや、おかしいだろう? 何で大剣があんなカバンに入るんだよ!
荷馬車で移動するような商人が、まさかマジックバッグを持っているだと?
いろいろ驚き過ぎて頭がまともに働かないが、どうやら危機は去ったようだ。
そう思った瞬間、私はその場にへたり込んでしまった。
……た、助かった~。アイツは、あの男はいったい何者だ?
普通の商人が変異種を、いや、普通のスノーウルフだって倒すことなんて出来ないだろう。
変異種なんて、Aランクのパーティー3組が協力しないと倒せない化け物だ。
それをたった一撃で倒すなんて、魔獣討伐専門部隊の指揮官クラスか、覇王軍メンバーくらいだろう。
そんな奴が何故、商人の真似事などしている?
味方だと考えるのは危険だが、シーブル派にそんな人材はいないはず。
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