531 / 709
策略と混乱
279ー2 人質交換(2)ー2
しおりを挟む
戦争……などという事態になれば、間違いなくコルランドル王国が圧勝するだろう。
「ハシム殿、戦争はよくありません。コルランドル王国の民が命を落とします。
覇王様と勇者様にお願いすれば、奴等が占拠している屋敷など、一瞬で消滅させてくださいます」
「確かにそうですなログドル王子。
覇王様は民を大切にされますし、勇者様はコルランドル王国の勇者だ。
もしも大事な民を傷付けたりしたら、光のドラゴンで飛び、悪人を殲滅なさるでしょう」
ログドル王子と私は、光のドラゴンの炎のブレスから逃げることなど出来ないでしょうと、真面目な顔をして付け加える。
完全に面白がって脅しているのだが、言われた側は笑い事ではない。
「も、申し訳ありませんでした。け、決して戦争を望んでいる訳ではありません。無知ゆえの無礼な態度を、どうぞお許しください」
使者の男は首元から剣が離されると、土下座して謝罪を始めた。
領都ワートンに住んでいた従者も、光のドラゴンという言葉に恐怖し土下座していく。
新しい国で大臣という要職に就いた使者は、コルランドル王国の大臣とも対等に話し合いができると軽く思っていた。
だから甘く見られないようにと、初っ端から尊大な態度をとっていた。
だがその目論見は通用することなく、交渉は失敗してしまった。
外交の失敗が、王都殲滅という大惨事を引き起こしてしまうのだと、2人の頭に恐怖と共に摺り込まれていった。
「そうだわ、確かログドル王子はこの後、王立高学院に行く予定だったわよね。
人質にされていると名指しされた2人が、本当に牢に閉じ込められているのか、こちらの言い分が正しいのか、見せて差し上げなさい」
「承知しました王妃様。2人に会って、人質になっているかどうか直接尋ねさせましょう」
ログドル王子は心得ましたと会釈し、使者の2人を高学院に連れて行くことを了承する。
すっかり縮こまってしまった2人の男は、これでもかという程に何度も頭を下げながら部屋を出ていった。
その後ログドル王子に高学院に連れていかれた使者と従者は、思いもよらない話を2人から聞かされ、どうすればいいのだろうかと途方に暮れたという。
◇◇ アコルの契約妖精ロルフ ◇◇
『なんとも陰気臭い。なんじゃ此処は』
ワシはブツブツ文句を言いながら、元ヘイズ侯爵屋敷、今はラレスト王国の王宮となっている建物の地下に向かって移動している。
ワシの道案内をしてくれるのは、この屋敷の外にある樹齢450年の大樹を守っている、4色の美しい衣を着た女性の妖精じゃ。
なんでも大樹に魔力を注ぎ続け、衰弱死しそうになっていたところに、エクレア殿が現れ助けたらしく、今回ワシの手伝いを買って出てくれた。
昨日遅くにワートン領からここに連行されてきたらしいサナへ侯爵は、現在屋敷の地下牢に入れられているようじゃ。
がっくり項垂れているその男に、子供サイズの大きさで姿を現したワシは『サナへ侯爵か?』と問うた。
「貴方は確か覇王の……覇王様の契約妖精ロルフ殿でしたな」
顔を上げたサナへ侯爵は、生気のないしょぼくれた声で呟いた。
……相変わらずこの男は、主殿への敬いが足らんな。
手間暇かけて助けてやる価値もない奴じゃが、こやつの息子トゥーリスの契約妖精ローズと、トーブルの契約妖精セルビアから、『絶対に助けてくださいね』と頼まれては嫌とも言えん。
『主からの伝言じゃ。
鍵は開けてやるから、自力で王都まで戻ってこい。
あと3日で戻らなければ、サナへ侯爵はシーブルに寝返ったものと考える。以上だ』
「ハシム殿、戦争はよくありません。コルランドル王国の民が命を落とします。
覇王様と勇者様にお願いすれば、奴等が占拠している屋敷など、一瞬で消滅させてくださいます」
「確かにそうですなログドル王子。
覇王様は民を大切にされますし、勇者様はコルランドル王国の勇者だ。
もしも大事な民を傷付けたりしたら、光のドラゴンで飛び、悪人を殲滅なさるでしょう」
ログドル王子と私は、光のドラゴンの炎のブレスから逃げることなど出来ないでしょうと、真面目な顔をして付け加える。
完全に面白がって脅しているのだが、言われた側は笑い事ではない。
「も、申し訳ありませんでした。け、決して戦争を望んでいる訳ではありません。無知ゆえの無礼な態度を、どうぞお許しください」
使者の男は首元から剣が離されると、土下座して謝罪を始めた。
領都ワートンに住んでいた従者も、光のドラゴンという言葉に恐怖し土下座していく。
新しい国で大臣という要職に就いた使者は、コルランドル王国の大臣とも対等に話し合いができると軽く思っていた。
だから甘く見られないようにと、初っ端から尊大な態度をとっていた。
だがその目論見は通用することなく、交渉は失敗してしまった。
外交の失敗が、王都殲滅という大惨事を引き起こしてしまうのだと、2人の頭に恐怖と共に摺り込まれていった。
「そうだわ、確かログドル王子はこの後、王立高学院に行く予定だったわよね。
人質にされていると名指しされた2人が、本当に牢に閉じ込められているのか、こちらの言い分が正しいのか、見せて差し上げなさい」
「承知しました王妃様。2人に会って、人質になっているかどうか直接尋ねさせましょう」
ログドル王子は心得ましたと会釈し、使者の2人を高学院に連れて行くことを了承する。
すっかり縮こまってしまった2人の男は、これでもかという程に何度も頭を下げながら部屋を出ていった。
その後ログドル王子に高学院に連れていかれた使者と従者は、思いもよらない話を2人から聞かされ、どうすればいいのだろうかと途方に暮れたという。
◇◇ アコルの契約妖精ロルフ ◇◇
『なんとも陰気臭い。なんじゃ此処は』
ワシはブツブツ文句を言いながら、元ヘイズ侯爵屋敷、今はラレスト王国の王宮となっている建物の地下に向かって移動している。
ワシの道案内をしてくれるのは、この屋敷の外にある樹齢450年の大樹を守っている、4色の美しい衣を着た女性の妖精じゃ。
なんでも大樹に魔力を注ぎ続け、衰弱死しそうになっていたところに、エクレア殿が現れ助けたらしく、今回ワシの手伝いを買って出てくれた。
昨日遅くにワートン領からここに連行されてきたらしいサナへ侯爵は、現在屋敷の地下牢に入れられているようじゃ。
がっくり項垂れているその男に、子供サイズの大きさで姿を現したワシは『サナへ侯爵か?』と問うた。
「貴方は確か覇王の……覇王様の契約妖精ロルフ殿でしたな」
顔を上げたサナへ侯爵は、生気のないしょぼくれた声で呟いた。
……相変わらずこの男は、主殿への敬いが足らんな。
手間暇かけて助けてやる価値もない奴じゃが、こやつの息子トゥーリスの契約妖精ローズと、トーブルの契約妖精セルビアから、『絶対に助けてくださいね』と頼まれては嫌とも言えん。
『主からの伝言じゃ。
鍵は開けてやるから、自力で王都まで戻ってこい。
あと3日で戻らなければ、サナへ侯爵はシーブルに寝返ったものと考える。以上だ』
3
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる