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策略と混乱
275ー1 独立国への道(8)ー1
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セイロン山の中腹にある休憩所に到着したのは、ちょうど昼だった。
ここには湧水を貯えた水飲み場もあるし、冒険者の為に簡単な煮炊きができるカマドも設置してある。
付近に上級魔獣や変異種がいないか、ランドルが上空から安全確認してくれたので、俺は安心して食材をマジックバッグから取り出し、簡単な調理を開始する。
「ご自分で料理されるのですか?」
食材を切り始めた俺に、ジュールが驚いた顔で質問する。
「もちろん。俺は平民で冒険者だ。Aランク冒険者と一緒に活動していた3年間は俺が料理担当だったし、覇王軍が出動した時の料理も俺が担当してる」
覇王について様々な噂はあるが、危機管理指導講座では、王立高学院特別部隊の女子が炊き出し指導をしていたし、学生は基本的に学食を利用している。
学院で料理をしていたのは、マキアート教授の研究室の補助部屋で暮らしていた頃だから、研究室に出入りできる学生以外知らないと思う。
「王様でさえ跪かせる覇王様が、覇王軍の料理をされるなんて・・・」
ジュールは何処か懐疑的だ。
「きみがそう思うのは、料理は使用人が作るものだと考える環境で育った貴族だからだ。
俺は生まれて間もなく捨てられたが、善良な平民の養父母に育てられ、幸運だったと思っている。
親に酷い暴力で虐待されたこともないし、汚いことをやれと命令されたこともない。
地位や権力のためなら、子の人格など無視して利用するのが当然で、平民なんて虫けら同然に扱う。そんな腐った貴族が親だったら、俺はこの手で捻り潰す」
つい覇気が漏れたようで、まわりにいた鳥が一斉に飛び立っていく。
ジュールは少し苦しそうに顔を歪めたが、倒れ伏すことはなかったし、尻もちもつかなかった。
……やはりか。ジュールは腐った貴族に期待などしていない。
母親が平民のリーマス王子と同じだ。
生まれではなく、自分の能力をちゃんと評価して欲しいと願っているに違いない。
食べ始めるまでは緊張していたジュールだったが、美味しいパンとシチューを食べ終わると緊張も解れたようだ。
俺の指示に従い、文句も言わず午後からの検証実験に集中していく。
前回の調査で最も魔力量の多かった地点までゆっくりと登り、地面が見えるまで雪を掻き分ける。
祈るような気持ちで、魔術具をマジックバッグから取り出し地表に設置する。
「ジュール、もう少し深く土に差し込んでくれ」
「はい覇王様」
冬眠しているロックドラゴンの巣の直ぐ側で、俺とジュールは魔術具の実験を開始した。
尖がり帽子の先をグッと土に差し込み、カラの魔石を深皿の部分に置いてスイッチらしき部分を押す。
「あっ、魔石が、魔石が光り始めました!」
ジュールは大きく目を開け、興奮しながら叫ぶ。
ゴウンゴウンと低い音をたてる魔術具は、どうやら本当に地中の魔力を吸い上げ、カラの魔石に魔力を充填してくれるようだ。
固唾を吞んで見守っていると、カラの魔石は再び強く光り、魔力が揺らめきながら輝きを放つ。それと同時に魔術具は動きを止めた。
「やったぞジュール。成功だ!」
俺は両手でジュールの右手をとり、ギュッと握って何度も振る。
「はい覇王様! やりました!」
ジュールは残りの左手を俺の両手の上にのせ、嬉しそうに強く握って満面の笑顔で叫んだ。
……あっ、ロックドラゴンが起きだした。
寝ぼけていたロックドラゴンを瞬殺してマジックバッグに収納し、俺たちは他のカラ魔石を使って何度も実験を繰り返していく。
「どうやら充填される魔力は、魔獣の持っていた適性と同じになるようです」
ジュールは魔力が充填された魔石と資料を確認しながら、実験結果を検証していく。
ここには湧水を貯えた水飲み場もあるし、冒険者の為に簡単な煮炊きができるカマドも設置してある。
付近に上級魔獣や変異種がいないか、ランドルが上空から安全確認してくれたので、俺は安心して食材をマジックバッグから取り出し、簡単な調理を開始する。
「ご自分で料理されるのですか?」
食材を切り始めた俺に、ジュールが驚いた顔で質問する。
「もちろん。俺は平民で冒険者だ。Aランク冒険者と一緒に活動していた3年間は俺が料理担当だったし、覇王軍が出動した時の料理も俺が担当してる」
覇王について様々な噂はあるが、危機管理指導講座では、王立高学院特別部隊の女子が炊き出し指導をしていたし、学生は基本的に学食を利用している。
学院で料理をしていたのは、マキアート教授の研究室の補助部屋で暮らしていた頃だから、研究室に出入りできる学生以外知らないと思う。
「王様でさえ跪かせる覇王様が、覇王軍の料理をされるなんて・・・」
ジュールは何処か懐疑的だ。
「きみがそう思うのは、料理は使用人が作るものだと考える環境で育った貴族だからだ。
俺は生まれて間もなく捨てられたが、善良な平民の養父母に育てられ、幸運だったと思っている。
親に酷い暴力で虐待されたこともないし、汚いことをやれと命令されたこともない。
地位や権力のためなら、子の人格など無視して利用するのが当然で、平民なんて虫けら同然に扱う。そんな腐った貴族が親だったら、俺はこの手で捻り潰す」
つい覇気が漏れたようで、まわりにいた鳥が一斉に飛び立っていく。
ジュールは少し苦しそうに顔を歪めたが、倒れ伏すことはなかったし、尻もちもつかなかった。
……やはりか。ジュールは腐った貴族に期待などしていない。
母親が平民のリーマス王子と同じだ。
生まれではなく、自分の能力をちゃんと評価して欲しいと願っているに違いない。
食べ始めるまでは緊張していたジュールだったが、美味しいパンとシチューを食べ終わると緊張も解れたようだ。
俺の指示に従い、文句も言わず午後からの検証実験に集中していく。
前回の調査で最も魔力量の多かった地点までゆっくりと登り、地面が見えるまで雪を掻き分ける。
祈るような気持ちで、魔術具をマジックバッグから取り出し地表に設置する。
「ジュール、もう少し深く土に差し込んでくれ」
「はい覇王様」
冬眠しているロックドラゴンの巣の直ぐ側で、俺とジュールは魔術具の実験を開始した。
尖がり帽子の先をグッと土に差し込み、カラの魔石を深皿の部分に置いてスイッチらしき部分を押す。
「あっ、魔石が、魔石が光り始めました!」
ジュールは大きく目を開け、興奮しながら叫ぶ。
ゴウンゴウンと低い音をたてる魔術具は、どうやら本当に地中の魔力を吸い上げ、カラの魔石に魔力を充填してくれるようだ。
固唾を吞んで見守っていると、カラの魔石は再び強く光り、魔力が揺らめきながら輝きを放つ。それと同時に魔術具は動きを止めた。
「やったぞジュール。成功だ!」
俺は両手でジュールの右手をとり、ギュッと握って何度も振る。
「はい覇王様! やりました!」
ジュールは残りの左手を俺の両手の上にのせ、嬉しそうに強く握って満面の笑顔で叫んだ。
……あっ、ロックドラゴンが起きだした。
寝ぼけていたロックドラゴンを瞬殺してマジックバッグに収納し、俺たちは他のカラ魔石を使って何度も実験を繰り返していく。
「どうやら充填される魔力は、魔獣の持っていた適性と同じになるようです」
ジュールは魔力が充填された魔石と資料を確認しながら、実験結果を検証していく。
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