521 / 709
策略と混乱
274ー2 独立国への道(7)ー2
しおりを挟む
上の宝物庫も、この古代宝物庫の場所も、国の機密事項、いや、俺みたいな一般人が立ち入っていい場所じゃないだろう!?
「覇王様、早く魔術具を此処に置いてください」
カルタック教授がそう言うと、覇王は両手でやっと抱えられる大きさの魔石に関する魔術具をテーブルの上に置く。
そこからは妹の誘拐事件のことなど忘れて、目の前の魔術具に足らないと思われるパーツ探しに夢中になった。
宝物庫の中には、大小様々な部品らしき物が残されており、意中のパーツを誰が早く見つけるか競争になった。
今度こそとパーツを嵌め込むが、なかなか一致する物がない。
ふと手に取った底辺が丸い尖り帽子のようなパーツを見て、俺はハッと閃いた。
すると直ぐ側に、尖がり帽子の底に嵌めればちょうどいい嵌め込み口のある、円錐のパーツが目に入った。
俺は駆け出すと、2つを繋げて大きくなった尖がり帽子を、置いてあった魔術具の底にセットしてみる。
カチリと音がして、寸分違わずぴたりと嵌った様を見て、間違いないと俺は確信した。
「なるほど、そういうことか!」
いつの間にか隣に立っていた覇王が、嬉しそうに声を上げる。
「どうやらジュールくんの仮説が、信憑性を帯びてきたな」
カルタック教授もやって来て、嬉しそうに俺の肩を叩いた。
「俺の目に狂いはなかったな。よし、ジュール、きみを今この時から正式な【覇王探求部会員】とする。
よろしいですよねカルタック教授?」
謎が解けたことを喜ぶ研究者と同じキラキラした瞳で、覇王はカルタック教授に問う。
「もちろんです覇王様。
ジュールくんの仮説が立証されれば、多くのカラ魔石に魔力を充填できます。
これは間違いなく叙爵ものの発見ですから」
良かったなジュールくんと、カルタック教授は俺の手を取り、心から嬉しそうにギュッと握った。
「いえ、まだ起動できるのかさえ分かりません。そのお話は、本当にカラ魔石に魔力が充填されてからにしてください」
俺はすっかり混乱していた。
飛び上がりたい程に嬉しい感情と、そんなことが叶うはずがないという諦めの感情と、騙されてはならないと戒める感情が入り混じり、どんな表情をしたらいいのか分からない。
きっと今、困った顔をしているに違いない。
俺が見つけたパーツを取り付けた魔術具をマジックに収納し、覇王は今から仮説が正しいかどうかを確認しに行くと言い出した。
しかも光のドラゴンを、既に学院に呼んであるから、一緒に行くぞと俺に命令する。
その前に、王都を離れる報告をしに宰相の執務室に行くことになり、俺とカルタック教授も同行する羽目になった。
……なんで一介の高学院事務職員が、宰相に会わなきゃいけないいんだ?
……そうか、俺を利用し魔術具の謎を解明したから、今度こそ捕えて妹の居場所を吐かせるつもりだな。
最悪なことに、宰相の執務室に行く途中、王宮勤務を辞めてヘイズ領やワートン領に戻る仲間たち……というかシーブル陛下に従う予定の貴族たちに出会ってしまった。
覇王や国王を失脚させる側の俺が、何故覇王と一緒に王宮内を歩いているんだろうと、仲間たちは不思議に思ったことだろう。
しかも上機嫌な覇王は足取りも軽く、何故か遠回りして執務棟全てのフロアを通って三階へと進んでいく。
「そういえば、魔獣と戦うため辞職する者が十数人いると聞いた。恐らく引継ぎやら何やらで忙しいのだろう」
宰相の執務室に到着する寸前、覇王はそう言って俺の顔を見た。
……まさか、この笑みは全てを知っているぞという意味では?
……いや、そんなはずはない。計画は完璧で漏れることなど有り得ない。
結局、俺の深読みは杞憂に終わり、重要な魔術具が起動できるかもしれないから、今からセイロン山に行くと宰相に報告しただけだった。
カルタック教授は、これまでの研究成果を報告するからと、宰相の執務室に残った。
そして今、信じられないけど俺は光のドラゴンに乗っている。
……妹はどうするんだ? 本当の妹じゃないから見捨てるのか?
「覇王様、早く魔術具を此処に置いてください」
カルタック教授がそう言うと、覇王は両手でやっと抱えられる大きさの魔石に関する魔術具をテーブルの上に置く。
そこからは妹の誘拐事件のことなど忘れて、目の前の魔術具に足らないと思われるパーツ探しに夢中になった。
宝物庫の中には、大小様々な部品らしき物が残されており、意中のパーツを誰が早く見つけるか競争になった。
今度こそとパーツを嵌め込むが、なかなか一致する物がない。
ふと手に取った底辺が丸い尖り帽子のようなパーツを見て、俺はハッと閃いた。
すると直ぐ側に、尖がり帽子の底に嵌めればちょうどいい嵌め込み口のある、円錐のパーツが目に入った。
俺は駆け出すと、2つを繋げて大きくなった尖がり帽子を、置いてあった魔術具の底にセットしてみる。
カチリと音がして、寸分違わずぴたりと嵌った様を見て、間違いないと俺は確信した。
「なるほど、そういうことか!」
いつの間にか隣に立っていた覇王が、嬉しそうに声を上げる。
「どうやらジュールくんの仮説が、信憑性を帯びてきたな」
カルタック教授もやって来て、嬉しそうに俺の肩を叩いた。
「俺の目に狂いはなかったな。よし、ジュール、きみを今この時から正式な【覇王探求部会員】とする。
よろしいですよねカルタック教授?」
謎が解けたことを喜ぶ研究者と同じキラキラした瞳で、覇王はカルタック教授に問う。
「もちろんです覇王様。
ジュールくんの仮説が立証されれば、多くのカラ魔石に魔力を充填できます。
これは間違いなく叙爵ものの発見ですから」
良かったなジュールくんと、カルタック教授は俺の手を取り、心から嬉しそうにギュッと握った。
「いえ、まだ起動できるのかさえ分かりません。そのお話は、本当にカラ魔石に魔力が充填されてからにしてください」
俺はすっかり混乱していた。
飛び上がりたい程に嬉しい感情と、そんなことが叶うはずがないという諦めの感情と、騙されてはならないと戒める感情が入り混じり、どんな表情をしたらいいのか分からない。
きっと今、困った顔をしているに違いない。
俺が見つけたパーツを取り付けた魔術具をマジックに収納し、覇王は今から仮説が正しいかどうかを確認しに行くと言い出した。
しかも光のドラゴンを、既に学院に呼んであるから、一緒に行くぞと俺に命令する。
その前に、王都を離れる報告をしに宰相の執務室に行くことになり、俺とカルタック教授も同行する羽目になった。
……なんで一介の高学院事務職員が、宰相に会わなきゃいけないいんだ?
……そうか、俺を利用し魔術具の謎を解明したから、今度こそ捕えて妹の居場所を吐かせるつもりだな。
最悪なことに、宰相の執務室に行く途中、王宮勤務を辞めてヘイズ領やワートン領に戻る仲間たち……というかシーブル陛下に従う予定の貴族たちに出会ってしまった。
覇王や国王を失脚させる側の俺が、何故覇王と一緒に王宮内を歩いているんだろうと、仲間たちは不思議に思ったことだろう。
しかも上機嫌な覇王は足取りも軽く、何故か遠回りして執務棟全てのフロアを通って三階へと進んでいく。
「そういえば、魔獣と戦うため辞職する者が十数人いると聞いた。恐らく引継ぎやら何やらで忙しいのだろう」
宰相の執務室に到着する寸前、覇王はそう言って俺の顔を見た。
……まさか、この笑みは全てを知っているぞという意味では?
……いや、そんなはずはない。計画は完璧で漏れることなど有り得ない。
結局、俺の深読みは杞憂に終わり、重要な魔術具が起動できるかもしれないから、今からセイロン山に行くと宰相に報告しただけだった。
カルタック教授は、これまでの研究成果を報告するからと、宰相の執務室に残った。
そして今、信じられないけど俺は光のドラゴンに乗っている。
……妹はどうするんだ? 本当の妹じゃないから見捨てるのか?
3
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる