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策略と混乱
271ー2 独立国への道(4)ー2
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◇◇ メイリ ◇◇
室内を見回すと、ベッド以外の家具はなく、ほんの少し、縦5センチ、横30センチくらいの大きさの窓……というか換気口が壁の上部にある。
木枠で塞がれてるけど、朽ちて隙間が空いてるから、外の光が入ってくる。
……え~っ、隙間風が入るじゃん! フウッ、夜は寒そうだなぁ。ここ、絶対に部屋じゃなくて倉庫だよね。
室内は無駄に広くて10畳くらいあるかな。
天井はちょっと低くて……あら、トイレがないわ? 信じられない!
でも、トイレに行くため、この部屋を出るチャンスがあるってことだわ。
ここに来てから、そろそろ2時間くらい経った気がする。
枕と本はまだかな?
退屈だから、枕と本はまだかしら~って、歌いながら訴える作戦でも実行しよう。
3分くらい歌っていたら、ドアの外で見張りをしている男が、「うるさい!」って怒鳴ってドアを蹴った。なんて乱暴なのかしら。
仕方ない、他の作戦を考えるわ。
「遅かったな、いったい何をしていた?」
「すみません。夕食のパンの買い出しと、枕と本を用意していました」
あら、どうやら夕食のようだわ。
それにしてもドアの外の会話がよく聞こえるわ。地下って声も音も響くのね。
「フン、子供に泣かれるのも面倒だから早く渡せ! それから朝まで地下に交代はこない。
お前は隣の部屋で休め。外に声が漏れることは無いだろうが、大声を出したり泣き喚くようなら、殴っても構わないと指示を受けている」
威張り散らす男の声が、一段と不機嫌になっていく。
見張りは何人かいるのね。
さっきドアを蹴った男は、新しく来た男の上司ってところかな。
いたいけな少女を殴っても構わないなんて、ろくでなし認定でいいわね。絶対に顔を覚えてやるわ。
「はい分かりました。ところで、中にいる子供は何処の娘なんですか?」
「くだらないことを聞くな! お前は言われたことだけやっていればいいんだ!」
ろくでなし男は大声で怒鳴って、私のいる部屋の鍵をガチャガチャさせる。
ギーッて音をたててドアが開くと、薄暗くなった部屋に、ランプを持った男が入ってきた。
「夕食のパンと枕と本を持ってきたぞ」って、入ってきた男は優しく声を掛けてきた。
「ありがとう。ベッドの上に置いてください。それと、あの、おトイレに行きたいんだけど」
私は恥ずかしそうにもじもじしながら、トイレに行きたいと訴えてみる。
「ああ、この先にあるから連れていってやろう。ただし、騒いだり逃げようとしたらダメだぞ。上に居る怖い人に殴られるからな」
「うん、分かった」と応えて、地下にあるらしいトイレへと大人しく向かう。
トイレに向かう道中確認したら、私の部屋と同じような頑丈で大きなドアの部屋が階段の直ぐ下に一つ。
そして隣の部屋は普通のドアだから、ろくでなし男が言っていた見張りが休む部屋なんだろう。
廊下には、見張り用の椅子が置いてある。
トイレから戻ったら、ランプがないと暗くて怖いから、絶対に泣くと訴えて古いランプを用意してもらった。
ついでに、寒くて死にそうだと涙目で訴えたら、見張りの人が自分の上着を貸してくれた。
……よし、この人のことは親切な人って呼ぼう。
……さてさて、親切な人には泣き脅・・・いえ、お涙頂戴作戦がいいわね。
「お母さん、お父さんが死んでから、たくさん苦労させたね。
これから親孝行しようと思っていたのに、ごめんなさい。
お兄ちゃん、私を学校に通わせるため、中級学校を断念し、9歳で出稼ぎに出てくれてありがとう。仕送りしてくれてありがとう。
命懸けで魔獣と戦っているお兄ちゃんは、わ、私たち姉弟の自慢だよ。
たくさんの人を助ける覇王軍の仕事が忙しくて、なかなか会えないけど、お、お兄ちゃん、あんまり無理をしないでね。グスン。
頑張って学校に行かせてくれたのに、ごめんね。ほ、本当にごめんなさい」
あれ、本当に泣いちゃダメなのに、なんでか、どんどん涙が出ちゃう。
室内を見回すと、ベッド以外の家具はなく、ほんの少し、縦5センチ、横30センチくらいの大きさの窓……というか換気口が壁の上部にある。
木枠で塞がれてるけど、朽ちて隙間が空いてるから、外の光が入ってくる。
……え~っ、隙間風が入るじゃん! フウッ、夜は寒そうだなぁ。ここ、絶対に部屋じゃなくて倉庫だよね。
室内は無駄に広くて10畳くらいあるかな。
天井はちょっと低くて……あら、トイレがないわ? 信じられない!
でも、トイレに行くため、この部屋を出るチャンスがあるってことだわ。
ここに来てから、そろそろ2時間くらい経った気がする。
枕と本はまだかな?
退屈だから、枕と本はまだかしら~って、歌いながら訴える作戦でも実行しよう。
3分くらい歌っていたら、ドアの外で見張りをしている男が、「うるさい!」って怒鳴ってドアを蹴った。なんて乱暴なのかしら。
仕方ない、他の作戦を考えるわ。
「遅かったな、いったい何をしていた?」
「すみません。夕食のパンの買い出しと、枕と本を用意していました」
あら、どうやら夕食のようだわ。
それにしてもドアの外の会話がよく聞こえるわ。地下って声も音も響くのね。
「フン、子供に泣かれるのも面倒だから早く渡せ! それから朝まで地下に交代はこない。
お前は隣の部屋で休め。外に声が漏れることは無いだろうが、大声を出したり泣き喚くようなら、殴っても構わないと指示を受けている」
威張り散らす男の声が、一段と不機嫌になっていく。
見張りは何人かいるのね。
さっきドアを蹴った男は、新しく来た男の上司ってところかな。
いたいけな少女を殴っても構わないなんて、ろくでなし認定でいいわね。絶対に顔を覚えてやるわ。
「はい分かりました。ところで、中にいる子供は何処の娘なんですか?」
「くだらないことを聞くな! お前は言われたことだけやっていればいいんだ!」
ろくでなし男は大声で怒鳴って、私のいる部屋の鍵をガチャガチャさせる。
ギーッて音をたててドアが開くと、薄暗くなった部屋に、ランプを持った男が入ってきた。
「夕食のパンと枕と本を持ってきたぞ」って、入ってきた男は優しく声を掛けてきた。
「ありがとう。ベッドの上に置いてください。それと、あの、おトイレに行きたいんだけど」
私は恥ずかしそうにもじもじしながら、トイレに行きたいと訴えてみる。
「ああ、この先にあるから連れていってやろう。ただし、騒いだり逃げようとしたらダメだぞ。上に居る怖い人に殴られるからな」
「うん、分かった」と応えて、地下にあるらしいトイレへと大人しく向かう。
トイレに向かう道中確認したら、私の部屋と同じような頑丈で大きなドアの部屋が階段の直ぐ下に一つ。
そして隣の部屋は普通のドアだから、ろくでなし男が言っていた見張りが休む部屋なんだろう。
廊下には、見張り用の椅子が置いてある。
トイレから戻ったら、ランプがないと暗くて怖いから、絶対に泣くと訴えて古いランプを用意してもらった。
ついでに、寒くて死にそうだと涙目で訴えたら、見張りの人が自分の上着を貸してくれた。
……よし、この人のことは親切な人って呼ぼう。
……さてさて、親切な人には泣き脅・・・いえ、お涙頂戴作戦がいいわね。
「お母さん、お父さんが死んでから、たくさん苦労させたね。
これから親孝行しようと思っていたのに、ごめんなさい。
お兄ちゃん、私を学校に通わせるため、中級学校を断念し、9歳で出稼ぎに出てくれてありがとう。仕送りしてくれてありがとう。
命懸けで魔獣と戦っているお兄ちゃんは、わ、私たち姉弟の自慢だよ。
たくさんの人を助ける覇王軍の仕事が忙しくて、なかなか会えないけど、お、お兄ちゃん、あんまり無理をしないでね。グスン。
頑張って学校に行かせてくれたのに、ごめんね。ほ、本当にごめんなさい」
あれ、本当に泣いちゃダメなのに、なんでか、どんどん涙が出ちゃう。
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