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覇王、時々商人
249ー2 ワートン領の貴族たち(6)ー2
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よく見ると、貴族部の教授が2人いた。
ぶたれた学生を心配するどころか、嘲笑っているように見える。
……なるほど、元凶はアイツらか。
「あれはカイヤさんだな。全力疾走で走ってくるのはボンテンクと、う~ん、レイトル王子だろうか? その後ろを走っているのはマギ公爵たちだな」
俺はランドルに直ぐ降りるように指示を出そうとして思い止まった。
今降りていけば言い逃れはできないが、間違った矜持を振りかざすような奴等は、我が身可愛さにカイヤさんの口封じをするかもしれない。
しかし、俺の考えは甘かった。
俺の存在など関係なく、奴等は無抵抗なカイヤさんに、国法で禁じられている人への魔法攻撃を加えてしまった。
完全なる悪意を持って。
ボンテンクが水魔法で炎を消し、レイトル王子は犯人に躊躇なく剣を突き刺した。
「アコル様、ボンテンクはポーションを使うようです」
ランドルが着陸体勢に入った時、ボンテンクは持たせてあったハイポーションの瓶を取り出した。
服が燃え始めて直ぐに水魔法を使ったので、【慈悲の雫】で回復できるだろう。
それからボンテンクは、妹のカイヤさんを害した者たちに天誅を下していた。
おまけに威圧を放ったようで、数人が苦しそうにしゃがみ込んでいる。
ギャーギャーとわめき立てていた貴族たちも、ランドルが着地する時に起こした突風に驚き、身を屈めながら俺たちを見る。
初めてランドルを見た者は恐怖し、高学院の2人の教授は目を合わせず背を向けようとする。
「これは覇王様」と言って、マギ公爵、ログドル第二王子、レイトル第四王子、それぞれの従者が俺の前で跪いた。
だがワートン領の貴族たちは、覇王である俺に跪こうとはしない。
むしろ、マギ公爵が跪く姿を見て驚いている。
「覇王アコルだ」と名乗るのと同時に、俺はワートン領の貴族たちと2人の教授に向け少し強めの【覇気】を放った。
全員バタンと派手に倒れ、半分は意識を失い、半分は顔面蒼白で息をするのがやっとだ。
「エクレア、レーズンくん、アイツらを逃さないよう土壁に閉じ込めろ!」
『了解アコル』
『了解ですアコル様』
土魔法が得意なマサルーノ先輩の契約妖精レーズンくんも、土魔法が得意だ。エクレアに至っては全ての適性を持ち容赦なく悪人を懲らしめる。
2人の妖精は、ちょっとやそっとの魔法では崩せない、強固なかまくらを出現させ瞬時に悪人たちを閉じ込めた。
「エクレア、空気穴だけは開けておいてやれ。カイヤさんは大丈夫かボンテンク?」
寝かされているカイヤさんの横で膝をつき、俺はケガの様子を診ながら問う。
「はいアコル様。火傷の痕は残らず完治しましたが、ショックが大きかったようで意識を失ったままです」
憎むべき敵の姿が目の前から消えたので、ボンテンクの怒りの表情は幾分か柔らかくなっている。
だが、結婚を申し込んでいるらしいレイトル第四王子と、兄のログドル王子は、王族としてワートン領の貴族の蛮行が許せないと、怒りを抑えようとはしない。
法務大臣であるマギ公爵に、死刑を適応できるか……とか、最も重い刑罰を科すとしたら何になるかと訊いている。
当然のようにマギ公爵も怒っているが、マギ公爵が怒っているのは、ワートン領の貴族に対してだけではなく、この場で救済活動の指揮を執っているはずの、宰相サナへ侯爵と他の大臣たちに対してだった。
ぶたれた学生を心配するどころか、嘲笑っているように見える。
……なるほど、元凶はアイツらか。
「あれはカイヤさんだな。全力疾走で走ってくるのはボンテンクと、う~ん、レイトル王子だろうか? その後ろを走っているのはマギ公爵たちだな」
俺はランドルに直ぐ降りるように指示を出そうとして思い止まった。
今降りていけば言い逃れはできないが、間違った矜持を振りかざすような奴等は、我が身可愛さにカイヤさんの口封じをするかもしれない。
しかし、俺の考えは甘かった。
俺の存在など関係なく、奴等は無抵抗なカイヤさんに、国法で禁じられている人への魔法攻撃を加えてしまった。
完全なる悪意を持って。
ボンテンクが水魔法で炎を消し、レイトル王子は犯人に躊躇なく剣を突き刺した。
「アコル様、ボンテンクはポーションを使うようです」
ランドルが着陸体勢に入った時、ボンテンクは持たせてあったハイポーションの瓶を取り出した。
服が燃え始めて直ぐに水魔法を使ったので、【慈悲の雫】で回復できるだろう。
それからボンテンクは、妹のカイヤさんを害した者たちに天誅を下していた。
おまけに威圧を放ったようで、数人が苦しそうにしゃがみ込んでいる。
ギャーギャーとわめき立てていた貴族たちも、ランドルが着地する時に起こした突風に驚き、身を屈めながら俺たちを見る。
初めてランドルを見た者は恐怖し、高学院の2人の教授は目を合わせず背を向けようとする。
「これは覇王様」と言って、マギ公爵、ログドル第二王子、レイトル第四王子、それぞれの従者が俺の前で跪いた。
だがワートン領の貴族たちは、覇王である俺に跪こうとはしない。
むしろ、マギ公爵が跪く姿を見て驚いている。
「覇王アコルだ」と名乗るのと同時に、俺はワートン領の貴族たちと2人の教授に向け少し強めの【覇気】を放った。
全員バタンと派手に倒れ、半分は意識を失い、半分は顔面蒼白で息をするのがやっとだ。
「エクレア、レーズンくん、アイツらを逃さないよう土壁に閉じ込めろ!」
『了解アコル』
『了解ですアコル様』
土魔法が得意なマサルーノ先輩の契約妖精レーズンくんも、土魔法が得意だ。エクレアに至っては全ての適性を持ち容赦なく悪人を懲らしめる。
2人の妖精は、ちょっとやそっとの魔法では崩せない、強固なかまくらを出現させ瞬時に悪人たちを閉じ込めた。
「エクレア、空気穴だけは開けておいてやれ。カイヤさんは大丈夫かボンテンク?」
寝かされているカイヤさんの横で膝をつき、俺はケガの様子を診ながら問う。
「はいアコル様。火傷の痕は残らず完治しましたが、ショックが大きかったようで意識を失ったままです」
憎むべき敵の姿が目の前から消えたので、ボンテンクの怒りの表情は幾分か柔らかくなっている。
だが、結婚を申し込んでいるらしいレイトル第四王子と、兄のログドル王子は、王族としてワートン領の貴族の蛮行が許せないと、怒りを抑えようとはしない。
法務大臣であるマギ公爵に、死刑を適応できるか……とか、最も重い刑罰を科すとしたら何になるかと訊いている。
当然のようにマギ公爵も怒っているが、マギ公爵が怒っているのは、ワートン領の貴族に対してだけではなく、この場で救済活動の指揮を執っているはずの、宰相サナへ侯爵と他の大臣たちに対してだった。
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