キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん

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覇王、時々商人

246ー2 ワートン領の貴族たち(3)ー2

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 春から今日まで行ってきた努力が、全て無駄になった。
 役人の意識改革や古い制度改革、サーシム領にしかない貴族の特別待遇の廃止を含め、がむしゃらに頑張ってきた時間を思うと、悔しくて堪らない。

 領主一族の予算を見直し、サーシム高学院の魔術師資格取得に予算を振り分けた。
 でも、領主夫人や息女たちの贅沢な生活は改善されず、夫人の親族は、王子であり次期領主であるはずの私よりも態度が大きかった。

 ……それでも、それでも私は歯を食いしばって改革を叫んできた。

 従妹のシャルミンが王立高学院の貴族部を留年したと聞いた時は、驚きを通り越して我が耳を疑った。
 まるで、昨年までの元王妃、元第一王子マロウのようではないか。

 領主を破滅に追い込み、自らも結局破滅する。
 地位や権力に固執し、己の責務を考えず領民を救おうともしなかった。
 そもそも奴等は、覇王様に敬意を払わなかった。



 マギ領を過ぎてワートン領に入った所で、領都ワートンがドラゴンと魔獣の大群に襲われ壊滅したと知った。
 ワートン公爵や高位貴族の多くが行方不明で、今朝早くに王立高学院特別部隊がこの町を通り過ぎたらしい。

 確かワートン公爵は、覇王軍に出動料金を払っていなかったはずだが、誰が出動を要請したのだろう?
 王様や大臣たちは、今頃コーチャー山脈に居るはずだから、兄のトーマス王子だろうか?

 ん? 待てよ、魔獣はコーチャー山脈から溢れ出たと言っていた。
 王様やログドル兄上はご無事なのだろうか?
 壊滅状態の領都で活動するなんて、王立高学院特別部隊は大丈夫なのだろうか?

 ……もしかして私の想い人も、カイヤさんも参加しているのだろうか?

 ワートン公爵は、国防大臣としての仕事を放棄していると、ログドル兄上が憤っていた。
 そもそも、国王暗殺をシーブル叔父上と画策し、自分の娘を王妃にしようと企むような人間だ。全く信用できない。

 おかしな話だが、覇王様に従う王族や大臣たちは、国王を殺そうと画策したのが誰なのかを知っている。
 だが、シーブル叔父上とワートン公爵は、事実を知られていると気付いていない。

 シーブル叔父上の息子であるトーブル君が、自分の知っている悪事を全て覇王様と国王に告白し、王宮に住む妖精も色々なことを暴露している。
 どの道ワートン公爵家の末路は見えていたが、今回は神が鉄槌を下されたようだ。

 生まれた時から王族や貴族の汚い面を嫌というほど見てきた私には、ワートン領の貴族の混乱する様子が目に浮かぶ。
 あそこも古い体質のままだから、貴族が絶対的だと思い上がっているはずだ。

 覇王軍が出動していないとしたら、王立高学院特別部隊の救済活動を理解していないバカな貴族が、横暴な発言や救済を強要するのではないかと心配だ。
 もしもカイヤさんが参加していたら、貴族相手だろうが正しいことをきっぱりと言うだろう。

 でも、ワートン領の貴族は特にたちが悪い。
 無能な人間ほどプライドが高く、負けた腹いせに闇討ちを仕掛けたり、学院の休みの日を狙って、金で雇った者に気に入らない学生を襲わせたりしていた。

 まあ全て、元王子マロウの取り巻きだった奴等の仕業だったけど、アイツらの性格や凶悪さが変わっているとは思えない。
 女子学生にも、平気で暴力を振るったり、辱める行為をしていたという噂もあった。

 ……カイヤさん、どうか何事もなく無事でいてください。
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