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高学院二年目

228ー1 それぞれの目指す道(2)ー1

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 冒険者ギルド代表者の脅しに、国王側の半数が不快な顔をした。
 冒険者ギルドのサブギルマス如きが、王様に喧嘩を売ったことが許せないのか、これまで領主や高官以外が意見する機会など与えられていなかったからなのか・・・

 ……どちらにしても笑える。

 この会議室には、テーブルを囲み着席している発言権の有る大臣たち以外にも、部下である副大臣たちがいる。
 大臣を補佐する為なのか、そういう決まりなのか分からないが、壁際の椅子に座って控えている。

 王族であるが故に、無礼だと許せない顔をしたのはレイム公爵だ。
 不快感を隠さないのが、サナへ侯爵と、大臣の後ろに控えている者たちである。

 覇王である俺が連れてきた選りすぐりのメンバーに対し、無礼なのはどちらなんだろうか。
 不快な顔をした者は、この場で一番身分が高い人物を、まだ国王だと思っているし、うちのメンバーより自分たちの方が地位が高いと思っている。

 ……確かに王から与えられた貴族としての役職は上なのだろうが、力とか地位まで高いと思っているなら、それは覇王を見下していることになる。

 俺は覇王として、貴族の身分や権力が欲しいと思ったことなどない。
 自分に与えられた使命を果たすため、覇王という役を精一杯演じている。

 覇王の仮面を付ければ覇王らしく、大商人を目指すアコル・ドバインの素顔は消す。
 覇王のキャラでいる時は、己の運命を受け入れ、遺言に従い最大限の努力をしているのだ。


「私が容認しているとは、どういう意味だろうか?」

平静を装った国王が、サブギルマスであるダルトンさんに問う。

「税に関することが、国王の許可なしに行えるとは思えません。
 思えないのに堂々と公言し実行されたのです。誰でも容認されたのだと思うのではないですか?

 それとも、税に関する権限を持つ財務部が目溢しをしている……又は、職務怠慢で調査していない……又は、国王の許可など必要ないと、デミル公爵が勝手に思っているということでしょうか?」

一世一代の大舞台で、これぞ冒険者の代表という顔をして、ダルトンさんはきっぱりと見えを切った。

「何だと! 我々が職務怠慢だというのか!」と大声で怒鳴ったのは財務副大臣だ。

「それでは、何なのです?」と、俺は発言権の無い副大臣ではなく、大臣であるレイム公爵を軽く睨みながら冷たく問う。

 睨んだのが不味かったのか、軽く覇気が漏れてしまい、レイム公爵と隣にいた国王が胸に手を当て顔を歪める。

「ぶ、部下が失礼しました。財務部では、そ、その情報は掴めていませんでした」

レイム公爵は苦しそうに顔を歪めて謝罪する。
 どうやら俺が、覇王であることを思い出してくれたようだ。

「も、申し訳ありません覇王様、私は決して……決してそのようなことを容認しておりません。至急デミル公爵を呼び戻し、真偽を確認します」

ちょっと顔色を悪くした国王が、容認はしていないと謝罪しながら断言した。
 上司であるレイム公爵と国王が謝罪したことがショックだったのか、財務副大臣は椅子から滑り落ちて尻もちをついている。

 ……ああ、俺の覇気の影響かぁ。

 エイトとボンテンクが滅茶苦茶怖い顔で副大臣たちを睨んでいるけど、おいおい、人相が悪いぞ二人とも・・・


「確認して不正が事実だとしたら、王様はデミル公爵をどう処罰されるのでしょうか?
 その返答によっては、デミル領の冒険者ギルドは閉鎖され、冒険者は他領に移動することになります」

半分演技、半分は本気で怒っているダルトンさんが、最後の仕上げとばかりに追い込んでいく。
 俺は薄っすらと微笑んで、どうするの?って視線を、トーマス王子と学院長に向ける。

 ……さあ、お手並み拝見の時間だ。

「もちろん処分します。
 昨年末には国費を使って軍の大群を勝手に動かし、あろうことか自領の民を意図的に見殺しにした。

 また、追放した元第一王子マロウを匿い、子息は王都の教会を崩壊させた。
 そして今回は国法を犯し、冒険者ギルドと冒険者を苦しめようとした。

 王様は、慈悲を持って改心することを望んでおられたが、反省さえせず、自領の民を迫害した。
 今回こそ爵位剥奪のうえ領主を罷免されるだろう。そうですよね王様?」

勝負に出たのはトーマス王子ではなく学院長だった。
 処罰ではなく処分と言い切り、弱腰の国王に決断を促して迫っていく。

「王様、デミル公爵の処罰は、この私にお命じください。私が王の剣となり、罪人を排除いたします」

少し遅れてトーマス王子が、椅子から立ち上がって力強く断言し、王命をと願い出た。

「こちらは国務大臣として調査した、デミル公爵家が犯した罪の一覧です。
 残念ながら子息も息女も、全員が大なり小なりの犯罪行為を犯しています。

 世代交代くらいでは、デミル領の浄化は不可能だと思われます。
 ですので、デミル公爵だけを呼び寄せるのではなく、トーマス王子はハシム殿と共に一般軍を率いて、デミル領で一族全てを罪人として捕える方がいいでしょう」

カバンの中から調査書類の束を取り出し、テーブルの上に置いたワイコリーム公爵は、挑むような視線をトーマス王子に向け後押しした。

「デミル領の行いには目に余るものがあり、マリード領も多大な迷惑を受けていました。
 一般軍の大臣としても、国務大臣の提案をお受けしたいと思います」

王やレイム公爵に何も言わせないよう、ハシム殿も決定事項のように大きく頷いて見せる。

 何が起こったのか分からないという顔をしているのは、宰相のサナへ侯爵だ。
 茫然と目を見開いているのは、レイム公爵とマギ公爵。
 最も困惑している様子の国王は、学院長とトーマス王子にじっと視線を向け何かを思考している。
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