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高学院二年目
227ー1 それぞれの目指す道(1)ー1
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先日俺は、この国の為に領主になれるかと学院長に訊いた。
後任の学院長として、側室であり現貴族部部長教授のフィナンシェ様に、既に了承を得ていることも伝えた。
学院長は、今日その答えを出し、領主になると自分の覚悟を決めたのだ。
「覇王様と叔父上は、そんなことまで考えておられたのですか?」
ショックを受けたような表情で、トーマス王子が問う。
「デミル公爵を罷免するに足る数々の情報や証拠は、既に集めてありますよ。
残念ながら子息も皆クズばかりで、税金の着服、領民に対する違法な要求、暴力、代金の踏み倒し、国の補助金を愛人につぎ込んだりと酷いものです」
ワイコリーム公爵は、呆れ顔で首を振りながら、領民が暴動を起こす一歩手前だと調査結果を暴露した。
「ああ、デミル領の冒険者ギルドの報告では、新しく領主税とかいうものを、全ての素材の売買に15パーセント追加課税すると、デミル公爵から通達されたらしいぞ」
「領主税? ですかダルトンさん。でも既に、売り上げの1割は領主に納めていますよね?」
俺は首を捻りながら、こんなご時世に冒険者に対し、そんな馬鹿なことを考える領主が居たことに呆れる。
「なんでも、魔獣が増えたから素材をタダで融通しろと命令され、断ったら通達が来たらしい。
フン、これまでも側室とか愛人のために、毛皮や魔石をタダ同然で奪われていたそうだ。
激怒したギルマスが、他領の領主は冒険者ギルドに補助金を出しているというのに、ふざけるなと叫んだら、領主の私兵に拘束されたと、サブギルマスから今日知らせが届いた」
静かに怒っているダルトンさんの体から、ちょっと魔力が漏れ出し空気が重くなる。
全員開いた口が塞がらず、ここまで好き勝手できることが信じられない。
……どうやらデミル公爵は、魔獣避けの壁さえ造れば、自領は安全だと本気で考えているようだ。
「国王に、冒険者特例を出して頂きましょう。
デミル・ワートン・ヘイズ領は、覇王軍が出動も常駐もしないので、民のため国が冒険者を守るべきです。
この3つの領内に限り、魔獣の氾濫が納まるまで、冒険者もギルドも無税としましょう」
俺はダルトンさんの顔を見てニヤリと笑う。
「おう、それなら王都の冒険者も地方に移動するかもしれないな。
同じ魔獣を仕留めても取り分が多いなら、稼ぎだって増えるし、ギルドだって無税なら他領に素材を売る余裕ができる。
覇王様、3つのギルドにマジックバッグの販売かレンタルをお願いします」
「了解ですダルトンさん。ただし、全ては国王との話し合い次第です」
これで国王との連携の第一歩となる、テーマが決まった。
デミル公爵をどうにかするのは俺の仕事ではなく、国王と臣下の仕事だ。
「覇王様、王様との話し合いの際に、古代魔術具の使用許可と、新たな魔術具作成の話をお願いします」
マキアート教授は、起動可能になった古代魔術具の使用許可申請と、新しい魔術具作成のための補助金申請の書類を取り出し、俺に差し出してきた。
「マキアート教授、それは学院長にお願いしよう。
いや、折角だから、このメンバー全員で城へ行くことにしよう。
俺だけが行くと、この会議で決まったことも、俺の要望だと勘違いされる可能性がある」
「そうですね。連携するならメンバー全員の出席が望ましいと私も思います。
多くの意見を聞くことにより、何が必要で何をすべきなのか、王様やレイム公爵の判断が容易になるでしょう」
やる気になった学院長は、これから迅速に魔獣に対応するためには、如何に早く領主や役人を動かすかが大事で、一丸となって対応しなければ、多くの民を救うことはできないと意見した。
……覚悟を決めた学院長は、既に領主としての思考で物事を考えている。
……フムフム、入試制度を300年振りに改革した学院長は、思っていた通りヤル時はやるタイプだったな。
「まあ領主や役人は、俺に仕えている訳ではない。
俺があれこれ指示を出しても従うとは思えない。
国王が動くことで、己の爵位が大事な貴族たちは動かざるを得ないだろう。
国王に王たる強権を発動させるには、臣下の確たる要望と後押しが必要だ」
覇王と国王の立場の違いを示しながら、王を動かすのは俺ではなくお前たちだと言っておく。
臣下の意見など聞かず、独断で判断を下す王は独裁政治を行う。
その判断が正しければ、臣下は頼もしく思いながらただ従えばいい。
ただし、その判断が間違っていれば、横暴な暴君だと言われることになる。
今の王は、皆の意見を聞こうとするが決断ができない。
それは何故か?
それは、側近たる臣下が誰も自分の手を汚そうとはせず、責任を取ろうとしないからだ。
王は臣下を信じることができず、恐れから厳罰を下すことができない。
結局、悪人をはびこらせ、見て見ぬふりをしているが、それは側近である領主や大臣も同じだから同罪だ。
……俺には国王と違って、信じられる仲間が居る。それは幸せなことなのだと改めて思う。
俺はどのタイプなのかと考えると、独裁タイプに近いかもしれない。
王と違って俺が好きに意思決定できるのは、仲間が俺を信じてくれて、民が支持してくれているからだ。
さて、本格的な冬に向け魔獣が動き始める。ブラックドラゴンのことを考えると、のんびりしている時間はない。
俺は誰も遊ばせておく気はないし、働かない者を貴族だとは認めない。
王宮に行って、トーマス王子や学院長の覚悟の程を見せて貰いながら、皆のお手並み拝見といこう。
後任の学院長として、側室であり現貴族部部長教授のフィナンシェ様に、既に了承を得ていることも伝えた。
学院長は、今日その答えを出し、領主になると自分の覚悟を決めたのだ。
「覇王様と叔父上は、そんなことまで考えておられたのですか?」
ショックを受けたような表情で、トーマス王子が問う。
「デミル公爵を罷免するに足る数々の情報や証拠は、既に集めてありますよ。
残念ながら子息も皆クズばかりで、税金の着服、領民に対する違法な要求、暴力、代金の踏み倒し、国の補助金を愛人につぎ込んだりと酷いものです」
ワイコリーム公爵は、呆れ顔で首を振りながら、領民が暴動を起こす一歩手前だと調査結果を暴露した。
「ああ、デミル領の冒険者ギルドの報告では、新しく領主税とかいうものを、全ての素材の売買に15パーセント追加課税すると、デミル公爵から通達されたらしいぞ」
「領主税? ですかダルトンさん。でも既に、売り上げの1割は領主に納めていますよね?」
俺は首を捻りながら、こんなご時世に冒険者に対し、そんな馬鹿なことを考える領主が居たことに呆れる。
「なんでも、魔獣が増えたから素材をタダで融通しろと命令され、断ったら通達が来たらしい。
フン、これまでも側室とか愛人のために、毛皮や魔石をタダ同然で奪われていたそうだ。
激怒したギルマスが、他領の領主は冒険者ギルドに補助金を出しているというのに、ふざけるなと叫んだら、領主の私兵に拘束されたと、サブギルマスから今日知らせが届いた」
静かに怒っているダルトンさんの体から、ちょっと魔力が漏れ出し空気が重くなる。
全員開いた口が塞がらず、ここまで好き勝手できることが信じられない。
……どうやらデミル公爵は、魔獣避けの壁さえ造れば、自領は安全だと本気で考えているようだ。
「国王に、冒険者特例を出して頂きましょう。
デミル・ワートン・ヘイズ領は、覇王軍が出動も常駐もしないので、民のため国が冒険者を守るべきです。
この3つの領内に限り、魔獣の氾濫が納まるまで、冒険者もギルドも無税としましょう」
俺はダルトンさんの顔を見てニヤリと笑う。
「おう、それなら王都の冒険者も地方に移動するかもしれないな。
同じ魔獣を仕留めても取り分が多いなら、稼ぎだって増えるし、ギルドだって無税なら他領に素材を売る余裕ができる。
覇王様、3つのギルドにマジックバッグの販売かレンタルをお願いします」
「了解ですダルトンさん。ただし、全ては国王との話し合い次第です」
これで国王との連携の第一歩となる、テーマが決まった。
デミル公爵をどうにかするのは俺の仕事ではなく、国王と臣下の仕事だ。
「覇王様、王様との話し合いの際に、古代魔術具の使用許可と、新たな魔術具作成の話をお願いします」
マキアート教授は、起動可能になった古代魔術具の使用許可申請と、新しい魔術具作成のための補助金申請の書類を取り出し、俺に差し出してきた。
「マキアート教授、それは学院長にお願いしよう。
いや、折角だから、このメンバー全員で城へ行くことにしよう。
俺だけが行くと、この会議で決まったことも、俺の要望だと勘違いされる可能性がある」
「そうですね。連携するならメンバー全員の出席が望ましいと私も思います。
多くの意見を聞くことにより、何が必要で何をすべきなのか、王様やレイム公爵の判断が容易になるでしょう」
やる気になった学院長は、これから迅速に魔獣に対応するためには、如何に早く領主や役人を動かすかが大事で、一丸となって対応しなければ、多くの民を救うことはできないと意見した。
……覚悟を決めた学院長は、既に領主としての思考で物事を考えている。
……フムフム、入試制度を300年振りに改革した学院長は、思っていた通りヤル時はやるタイプだったな。
「まあ領主や役人は、俺に仕えている訳ではない。
俺があれこれ指示を出しても従うとは思えない。
国王が動くことで、己の爵位が大事な貴族たちは動かざるを得ないだろう。
国王に王たる強権を発動させるには、臣下の確たる要望と後押しが必要だ」
覇王と国王の立場の違いを示しながら、王を動かすのは俺ではなくお前たちだと言っておく。
臣下の意見など聞かず、独断で判断を下す王は独裁政治を行う。
その判断が正しければ、臣下は頼もしく思いながらただ従えばいい。
ただし、その判断が間違っていれば、横暴な暴君だと言われることになる。
今の王は、皆の意見を聞こうとするが決断ができない。
それは何故か?
それは、側近たる臣下が誰も自分の手を汚そうとはせず、責任を取ろうとしないからだ。
王は臣下を信じることができず、恐れから厳罰を下すことができない。
結局、悪人をはびこらせ、見て見ぬふりをしているが、それは側近である領主や大臣も同じだから同罪だ。
……俺には国王と違って、信じられる仲間が居る。それは幸せなことなのだと改めて思う。
俺はどのタイプなのかと考えると、独裁タイプに近いかもしれない。
王と違って俺が好きに意思決定できるのは、仲間が俺を信じてくれて、民が支持してくれているからだ。
さて、本格的な冬に向け魔獣が動き始める。ブラックドラゴンのことを考えると、のんびりしている時間はない。
俺は誰も遊ばせておく気はないし、働かない者を貴族だとは認めない。
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