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現実と理想
213ー2 卒業式のあとでー2
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う~ん、確かに2人はクラスメートでクラス対抗戦でも一緒だったし、サナへ領の救済活動では荷馬車組で一緒だった。
「おめでとう。2人とはこれからも魔法部の3年で同期生だ。卒業して結婚する時は、絶対にお祝いを贈るよ」と、俺はにまにましながらお祝いの言葉を言った。
わいわい騒ぎながらも、俺たちの会話に耳を傾けていたらしいエイトが、チェルシー先輩の手を引いてやって来た。
「アコル様、俺もチェルシー先輩からオッケイを貰いました」
「ちょっとエイト君、まだマギ公爵様からお許しは出てないわ」
凄く嬉しそうなエイトに向かって、チェルシー先輩が困った顔で注意する。
でも、ちょっと酔ってご機嫌なエイトは、大丈夫大丈夫って言いながら嬉しそうだ。
「おめでとう。もしもマギ公爵に反対されたら俺が説得するよ。
それじゃあ、エイトはチェルシー先輩の家に婿に入るのか?」
「いえ、それは無理だと思いますアコル様。私には妹が居ますので、家は妹が継いでくれると思います」って、男勝りなチェルシー先輩が、赤い顔をしてはにかんでいる姿は新鮮だ。
……2人も魔法部の3年で同期生かぁ。まあ、貴族なら婚約者がいて当然らしいからな。
そこからは驚きの連続だった。
いつの間にか仲間内で、たくさんのカップルが誕生していたのだ。
最後に報告を受けたのは、財務担当をしているスフレさんとラノーブのカップルだった。
「良かったねスフレさん。デミル領の貴族と結婚させられなくて」
「はい。全ては覇王様のお陰です。欲深い父は、私をデミル領の伯爵家の後継者に嫁がせたかったようですが、私とラノーブ君が覇王軍の財務担当だと知ると、気味の悪い笑顔で許可してくれました」
スフレさんは少し疲れた表情で「欲深さが増した父は、このまま2人が覇王軍で働けば、必ず自分にも利があるはずだと考えているようです」と付け加えて溜息を吐いた。
……あんなに忙しく活動してたのに、ホントいつの間に?
……いや、一緒に生死を分かち合ったからからこそか・・・
もうこれでおめでたい話は終わりかな?って油断していたら、驚きの凄い話が残っていた。
「うちの妹が、どうやらレイトル王子に求婚されたようです」
「はい? カイヤさんがレイトル第四王子に?」
「なんでもサーシム領の救済活動の時、妹の凛々しい姿に惚れたらしいです」
あんな苛烈で怖い妹を好きになる男がいるとは思わなかったと、ボンテンクは失礼なことを付け加えて言う。
いやいや待って。
レイトル王子は次期サーシム侯爵になるんだよな?
あのシャルミンさんと親戚に?
「まあお兄さま、勝手に何を話しているのかしら?」と、ちょっと低い声が後ろから聞こえた。
「ぎゃっ! いやカイヤ、その・・・俺は何も言ってないから。うん」と、青い顔をしたボンテンクは、慌てて逃げていった。
……ちょっとボンテンク、俺はどうしたらいいんだよー!
とりあえず、ここは笑顔だけを向けておこう。
「フウッ、もちろんお断りする予定ですわアコル様。
わたくし、レイトル王子は嫌いではないのですが、サーシム領の高位貴族が大嫌いなんです。
救済活動の時は、何度捻り潰したいと思ったことか」
今日もカイヤさんは通常運転だ。美しい笑顔で毒を吐いている。
でも、よく考えたら、カイヤさんがサーシム侯爵夫人になれば、古い考え方で完全に時代に乗り遅れているサーシム領の貴族たちを、ビシビシと鍛えてくれる気がする。
……もしかしてレイトル王子も、そこを期待しているとか? ん?
「覇王様は、心に決めた方はいらっしゃらないのですか?」
トゥーリス先輩と仲良く二人でやって来たのは、エイトの姉ミレーヌ様だ。
相変わらず仲良しそうで何よりだ。皆が理想のカップルだと言うだけはある。
「俺に恋をする時間があると思う?
それにさぁ、俺、まだ成人してないし、将来の夢は大商人だよ?
卒業したら世界中を飛び回る予定だし、この国の貴族になる気もないし」
別に恋を否定するわけじゃないけど、これまで結婚なんて考えたこともなかったから、問われても好きな女性が思い浮かばない。
そもそも俺は、かわいい妹弟を高学院卒業まで見守りたいし、アエラボ商会が忙しい。
ミゲール君はまだ5歳だから、最低でも13年は独身でいたい。
……13年後でも、俺はまだ27歳だよな? ぜんぜん大丈夫。問題なし!
「私も魔獣の大氾濫が収束するまでは、結婚は考えられません」と、ラリエスが胸を張って会話に参加してきた。
「いや、ラリエスは名門ワイコリーム公爵家の後継だ。結婚は重要なことだろう?」って、俺は心配になって訊いてみる。
「我がワイコリーム公爵家は、代々恋愛結婚です。家同士で結婚を決めるようなことはありません。
アコル様が結婚されるまで、私も結婚する気はありません」
何故そんなに嬉しそうな顔をして断言するんだよラリエス?
「いや、俺に遠慮する必要はない。好きな人ができたら、きっちり決めてくれ。俺はラリエスが決めた人なら、心から応援するぞ」
「いえ、アコル様にお仕えすることより、優先したいことなどありません」と、後ろに倒れるぞと心配になるほど、両手を腰にあて笑顔でラリエスは胸を張った。
……これは酔ってるのか?
……酔っていたとしても、きっと本心なんだろうな。ハハハ。
明日からはまた忙しくなる。
レイム領の戦争は気になるが、今日くらいは皆に楽しんで欲しい。
「おめでとう。2人とはこれからも魔法部の3年で同期生だ。卒業して結婚する時は、絶対にお祝いを贈るよ」と、俺はにまにましながらお祝いの言葉を言った。
わいわい騒ぎながらも、俺たちの会話に耳を傾けていたらしいエイトが、チェルシー先輩の手を引いてやって来た。
「アコル様、俺もチェルシー先輩からオッケイを貰いました」
「ちょっとエイト君、まだマギ公爵様からお許しは出てないわ」
凄く嬉しそうなエイトに向かって、チェルシー先輩が困った顔で注意する。
でも、ちょっと酔ってご機嫌なエイトは、大丈夫大丈夫って言いながら嬉しそうだ。
「おめでとう。もしもマギ公爵に反対されたら俺が説得するよ。
それじゃあ、エイトはチェルシー先輩の家に婿に入るのか?」
「いえ、それは無理だと思いますアコル様。私には妹が居ますので、家は妹が継いでくれると思います」って、男勝りなチェルシー先輩が、赤い顔をしてはにかんでいる姿は新鮮だ。
……2人も魔法部の3年で同期生かぁ。まあ、貴族なら婚約者がいて当然らしいからな。
そこからは驚きの連続だった。
いつの間にか仲間内で、たくさんのカップルが誕生していたのだ。
最後に報告を受けたのは、財務担当をしているスフレさんとラノーブのカップルだった。
「良かったねスフレさん。デミル領の貴族と結婚させられなくて」
「はい。全ては覇王様のお陰です。欲深い父は、私をデミル領の伯爵家の後継者に嫁がせたかったようですが、私とラノーブ君が覇王軍の財務担当だと知ると、気味の悪い笑顔で許可してくれました」
スフレさんは少し疲れた表情で「欲深さが増した父は、このまま2人が覇王軍で働けば、必ず自分にも利があるはずだと考えているようです」と付け加えて溜息を吐いた。
……あんなに忙しく活動してたのに、ホントいつの間に?
……いや、一緒に生死を分かち合ったからからこそか・・・
もうこれでおめでたい話は終わりかな?って油断していたら、驚きの凄い話が残っていた。
「うちの妹が、どうやらレイトル王子に求婚されたようです」
「はい? カイヤさんがレイトル第四王子に?」
「なんでもサーシム領の救済活動の時、妹の凛々しい姿に惚れたらしいです」
あんな苛烈で怖い妹を好きになる男がいるとは思わなかったと、ボンテンクは失礼なことを付け加えて言う。
いやいや待って。
レイトル王子は次期サーシム侯爵になるんだよな?
あのシャルミンさんと親戚に?
「まあお兄さま、勝手に何を話しているのかしら?」と、ちょっと低い声が後ろから聞こえた。
「ぎゃっ! いやカイヤ、その・・・俺は何も言ってないから。うん」と、青い顔をしたボンテンクは、慌てて逃げていった。
……ちょっとボンテンク、俺はどうしたらいいんだよー!
とりあえず、ここは笑顔だけを向けておこう。
「フウッ、もちろんお断りする予定ですわアコル様。
わたくし、レイトル王子は嫌いではないのですが、サーシム領の高位貴族が大嫌いなんです。
救済活動の時は、何度捻り潰したいと思ったことか」
今日もカイヤさんは通常運転だ。美しい笑顔で毒を吐いている。
でも、よく考えたら、カイヤさんがサーシム侯爵夫人になれば、古い考え方で完全に時代に乗り遅れているサーシム領の貴族たちを、ビシビシと鍛えてくれる気がする。
……もしかしてレイトル王子も、そこを期待しているとか? ん?
「覇王様は、心に決めた方はいらっしゃらないのですか?」
トゥーリス先輩と仲良く二人でやって来たのは、エイトの姉ミレーヌ様だ。
相変わらず仲良しそうで何よりだ。皆が理想のカップルだと言うだけはある。
「俺に恋をする時間があると思う?
それにさぁ、俺、まだ成人してないし、将来の夢は大商人だよ?
卒業したら世界中を飛び回る予定だし、この国の貴族になる気もないし」
別に恋を否定するわけじゃないけど、これまで結婚なんて考えたこともなかったから、問われても好きな女性が思い浮かばない。
そもそも俺は、かわいい妹弟を高学院卒業まで見守りたいし、アエラボ商会が忙しい。
ミゲール君はまだ5歳だから、最低でも13年は独身でいたい。
……13年後でも、俺はまだ27歳だよな? ぜんぜん大丈夫。問題なし!
「私も魔獣の大氾濫が収束するまでは、結婚は考えられません」と、ラリエスが胸を張って会話に参加してきた。
「いや、ラリエスは名門ワイコリーム公爵家の後継だ。結婚は重要なことだろう?」って、俺は心配になって訊いてみる。
「我がワイコリーム公爵家は、代々恋愛結婚です。家同士で結婚を決めるようなことはありません。
アコル様が結婚されるまで、私も結婚する気はありません」
何故そんなに嬉しそうな顔をして断言するんだよラリエス?
「いや、俺に遠慮する必要はない。好きな人ができたら、きっちり決めてくれ。俺はラリエスが決めた人なら、心から応援するぞ」
「いえ、アコル様にお仕えすることより、優先したいことなどありません」と、後ろに倒れるぞと心配になるほど、両手を腰にあて笑顔でラリエスは胸を張った。
……これは酔ってるのか?
……酔っていたとしても、きっと本心なんだろうな。ハハハ。
明日からはまた忙しくなる。
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