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現実と理想
209ー2 作戦会議ー2
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会議の後、俺たちは体育館に向かった。
マキアート教授は今、初代覇王様が遺してくださった魔術具の解明に全力を注いでいる。
研究室の学生に加えて、卒業や進級が確定している学生は、学部を問わず古代語の解読に挑み、何のための魔術具なのか、どうすれば魔術具を起動させられるのかを調べている。
王宮の地下宝物庫から移動させた魔術具の数は20を越えている。
何のための魔術具なのかが解明できたのは、今時点で3つだけだ。
その3つの魔術具の内の1つは、ドラゴンが嫌う音を出せる装置である可能性が高いらしく、起動できればドラゴンを移動させることが可能になる。
この魔術具は、まるで大きなラッパのようなモノが付いているので、恐らく音を出す魔術具だろうと皆は考えていた。
まさかドラゴン討伐に役立つ魔術具だったとは驚きだ。
魔術具本体に刻まれていた古代語の解読に成功した上級貴族部の先輩は、取扱説明書だと思われる木簡の解読を、チームを組んで挑んでくれている。
木簡に刻まれた文字が所々消えかかっており、推測できる文字を当てはめているのだという。
俺たちは執行部女子メンバーの姿を見付けて移動する。
「どうだカイヤ? 古代文字は解読できそうか?」
「あら、お兄さま。56文字は解読できたわ。
残りは8文字なんだけど、現代語とは用方が違うのか、現代には無いモノに使われていたのか、文字というより絵みたいでサッパリ分からないの」
カイヤさんは、意味不明な文字を指さして、お手上げですわと首を横に振った。
ボンテンクは妹のカイヤさんのノートを逆さまから覗き込み「まるで蛇の絵と鹿の角の絵みたいだな」と呟いた。
「えっ? ちょっと待て、それって・・・もしかしてもしかするかも」と、椅子から立ち上がったのはシルクーネ先輩だ。
シルクーネ先輩は、これが蛇でこっちが鹿だったら、これはドラゴンの翼で、この独特な模様はロックドラゴンだわ!って興奮しながら指さしていく。
「それじゃあ、この鋭い爪のある手……みたいなものはビッグベアーかしら?」と、ミレーヌ様が楽しそうに答える。
「あら、それならこの独特な牙はタイガー種かしら?」と、ケガが回復したチェルシー先輩も声を上げる。
「それだと、このふさふさの尻尾みたいなのはウルフ系だな」と、ラリエスが面白そうに笑って答えた。
「ああ、間違いない。この右に2つ左に2つの目のようなモノが並んでいる絵は、変異種をも束ねる魔法攻撃ができる異形のリーダーだ」
自然の摂理に反した気味の悪い異様な変異種が思い浮かび、ドラゴンより厄介だと感じたことを思い出し、文字を睨み付けるようにして俺は答えた。
「あれは最悪だったよね」と、サーシム領で異形の変異種リーダーの音攻撃に遭った時のことを思い出したトーブル先輩が、俺たちの方に歩いてきて会話に加わった。
トーブル先輩は小型の魔術具を両手で持っており、その魔術具をテーブルの上に置くと、ある一点を指さした。
そこには4つの目の絵と、鹿の角、アースドラゴンの尻尾、馬の足らしき文字というか図が書かれていた。
「まるであの時の異形の変異種を示すような図だ!
鹿の頭、アースドラゴンの胴体、馬の足、そして4つの目・・・それでは、この魔術具はあの意識を失う鳴き声に対抗する魔術具なのか?」
あの時リーダーとして異形の変異種と対峙したボンテンクが、驚いたように叫んで、目を見開いて魔術具を凝視する。
ボンテンクの叫び声と、俺たちの話を何となく聞いていた他の学生たちが、一斉に目の前にある魔術具を調べ始める。
「あっ、ドラゴンが嫌う音を出す魔術具のラッパの部分に、ドラゴンの翼の絵がある!」
マキアート教授と一緒に起動方法を調べていたマサルーノ先輩が叫ぶ。
「この魔術具には、タイガーの牙とウルフの尻尾の絵が描いてあるぞ!」と叫んだのは、王立高学院特別部隊に所属する特務部の先輩だ。
手の空いていた学生は、まだ確認さえ始めていなかった魔術具を手に取ったり、覗き込んだりしながら魔獣を示す絵がないか確認していく。
その結果、2つの魔術具を除く全ての魔術具に、魔獣を示す絵文字が確認できた。
「これは大きな発見だ。具体的にどう使うのかは不明だが、どの魔獣を倒す魔術具なのかは判明した」
マキアート教授は興奮したように大きな声で話し、一気に解明が進むだろうと喜んだ。
俺は魔獣を示す絵文字が入っていなかった魔術具の一つに視線を向け、思わず「えっ!」と声を出してしまった。
マキアート教授は今、初代覇王様が遺してくださった魔術具の解明に全力を注いでいる。
研究室の学生に加えて、卒業や進級が確定している学生は、学部を問わず古代語の解読に挑み、何のための魔術具なのか、どうすれば魔術具を起動させられるのかを調べている。
王宮の地下宝物庫から移動させた魔術具の数は20を越えている。
何のための魔術具なのかが解明できたのは、今時点で3つだけだ。
その3つの魔術具の内の1つは、ドラゴンが嫌う音を出せる装置である可能性が高いらしく、起動できればドラゴンを移動させることが可能になる。
この魔術具は、まるで大きなラッパのようなモノが付いているので、恐らく音を出す魔術具だろうと皆は考えていた。
まさかドラゴン討伐に役立つ魔術具だったとは驚きだ。
魔術具本体に刻まれていた古代語の解読に成功した上級貴族部の先輩は、取扱説明書だと思われる木簡の解読を、チームを組んで挑んでくれている。
木簡に刻まれた文字が所々消えかかっており、推測できる文字を当てはめているのだという。
俺たちは執行部女子メンバーの姿を見付けて移動する。
「どうだカイヤ? 古代文字は解読できそうか?」
「あら、お兄さま。56文字は解読できたわ。
残りは8文字なんだけど、現代語とは用方が違うのか、現代には無いモノに使われていたのか、文字というより絵みたいでサッパリ分からないの」
カイヤさんは、意味不明な文字を指さして、お手上げですわと首を横に振った。
ボンテンクは妹のカイヤさんのノートを逆さまから覗き込み「まるで蛇の絵と鹿の角の絵みたいだな」と呟いた。
「えっ? ちょっと待て、それって・・・もしかしてもしかするかも」と、椅子から立ち上がったのはシルクーネ先輩だ。
シルクーネ先輩は、これが蛇でこっちが鹿だったら、これはドラゴンの翼で、この独特な模様はロックドラゴンだわ!って興奮しながら指さしていく。
「それじゃあ、この鋭い爪のある手……みたいなものはビッグベアーかしら?」と、ミレーヌ様が楽しそうに答える。
「あら、それならこの独特な牙はタイガー種かしら?」と、ケガが回復したチェルシー先輩も声を上げる。
「それだと、このふさふさの尻尾みたいなのはウルフ系だな」と、ラリエスが面白そうに笑って答えた。
「ああ、間違いない。この右に2つ左に2つの目のようなモノが並んでいる絵は、変異種をも束ねる魔法攻撃ができる異形のリーダーだ」
自然の摂理に反した気味の悪い異様な変異種が思い浮かび、ドラゴンより厄介だと感じたことを思い出し、文字を睨み付けるようにして俺は答えた。
「あれは最悪だったよね」と、サーシム領で異形の変異種リーダーの音攻撃に遭った時のことを思い出したトーブル先輩が、俺たちの方に歩いてきて会話に加わった。
トーブル先輩は小型の魔術具を両手で持っており、その魔術具をテーブルの上に置くと、ある一点を指さした。
そこには4つの目の絵と、鹿の角、アースドラゴンの尻尾、馬の足らしき文字というか図が書かれていた。
「まるであの時の異形の変異種を示すような図だ!
鹿の頭、アースドラゴンの胴体、馬の足、そして4つの目・・・それでは、この魔術具はあの意識を失う鳴き声に対抗する魔術具なのか?」
あの時リーダーとして異形の変異種と対峙したボンテンクが、驚いたように叫んで、目を見開いて魔術具を凝視する。
ボンテンクの叫び声と、俺たちの話を何となく聞いていた他の学生たちが、一斉に目の前にある魔術具を調べ始める。
「あっ、ドラゴンが嫌う音を出す魔術具のラッパの部分に、ドラゴンの翼の絵がある!」
マキアート教授と一緒に起動方法を調べていたマサルーノ先輩が叫ぶ。
「この魔術具には、タイガーの牙とウルフの尻尾の絵が描いてあるぞ!」と叫んだのは、王立高学院特別部隊に所属する特務部の先輩だ。
手の空いていた学生は、まだ確認さえ始めていなかった魔術具を手に取ったり、覗き込んだりしながら魔獣を示す絵がないか確認していく。
その結果、2つの魔術具を除く全ての魔術具に、魔獣を示す絵文字が確認できた。
「これは大きな発見だ。具体的にどう使うのかは不明だが、どの魔獣を倒す魔術具なのかは判明した」
マキアート教授は興奮したように大きな声で話し、一気に解明が進むだろうと喜んだ。
俺は魔獣を示す絵文字が入っていなかった魔術具の一つに視線を向け、思わず「えっ!」と声を出してしまった。
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