キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん

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現実と理想

200ー2 ドラゴン襲来とサナへ領の危機ー2

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 王立高学院が見えてきた頃には、中級地区の住民の姿は、殆ど見掛けなくなっていた。
 この辺りの商会は、自分の敷地の中に地下室を造っているようだし、避難場所になっている公共施設も多い。

 到着した王立高学院では、学生たちが避難してきた住民を地下室に誘導していた。
 魔法部の教授や学生たちは、もしもに備えて臨戦態勢に入っている。

 ……さすが王立高学院。動きに迷いもないし、住民の避難を優先している。

 緊急時に本部となる予定の図書室に向かうと、学院長や各学部の部長教授たちが集合していた。

 ドラゴンが王都に飛来した場合、私は王宮を守ることなく、王都民を守るために最善を尽くすよう覇王様から命令されている。
 それは王立高学院も同じで、ここは、ドラゴンと戦うための作戦本部となる。

「こんな時に限って、作戦本部を仕切る【魔獣討伐専門部隊】が居ない。
 王都の様子はどうだハシム殿?」

学院長は窓から教会の方を見ながら、困ったという顔をして私に問う。

「はい、下級地区はかなり混乱していましたが、中級地区の人の姿は少なかったですよ。とりあえず建物の中に避難しているようです」と私は答えた。

「今のところ、グレードラゴンは人を襲っていないようですわ」と、側室フィナンシェ様は冷静だ。

「今この学院には、覇王軍、王立高学院特別部隊、優秀な魔法部の学生が居ない状態だが、残っている魔法部や特務部の学生も優秀だ」

「ええカルタック教授、昨年の今頃の魔法省のエリート、軍のエリート全員よりも戦力としては高いでしょう」と、特務部のパドロール教授が同意する。

「ドラゴン2頭なら、今の戦力でもいけそうかマキアート教授?」

「フッ、学院長、当然です。この日の為に改良型魔法陣も揃えてあるし、妖精と契約している者も多い。
 学院長だって古代魔法陣が使えるのだから問題ないでしょう?」

マキアート教授は負ける気なんて全くないって顔をして、学院長を見てニヤリと笑う。

「問題は戦場となる場所ですね。王都内で戦闘が始まれば、どうしても建物や人の被害は大きくなります」

私は頼もしい仲間たちに向かって、唯一の問題点を上げて溜息を吐いた。

 
◇◇ ラリエス ◇◇

 龍山から本格的な魔獣の氾濫が始まったと、連絡を受けたのは昨日の夜明けだった。

 連絡してきた冒険者ギルド龍山支部によると、突然中級魔獣たちが群れで下山を開始したのだという。 
 その影響で、下位の魔獣が龍山の至る所から逃げだし始めたそうだ。

 覇王様と私は、直ぐに光のドラゴンを呼んで、昼過ぎには龍山の上空に到着した。

 そこで見たのは、グレードラゴンが龍山の中腹まで下りて、Aランク以上の上位魔獣を襲っている光景だった。グレードラゴンの数は20を越えている。

 当然上位種の魔獣は、グレードラゴンの餌になりたくないから下山して逃げる。
 今度は山の中腹より下に居た中級魔獣が、上位種から逃げ出し下山していく。

 標高1500メートル付近に生息している中級魔獣たちは、群れで行動するものが多い。
 群れで逃げ惑うことによって、800メートル付近に生息している下位の魔獣たちは、完全にパニックになっていた。

 龍山は特殊な形をしていて、龍山の北と東に位置するマギ領側は、なだらかで冒険者も入山しやすい。
 しかし龍山の南に位置するサナへ領側は、断崖絶壁というか、岩が剥き出しで木や草も殆ど生えていない。

 岩場を生活圏にしている魔獣もいるが、主には鳥や鹿類の魔獣くらいで、種類の多いウルフ系やボア系などは生息していなかった。
 しかし、中級や下位の魔獣たちは、生きる為に逃げねばならず、生活圏ではないサナへ領側に向かって移動を開始していた。

 サナへ領側には、龍山で活動するための冒険者ギルドが無い。
 冒険者が入山できる登山口もないし、登れるとしたら岩の多い王都側の西の斜面くらいだった。

 マギ領には、龍山支部の他にも2箇所、龍山で活動する冒険者のための支部があり、常に龍山の魔獣の動きを注視していた。

 だが、サナへ領の者は、龍山から魔獣が下りてくるという観念がなかった。
 だから、ドラゴン以外の龍山の魔獣に襲われることはないと、警戒さえしていなかった。

『ラリエス、アコル様が直ぐに学院に戻って、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】、【魔獣討伐専門部隊】を、マギ領とサナへ領へ向かわせろって』

私と契約している光のドラゴンエリスが、アコル様の指示を念話で伝えてくれる。
 アコル様はエリスとも念話ができるので、1キロ以内であればエリスを通して会話も可能だった。

「了解エリス。直ぐに学院に戻ろう。これは大変なことになりそうだ。アコル様はどうされるのだろう?」

私の話を聞いたエリスが、直ぐにアコル様の予定を訊いてくれた。

『アコル様は、ランドルと一緒にあのグレードラゴンたちを、山の中腹から追い払うって。できれば数も減らしたいって』

エリスからアコル様の予定を聞いた私は、急いで学院に取って返した。

 そして学院に戻った私は、直ぐにサナへ領の冒険者ギルドに緊急事態を知らせ、【魔獣討伐専門部隊】へ出動要請を出した。
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