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覇王の改革
194ー2 商会主アコル(8)ー2
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実はマーガレット商会の娘さん、アレクシス侯爵家のエドガー殿の学院時代の同期生で、自分は結婚を承諾した覚えもないし、このままでは店が潰れるから助けて欲しいと、何度か相談を受けていたそうだ。
マーガレット商会は完全に被害者だから、できれば助けたいバロン王子は、俺の提案で解決させたいと意気込んでいる。
俺とボンテンクは、バロン王子とレイシス領を治めるレイシス伯爵と側近たちに、最低限の救済方法を急いで教え、いくつか指示を出しておいた。
消火のお礼と見送りに集まってくれた大勢のレイシス領民に、俺とボンテンク先輩は手を振りながら、それぞれが向かう上空へと飛び立った。
俺はランドルでサーシム領に向かい、ボンテンクはエリスでレギル火山に向かう。
火山の噴火だけでも大災害だから、せめてドラゴンの脅威は減らしたいと、ボンテンクとエリス、俺の契約妖精ユテがドラゴン討伐を引き受けてくれた。
ホバーロフ王国側のティー山脈に、グレードラゴンを追い出すだけでも構わないと言っておいたが、エリスが滅茶苦茶張り切っているので、任せても大丈夫そうだ。
ミル山の頂上を越えコルランドル王国側へ入ると、マリード領の東側の山の斜面は勿論、眼下の広大な畑には灰色の火山灰が薄っすらと積もっていた。
ミル山の様子をランドルで飛びながら注意深く監視するが、コルランドル王国側に噴煙が上がるような火口はなかったし、溶岩が流れ出ている場所もなかった。
幸運にも山火事になっている箇所も見当たらない。
ものの10分も飛んでいると、ミル山から少し離れた場所で、マサルーノ先輩一行らしき冒険者の集団が、魔獣の山の前に座っているのが見えた。
冒険者たちは懸命に魔獣を解体しているみたいだから、既に下山してきた魔獣の討伐は終わっているのだろう。
「アコル様、倒れられたとエクレアちゃんに聞きましたが大丈夫ですか? ニルギリ公国の被害の大きさは?」
俺が魔力枯渇で倒れたことをエクレアから聞いたらしいマサルーノ先輩が、駆け寄ってくるなり俺の体をクルリと回すように確認しながら心配する。
冒険者たちまで「大丈夫ですか覇王様ー」と叫びながら駆け寄ってきた。
「お疲れマサルーノ。冒険者の皆さんもご苦労様。
魔獣の多くは溶岩にのまれた。だが、溶岩の被害は甚大だ。
ミル山の東側の中腹から流れ出した溶岩は、レイシスの町の3分の1を焼き、町の5キロ先で流れを止めている。
噴火口もなかった中間地点の麓から突如噴きあがった溶岩の流れは、俺がなんとか食い止めた。
問題は……二度目の噴火で流れ出した東側の溶岩が、今現在もホバーロフ王国との境に在る大河に向かって流れていることだ」
俺は簡単な説明を皆にして、マサルーノ先輩とヤーロン先輩から、マリード領側の被害状況の報告を受けた。
簡単な指示を冒険者たちに出し、急ぐ俺はマサルーノ先輩を竜籠に乗せて、魔獣の群が向かったサーシム領へと向かう。
ヤーロン先輩にはミルダの冒険者ギルドに戻ってもらい、現状報告をするよう頼んだ。
上空から100頭近い魔獣の群の足取りを追いながら、夕方近くにサーシム領に入った。
「いましたアコル様! 林の中です。あっ、でも大多数はもう直ぐこの先の村……いや町に到達しそうです!」
見張りをしていたマサルーノ先輩が指さす方向に目を凝らすと、確かに群は分かれており、先を行く群は小さな町へと迫りつつあった。
……あの町を越えた先には、俺が育ったヨウキ村がある。
「絶対にここで食い止めるぞ!」
「はいアコル様!」
『分かってるよアコル』と、ランドルも張り切って返事をする。
初めて光のドラゴンに乗ったマサルーノ先輩はちょっとテンション高めだが、ボンテンク同様に魔力量を150以上に上げている頼もしい仲間だ。
「ランドル、魔獣の前に出たら、思いっ切り炎のブレスを頼む」と、俺は念話でランドルに指示を出す。
『了解アコル。あのくらいならひとりで大丈夫だよ。任せて』とランドルは応えて、一気にスピードを上げ魔獣の群の前に出る。
突然最強魔獣である光のドラゴンが目の前に現れ、魔獣たちは大混乱に陥る。
でも魔獣は器用じゃないから、足並みを揃えて上手く止まったりできない。
ランドルは地面スレスレまで降下し、一気に殲滅するかの如く炎を放つ。
これが本当のドラゴンブレスファイヤーだよな……なんて思いながらランドルの攻撃を見ていると、巨大な炎が変異種を含めた魔獣を呑み込んでいく。
「よくやったランドル! 随分と的を絞って攻撃できるようになったな!」
俺は大きな声でランドルを褒めた。
始めの頃は魔獣以外のモノまで焼いてしまっていたけど、今では狙い通りの所に炎が放てるようになっているし、俺の指示通りに飛ぶことも出来る。
頼もしく成長してくれたランドルに、念話でも偉いぞ!と褒めておく。
残念ながら魔獣の殆どが消し炭みたいになるから、ランドルが倒した魔獣の素材は回収できなかった。
「よし、残った魔獣は俺とランドルが林から追い出すぞ。マサルーノ先輩、あとは任せます!」
「承知しました」
マサルーノ先輩を竜籠から降ろして、俺とランドルはマリード領側に少し戻り、残った魔獣を林の外に追い出すため、低空飛行でゆっくりと進んでいく。
マーガレット商会は完全に被害者だから、できれば助けたいバロン王子は、俺の提案で解決させたいと意気込んでいる。
俺とボンテンクは、バロン王子とレイシス領を治めるレイシス伯爵と側近たちに、最低限の救済方法を急いで教え、いくつか指示を出しておいた。
消火のお礼と見送りに集まってくれた大勢のレイシス領民に、俺とボンテンク先輩は手を振りながら、それぞれが向かう上空へと飛び立った。
俺はランドルでサーシム領に向かい、ボンテンクはエリスでレギル火山に向かう。
火山の噴火だけでも大災害だから、せめてドラゴンの脅威は減らしたいと、ボンテンクとエリス、俺の契約妖精ユテがドラゴン討伐を引き受けてくれた。
ホバーロフ王国側のティー山脈に、グレードラゴンを追い出すだけでも構わないと言っておいたが、エリスが滅茶苦茶張り切っているので、任せても大丈夫そうだ。
ミル山の頂上を越えコルランドル王国側へ入ると、マリード領の東側の山の斜面は勿論、眼下の広大な畑には灰色の火山灰が薄っすらと積もっていた。
ミル山の様子をランドルで飛びながら注意深く監視するが、コルランドル王国側に噴煙が上がるような火口はなかったし、溶岩が流れ出ている場所もなかった。
幸運にも山火事になっている箇所も見当たらない。
ものの10分も飛んでいると、ミル山から少し離れた場所で、マサルーノ先輩一行らしき冒険者の集団が、魔獣の山の前に座っているのが見えた。
冒険者たちは懸命に魔獣を解体しているみたいだから、既に下山してきた魔獣の討伐は終わっているのだろう。
「アコル様、倒れられたとエクレアちゃんに聞きましたが大丈夫ですか? ニルギリ公国の被害の大きさは?」
俺が魔力枯渇で倒れたことをエクレアから聞いたらしいマサルーノ先輩が、駆け寄ってくるなり俺の体をクルリと回すように確認しながら心配する。
冒険者たちまで「大丈夫ですか覇王様ー」と叫びながら駆け寄ってきた。
「お疲れマサルーノ。冒険者の皆さんもご苦労様。
魔獣の多くは溶岩にのまれた。だが、溶岩の被害は甚大だ。
ミル山の東側の中腹から流れ出した溶岩は、レイシスの町の3分の1を焼き、町の5キロ先で流れを止めている。
噴火口もなかった中間地点の麓から突如噴きあがった溶岩の流れは、俺がなんとか食い止めた。
問題は……二度目の噴火で流れ出した東側の溶岩が、今現在もホバーロフ王国との境に在る大河に向かって流れていることだ」
俺は簡単な説明を皆にして、マサルーノ先輩とヤーロン先輩から、マリード領側の被害状況の報告を受けた。
簡単な指示を冒険者たちに出し、急ぐ俺はマサルーノ先輩を竜籠に乗せて、魔獣の群が向かったサーシム領へと向かう。
ヤーロン先輩にはミルダの冒険者ギルドに戻ってもらい、現状報告をするよう頼んだ。
上空から100頭近い魔獣の群の足取りを追いながら、夕方近くにサーシム領に入った。
「いましたアコル様! 林の中です。あっ、でも大多数はもう直ぐこの先の村……いや町に到達しそうです!」
見張りをしていたマサルーノ先輩が指さす方向に目を凝らすと、確かに群は分かれており、先を行く群は小さな町へと迫りつつあった。
……あの町を越えた先には、俺が育ったヨウキ村がある。
「絶対にここで食い止めるぞ!」
「はいアコル様!」
『分かってるよアコル』と、ランドルも張り切って返事をする。
初めて光のドラゴンに乗ったマサルーノ先輩はちょっとテンション高めだが、ボンテンク同様に魔力量を150以上に上げている頼もしい仲間だ。
「ランドル、魔獣の前に出たら、思いっ切り炎のブレスを頼む」と、俺は念話でランドルに指示を出す。
『了解アコル。あのくらいならひとりで大丈夫だよ。任せて』とランドルは応えて、一気にスピードを上げ魔獣の群の前に出る。
突然最強魔獣である光のドラゴンが目の前に現れ、魔獣たちは大混乱に陥る。
でも魔獣は器用じゃないから、足並みを揃えて上手く止まったりできない。
ランドルは地面スレスレまで降下し、一気に殲滅するかの如く炎を放つ。
これが本当のドラゴンブレスファイヤーだよな……なんて思いながらランドルの攻撃を見ていると、巨大な炎が変異種を含めた魔獣を呑み込んでいく。
「よくやったランドル! 随分と的を絞って攻撃できるようになったな!」
俺は大きな声でランドルを褒めた。
始めの頃は魔獣以外のモノまで焼いてしまっていたけど、今では狙い通りの所に炎が放てるようになっているし、俺の指示通りに飛ぶことも出来る。
頼もしく成長してくれたランドルに、念話でも偉いぞ!と褒めておく。
残念ながら魔獣の殆どが消し炭みたいになるから、ランドルが倒した魔獣の素材は回収できなかった。
「よし、残った魔獣は俺とランドルが林から追い出すぞ。マサルーノ先輩、あとは任せます!」
「承知しました」
マサルーノ先輩を竜籠から降ろして、俺とランドルはマリード領側に少し戻り、残った魔獣を林の外に追い出すため、低空飛行でゆっくりと進んでいく。
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