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指導者たち
138ー1 閑話 覇王講座とあれこれ(1)ー1
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◇◇ 去り行く者 貴族部2年ポーラン(ヘイズ領) ◇◇
少し前まで領主であるヘイズ侯爵様は、第一王子マロウ様を次期国王に推す最大派閥を束ねておられた。
だからヘイズ領やデミル領やワートン領の学生や教師は、高学院の中で好きなように振る舞えていた。
しかし今の学院長になってから、俺たちヘイズ侯爵派は、徐々に発言力を弱め自由が効かなくなった。
腹立たしいが、それもこれもマロウ王子が皇太子に決定するまでの我慢だと思っていた。
ところが、あの生意気な平民が入学してきてから、俺たちの行動や行いを批判する学生が増え、学院の規則が大きく変わってしまった。
少しばかり成績がいいからと、高位貴族である俺たちに対して礼をとることもせず、生意気な言動と振る舞いをした。
いつの間にか【麗しの三騎士】の保護下に収まり、デカい態度をとるようになった。
学院の裏を牛耳っていた魔法部3年のカルタス様(ヘイズ侯爵子息)と、貴族部3年のイスデン様(デミル公爵子息)が、身分差を教えてやれと命令されたので、ヘイズ侯爵派の学生数人で生意気なアコルに鉄槌を下すことにした。
痛い目に遭わせて、学院を追い出そうとしたら、逆に我々が停学処分になってしまった。
当然ヘイズ領の伯爵である父親は激怒し、二度と停学になるようなみっともない真似をするなと俺を叱咤した。
停学中に行われたクラス対抗戦では、生意気なアコルが活躍したと聞き、いつか復讐してやろうと停学になった仲間や、他のヘイズ侯爵派の学生と約束した。
だが、実はあの平民がSランクの冒険者だったことが判明し、アコルの攻撃魔法を見た学生全員が怖気付いた。
それでも俺は、アコルに復讐する機会をずっと狙っていた。
それが・・・それが覇王? 第七王子? 何だよそれ!
そして何だよあれは?
体育館に集まった大勢の前で、アコルが覇王だと名乗った途端、俺の体は地面に吸い寄せられたかのように倒れ伏し、頭も体も全く動かせなくなった。
確かにルフナ王子は、覇王様に悪意を抱けば瞬時に倒れ伏すと言っていたが、そんなことが起こるなんて信じられなかった。
もしも倒れ伏したら、覇王様に反意ありと知られてしまい、自分の家族に大きな影響を与える可能性があるとも言っていた。
もうお終いだ。絶対に不敬罪で殺される!
倒れ伏しても、学院長も覇王も罪に問わないと言ったが、自主退学や休学を勧めたということは、もしも残ったりしたら、次はないということだ。
あの恐怖体験を、これからもするなんて耐えられない。
思い出すと体が震え、恐怖で眠れなくなる。噂では【覇気】というものらしい。
親や家に迷惑を掛けないようにするためには、自主退学するしかない。
王立高学院じゃなくても、ヘイズ高学院に転学すればいいんだ。
そう決心して他のヘイズ侯爵派の学生に話したら、闇討ちを仕掛けた者は全員、自主退学して自領の高学院に転入すると言う。
首謀者であるイスデン先輩は、デミル領がドラゴンに襲われたから、自領が心配で休学すると届け出るらしい。
確かに領主の子息は王立高学院を卒業してないと、社交界に出られないだろう。
カルタス先輩は、今年もB級作業魔術師の資格が取れそうにないから、特務部卒業資格に切り替えて学院を卒業して出ていくようだ。
アコルに入学当初から嫌がらせをしたり、横柄な態度をとっていた学生で、倒れ伏した者の3割は自主退学をするらしい。
地方出身者は、殆どが子爵家以上の貴族だから、自領の高学院に無試験で転入できる。
恐怖で震えているのは、王都出身で領地を持たない貴族家の学生たちだ。
準男爵や騎士の家の学生は貧乏だから転学は難しい。
結局、休学届を出した学生は10人で、自主退学する学生は25人だった。
そして今日、俺は王立高学院を出ていく。
もう復讐しようとは思わない。
くだらない救済活動に付き合う必要はなくなったし、魔獣と戦えと強制されることもない。
俺は負けた訳じゃない。自由を選んだだけだ。
◇◇ 危機管理指導講座の採点 ◇◇
私は貴族部1年のカイヤ。兄はアコル様の従者になったボンテンク。
これから楽しい楽しい採点作業を、【王立高学院特別部隊】の貴族部や商学部の学生を中心に、図書館で一斉に始めるわ。
放課後アコル様から、マジックバッグを貸し出されるという発表があり、全員興奮状態でテンション高めだけど、やる気は満々みたい。
「皆さん、これから正解を読み上げます。
1枚目の採点をしたら、2枚目以降はそれに倣って採点してください。
そして、各領地・所属部署で集計し、合計点を受講人数で割って、平均点を出してください。
それが終わったら体育館に解答用紙を張り出しに行きまーす」
夕食も美味しかったし、思わず声が弾んでしまうわ。
正解の読み上げの後は、私が出した問答の回答用紙の採点をしましょう。
問題は全部で4問しかできなかったから、採点は早いわね。
まさか、あれ程までに不正解が続くとは思ってなかったから、10問用意した問題が6問も無駄になってしまって残念だわ。
そして1時間後、全員の集計が終わり平均点を出してみると、50点満点の問題で24点だった。
「信じられませんわ!」と貴族部の先輩が呆れて言うと、「俺でも31点は取れたのに」と、あまり勉強が好きではない貴族部1年の男子が声を上げ、皆に笑われています。
「サーシム領の平均点が19点とは、自領のことながら恥ずかしい」と、商学部2年の男子が項垂れると、「ワートン領だって19点ですわ」と、貴族部3年の先輩が溜息を吐いた。
「でも、最低点だったのは、デミル領と一般軍の合同班ですわ。
16点ってなんですの! 講師である私に対する挑戦かしら?
やる気以前の問題ですわね。
フフフフフ、これはもう、一番目立つ場所に解答用紙を張って差し上げるしかありませんわ」
少し前まで領主であるヘイズ侯爵様は、第一王子マロウ様を次期国王に推す最大派閥を束ねておられた。
だからヘイズ領やデミル領やワートン領の学生や教師は、高学院の中で好きなように振る舞えていた。
しかし今の学院長になってから、俺たちヘイズ侯爵派は、徐々に発言力を弱め自由が効かなくなった。
腹立たしいが、それもこれもマロウ王子が皇太子に決定するまでの我慢だと思っていた。
ところが、あの生意気な平民が入学してきてから、俺たちの行動や行いを批判する学生が増え、学院の規則が大きく変わってしまった。
少しばかり成績がいいからと、高位貴族である俺たちに対して礼をとることもせず、生意気な言動と振る舞いをした。
いつの間にか【麗しの三騎士】の保護下に収まり、デカい態度をとるようになった。
学院の裏を牛耳っていた魔法部3年のカルタス様(ヘイズ侯爵子息)と、貴族部3年のイスデン様(デミル公爵子息)が、身分差を教えてやれと命令されたので、ヘイズ侯爵派の学生数人で生意気なアコルに鉄槌を下すことにした。
痛い目に遭わせて、学院を追い出そうとしたら、逆に我々が停学処分になってしまった。
当然ヘイズ領の伯爵である父親は激怒し、二度と停学になるようなみっともない真似をするなと俺を叱咤した。
停学中に行われたクラス対抗戦では、生意気なアコルが活躍したと聞き、いつか復讐してやろうと停学になった仲間や、他のヘイズ侯爵派の学生と約束した。
だが、実はあの平民がSランクの冒険者だったことが判明し、アコルの攻撃魔法を見た学生全員が怖気付いた。
それでも俺は、アコルに復讐する機会をずっと狙っていた。
それが・・・それが覇王? 第七王子? 何だよそれ!
そして何だよあれは?
体育館に集まった大勢の前で、アコルが覇王だと名乗った途端、俺の体は地面に吸い寄せられたかのように倒れ伏し、頭も体も全く動かせなくなった。
確かにルフナ王子は、覇王様に悪意を抱けば瞬時に倒れ伏すと言っていたが、そんなことが起こるなんて信じられなかった。
もしも倒れ伏したら、覇王様に反意ありと知られてしまい、自分の家族に大きな影響を与える可能性があるとも言っていた。
もうお終いだ。絶対に不敬罪で殺される!
倒れ伏しても、学院長も覇王も罪に問わないと言ったが、自主退学や休学を勧めたということは、もしも残ったりしたら、次はないということだ。
あの恐怖体験を、これからもするなんて耐えられない。
思い出すと体が震え、恐怖で眠れなくなる。噂では【覇気】というものらしい。
親や家に迷惑を掛けないようにするためには、自主退学するしかない。
王立高学院じゃなくても、ヘイズ高学院に転学すればいいんだ。
そう決心して他のヘイズ侯爵派の学生に話したら、闇討ちを仕掛けた者は全員、自主退学して自領の高学院に転入すると言う。
首謀者であるイスデン先輩は、デミル領がドラゴンに襲われたから、自領が心配で休学すると届け出るらしい。
確かに領主の子息は王立高学院を卒業してないと、社交界に出られないだろう。
カルタス先輩は、今年もB級作業魔術師の資格が取れそうにないから、特務部卒業資格に切り替えて学院を卒業して出ていくようだ。
アコルに入学当初から嫌がらせをしたり、横柄な態度をとっていた学生で、倒れ伏した者の3割は自主退学をするらしい。
地方出身者は、殆どが子爵家以上の貴族だから、自領の高学院に無試験で転入できる。
恐怖で震えているのは、王都出身で領地を持たない貴族家の学生たちだ。
準男爵や騎士の家の学生は貧乏だから転学は難しい。
結局、休学届を出した学生は10人で、自主退学する学生は25人だった。
そして今日、俺は王立高学院を出ていく。
もう復讐しようとは思わない。
くだらない救済活動に付き合う必要はなくなったし、魔獣と戦えと強制されることもない。
俺は負けた訳じゃない。自由を選んだだけだ。
◇◇ 危機管理指導講座の採点 ◇◇
私は貴族部1年のカイヤ。兄はアコル様の従者になったボンテンク。
これから楽しい楽しい採点作業を、【王立高学院特別部隊】の貴族部や商学部の学生を中心に、図書館で一斉に始めるわ。
放課後アコル様から、マジックバッグを貸し出されるという発表があり、全員興奮状態でテンション高めだけど、やる気は満々みたい。
「皆さん、これから正解を読み上げます。
1枚目の採点をしたら、2枚目以降はそれに倣って採点してください。
そして、各領地・所属部署で集計し、合計点を受講人数で割って、平均点を出してください。
それが終わったら体育館に解答用紙を張り出しに行きまーす」
夕食も美味しかったし、思わず声が弾んでしまうわ。
正解の読み上げの後は、私が出した問答の回答用紙の採点をしましょう。
問題は全部で4問しかできなかったから、採点は早いわね。
まさか、あれ程までに不正解が続くとは思ってなかったから、10問用意した問題が6問も無駄になってしまって残念だわ。
そして1時間後、全員の集計が終わり平均点を出してみると、50点満点の問題で24点だった。
「信じられませんわ!」と貴族部の先輩が呆れて言うと、「俺でも31点は取れたのに」と、あまり勉強が好きではない貴族部1年の男子が声を上げ、皆に笑われています。
「サーシム領の平均点が19点とは、自領のことながら恥ずかしい」と、商学部2年の男子が項垂れると、「ワートン領だって19点ですわ」と、貴族部3年の先輩が溜息を吐いた。
「でも、最低点だったのは、デミル領と一般軍の合同班ですわ。
16点ってなんですの! 講師である私に対する挑戦かしら?
やる気以前の問題ですわね。
フフフフフ、これはもう、一番目立つ場所に解答用紙を張って差し上げるしかありませんわ」
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