キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん

文字の大きさ
上 下
239 / 709
指導者たち

133ー2 講座の開始(1)ー2

しおりを挟む
 さてと、予想以上に多かった【妖精学講座】受講希望者の、試験を開始しよう。

 今回、【妖精学講座】を受講したいと希望した貴族の数は313人だった。
 まあ学院の学生だって、光適性持ちが50人は居たのだから当然の数だとは思うが、集まったメンバーを見て笑いが出た。

 俺は申し込み要項に、妖精と契約する目的を【魔獣の大氾濫】で魔獣やドラゴンと戦うためだと明記しておいた。
 それなのに、明らかに戦うことなど出来そうにない文官やバカぼんが半数近くいた。

 それらは全て、自分が妖精と契約できる稀有な存在として、自領を発展させ大きな顔をするため、もしくは、自領の領主かそれに近い存在から、自領の利益のために妖精と契約してこいと命令された者たちだ。

「それでは、これから筆記試験を開始します」と、試験開始の宣言をしたのは、トーマス王子である。
 トーマス王子には、【妖精学講座】の目的を理解していない貴族たちの現状を、王族としてしっかり見てもらう。

 一週間後、トーマス王子に魔獣討伐の経験を積ませるため、ブラックカード三人衆の一人である赤のダイキリさん(剣士)と、ギルマスが推薦した王都支部所属のBランク冒険者パーティー4人と一緒に、龍山に行ってもらう。

 赤のダイキリさんには、報酬として古代魔法の一刀両断(縦斬り)を教える約束をして、護衛を引き受けてもらった。


 筆記試験の内容は、どれだけ魔獣と戦う気があるかを問うもので、得意な攻撃魔法、得意な武術、簡単な魔法陣の知識(C級魔術師程度)を答えさせる。
 引っ掛け問題として、妖精と契約できたら何をしたいか? という簡単な論述問題も入れておいた。

 筆記試験の後は、魔力量と適性検査をする。
 もちろん受講申込書には、魔力量や適性を記入させている。

 それならば何故、手間のかかる検査をするのか? 
 それは、適性や魔力量が増えている可能性があるので……という建て前を用いて、魔力量詐称や光適性が本当にあるかどうかを調べるためである。

 本音を言えば、光適性と命の適性の両方を持っている者が居たら、有無を言わせず医療コースに所属させたい。
 医療コースで薬草の知識を学ぶことは、後々本人にも領地にもプラスになる。

 全員がガンガン攻撃しても、ケガ人を治せる医師や薬師が居なければ、安心して魔獣と戦うことなど出来ない。
 ケガの程度によって、使う薬やポーションが違うことだけでも学んで欲しい。



 筆記試験の時間、俺はワイコリーム公爵、学院長、カルタック教授と一緒に、俺の執務室でお茶を飲んでいた。

「アコル様、魔法省の一部の人間と、ワートン公爵領の者は、妖精と契約できる知識だけを欲しているとの情報が入っています。
 他にも似たような動機で潜入している者はいるでしょう」

ワイコリーム公爵は、お気に入りの青の白磁のカップを手に持って、少し不機嫌そうな顔で報告する。

「予想の範囲内です。魔力量が50以下の者には、受講の許可を出す気はありまあせん。
 フッ、でも、合格した者には地獄の特訓が待っているので、受講できなかった方が幸せだったと思う人もいるでしょう」

俺はお気に入りのハーブティーを飲みながら、魔力測定に立ち会う学院長とカルタック教授に視線を向けにっこりと微笑んだ。

「お任せください。その場で私のオペラ君が合否を決定します」

学院長は魔力測定をしながら、実質的には妖精のオペラ君が合否判定をする予定だと、ニコニコしながら請け負ってくれた。
 なんだか楽しそうなので容赦しないつもりだろう。特に一般魔法省からの密偵には。 

「可愛いゴールドくんの前で、もしも光適性が無かった……なんて詐欺師が紛れ込んでいたら、その場で捕らえておきます。
 受験者には、魔力量検査をするとしか知らせておりません。

 検査をする新聞部の部室には、5人一組で入室させるので、適性検査を拒否したり、検査結果が間違いだと言い訳することは出来ないようにしてあります」

ムフフと黒く微笑みながら話すカルタック教授は、最近すっかり執行部の色に染まってきた。
 契約妖精ゴールド君の影響もあるのか、とても話し易い気さくな教授になってきた。

 やっぱりアイススネーク討伐を学生と共にした経験が、人間性を大きく変化させたのだと思う。



 *****

 昼食後、講義を受けに来た領主たちが挨拶にやってきた。
 メンバーは、ワイコリーム公爵、マギ公爵、マリード侯爵親子だ。

 入室して直ぐ全員が略式の礼をとった。俺は正式な式典や重要会議以外、学院内では正式な礼をとらなくてもよいと伝えてあった。
 誰も倒れたり尻もちをつかなくてよかったと、心底ホッとした。

「はじめましてマギ公爵、エイト君を従者にしてしまいましたが、よかったでしょうか?」

「もちろんです覇王様。
 サナへ領の救済から帰ったエイトは、妖精と契約していただけでなく、領主の子息として、領民のことを考えて行動できるよう成長しておりました。

 龍山でスノーウルフの変異種を倒すことが出来たのも、全て覇王様のご指導があったからだと聞きました。本当にありがとうございます」

 マギ公爵は、如何にも公爵ですって感じではなく、武人のような凛々しい体躯をしていた。
 少し緊張した感じで顔を上げたけど、直ぐに息子の成長を喜ぶ父親の顔になった。

 従者としての責任が果たせるよう精進させますと言い、よろしくお願いしますと再び丁寧に頭を下げた。
 俺は直感で、この人とは共に魔獣と戦える気がした。


「マリード侯爵、あれから体調は如何ですか?」
「はい、頂いた【天の恵み】で、すっかり快復いたしました覇王様」

 ノエル様の祖父マリード侯爵は、少し瘦せている感じはあるけれど、顔色は悪くない。
 魔法省の立て直しのため、俺が無理して王都に出てきてもらった。

 商業ギルドで【天の恵み・ハイポーション】を買って飲んだことは知っていたけど、まだ体調が万全ではないと聞いたので、自分が持っていた【天の恵み・中級ポーション】を、王都の屋敷に届けておいたのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...