キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん

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指導者たち

133ー1 講座の開始(1)ー1

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 2月10日、今日からマジックバッグを買った領地と王宮関係者に向けて、3つの講座が始まる。

 3つの講座全てを受ける者が大多数だったので、午前中に【妖精学講座】と【危機管理指導講座】を図書館で行い、午後から【魔法攻撃講座】を図書館と各演習場で行うことにした。

 図書館以外の教室は、学生が普通に使用するので使えない。 
 図書館だと各領地ごとのグループに分かれることが出来るので、都合がよかった。

 今日は【妖精学講座】の受講資格試験があるから、【危機管理指導講座】はお休みだけど、執行部メンバーの、ミレーヌ様、エリザーテさん、カイヤさんは前回同様、受付や試験の手伝いをしてくれる。

「どのような方々が受講されるのか、講義開始前に見ておきたいですわ」

「そうですわねミレーヌ様、いつも通りの淑女の仮面で探りを入れますわ」

「ミレーヌ様、エリザーテ先輩、試験問題の採点をするのが楽しみですわ」

【危機管理指導講座】の講師をする予定の三人が、ぜひ受付を手伝いたいと申し出てくれたので、俺は逆らわずお任せすることにした。
 図書館に試験説明に向かう三人は、ホホホ、フフフと笑いながら楽しそうだ。

 ……いつも頼りになるなあ。たまには美味しいケーキでもご馳走しよう。
 


 ちなみに、マジックバッグを買わなかったのは、ヘイズ侯爵(魔法省副大臣)とデミル公爵(軍務大臣)、そして軍だった。

 何故軍が買わなかったのかと言うと、年末に発生したデミル領とサナへ領のドラゴン襲撃で、領民救済をしなかったデミル公爵に対し、王様が救済金(金貨100枚)と必要経費(金貨50枚)を払わなかったからだ。

 払わなかった名目は、領民救済をしなかったことではなかった。

 軍の大隊と魔法師の派遣に関連した費用(備蓄食料・交通費・宿泊費・人件費等)が、救済金である金貨100と、必要経費(救済する者の交通費・食費等)として認めた金貨50枚を大きく超え、金貨340枚程度だと判断されたからである。

 よって、救済費用として使えるはずの金貨150枚を、超えて利用した分の金貨190枚を、即刻返還せよと財務大臣であるレイム公爵が命じる事態となった。

 しかしデミル公爵は、納得できないと言って、驚くことに軍の予算から勝手に補填した。

 そんなことがまかり通るのかと皆は驚いたが、デミル公爵は軍務大臣として立て替えたお金があったとか、救済訓練のために大隊を派遣したのだと言い逃れ、個人が支払うことを拒否した。

 まあデミル公爵からしたら、軍の兵士や魔法師をタダで利用し、その上で国から救済金と必要経費を受け取ろうと目論んでいたのだから、大損をしたと思ったことだろう。


 結果的には、国王や魔獣討伐関連の責任者となったワイコリーム公爵の許可なく、勝手に軍や魔法師を動かした責任を追及され、デミル公爵は軍務大臣から降格し副大臣となった。

 では誰が軍務大臣になったのかというと、副大臣であった王弟シーブルだった。

 今回のデミル領の救済活動に同行していた王弟シーブルを、何故大臣にしたのかというと、何かあれば責任者として責任を追及し、要職から引き摺り下ろすことができると、トーマス王子とサナへ侯爵が提案したからである。



 その後1月に決定した今年度予算で、軍の予算は2つに分けられた。
 ワイコリーム公爵が権限を持った【魔獣討伐専門部隊】に6割が振り分けられ、これまでの軍には4割の予算しか与えられなかった。

 新しい軍務大臣となった王弟シーブルは、マジックバッグは魔獣に襲われた時の救済品を用意するための物だから、一般軍には必要ないと言って買わなかった。

 それなら、王都が魔獣に襲われた時の救済品はどうするのかという議論になり、レイム公爵は「当然それは国防費から捻出します」と言って、ヘイズ侯爵派である国防大臣ワートン公爵の顔を見て微笑んだ。

 もちろん、ワイコリーム公爵は【魔獣討伐専門部隊】のために、割り振られた軍の予算からマジックバッグを購入している。


 今年からコルランドル軍は、【魔獣討伐専門部隊・軍部】と【一般軍】とに分かれ、【一般軍】は、魔獣以外の仕事を担当する。
 そして魔法省も、【魔獣討伐専門部隊・魔法部】と【一般魔法省】とに分かれ、予算も軍と同様に6割と4割に分割された。

 これに伴い、【一般軍】と【一般魔法省】は、これまでの軍本部の場所を、二つの部署で仲良く? 共有して使うことになった。
【魔獣討伐専門部隊】は、軍と魔法省の垣根なく、【魔獣討伐専門部隊本部】として、元の魔法省本部の場所を使用することになった。

【魔獣討伐専門部隊】に所属する軍人は、これから魔法攻撃や魔方陣攻撃を主として学ぶため、垣根など、もはや必要なかった。 

 
 魔法省に復帰した大臣であるマリード侯爵は、大臣として【魔獣討伐専門部隊・魔法部】と【一般魔法省】の両方の指揮を執るが、主に【魔獣討伐専門部隊・魔法部】の仕事をする。

 当然、救援に駆け付ける魔術師や魔法師が使用するからと、問答無用でマジックバッグの購入を決定し、多くの人材を3つの講座に参加させている。

 優秀な魔法師たちがヘイズ侯爵を見限り、【魔獣討伐専門部隊】に入ったことで、ヘイズ侯爵の魔法省内での立場は悪くなり、副大臣の地位のまま任された【一般魔法省】では、復帰したマリード侯爵にすり寄る職員が増えている。


 今回、レイム公爵派である、サナへ侯爵(トゥーリス先輩の家)・マギ公爵(エイト君・ミレーヌ様の家)・ワイコリーム公爵(ラリエス君の家)・マリード侯爵(ノエル様の家)・サーシム侯爵(3年シャルミンさんの家)・トーマス王子は、ヘイズ侯爵派を王宮の要職から一掃するため、予算を大幅に減額して力を奪う作戦に出た。

 マリード侯爵とサーシム侯爵はこれまで中立派だったが、今回正式にレイム公爵派……というか、次期国王をトーマス王子で推すと決めた。


 以上のことを学院長とワイコリーム公爵から聞いた俺は、相変わらずの派閥争いに特大の溜め息を吐きたかった。
 だが、これで前向きに魔獣の大氾濫に向けた体制が取れるのなら、口出しすべきではないと我慢した。

 マジックバッグを購入しなかったデミル領・ヘイズ領・一般軍については、【覇王便り】で情報を公開させてもらった。

 ……いや、当然だよね。俺はこれでも怒りを抑えているんだからさ。

【王立高学院特別部隊】は、マジックバッグを購入しなかった領地には救済活動に行かないことと、その理由を、【王立高学院特別部隊】は国からお金を貰っておらず、マジックバッグを販売したお金を活動費としているからだと明記しておいた。

 そして国王や大臣たちは、それらのことを承知しているという一文を、きちんと入れておいた。
 とても重要なことだから。うん。
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