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魔王と覇王
131ー2 対立する思考(2)ー2
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執行部会議の後、俺は麗しの三騎士とボンテンク先輩とスフレさんと一緒に、隣にある自分の執務室に移動する。
予想していた通り、俺の執務机の上には、たくさんの面会依頼の手紙が届いていた。
昨夜の内に、モンブラン商会のマルク人事部長が、【覇王便り】を上級地区を除いた王都中の掲示板に貼り出したはずだから、昼には覇王の存在が王都中に知れ渡っていただろう。
「アコル様、こちらは無視しても良いと思われる手紙で、こちらは領主を含む大臣からの面会依頼です。どの手紙も面会依頼と書かれていますので、捨ててもよろしいかと思います」
謁見依頼や手紙担当の秘書ベニエさんが、覇王様に対して面会と書いてくることが許し難いと言って怒っている。
「すみません、もしかして、マギ公爵家からも来てましたか?」と、エイト君が心配そうな顔をして、失礼が無かったかどうかをベニエさんに質問する。
「はい来てましたよ。マギ公爵家は謁見依頼ではなく、マジックバッグ購入依頼と、覇王講座に出席する名簿を提出されました」とベニエさんは笑って答えた。
エイト君は安堵したように息を吐き、手紙の内容を見てもいいかと俺に確認して、買う予定のマジックバッグが、金貨300枚の大が1枚と金貨200枚の小が1枚の、合計2枚だったことに驚きの声を上げていた。
……いや、俺も驚いた。まさか2枚も買う領主が居るとは思わなかった。
……でもまあ、マギ領は龍山用と領都用が必要かもしれない。もしかしたら、使用者の魔力量の問題もあるかも知れない。
「俺と姉貴が手紙でも脅しておいたから、兄さんが勉強会に来るみたいです。
あれ、【妖精学講座】に父親も参加するって書いてある・・・」
参加者名簿を見ながら、エイト君はう~んと唸る。
家族と学院内で顔を合わせるのは、とても恥ずかしいらしい。
「今のところ【妖精学講座】には、ワイコリーム公爵様、マリード侯爵様とご長男様、サナへ侯爵家のご次男様、ワートン公爵家のご長男様の参加依頼が届いております。
王族ですと、第二王子ログドル様(25歳)と、サーシム領に養子に行くことが決定している第四王子レイトル様(22歳)からも、参加依頼が届いています。
このお二人は、第一側室ユリアーナ様(サーシム領出身)がお産みになった王子です」
マジックバッグと講座受講の担当者であるシャルロットさんが、現時点で届いている申込書や依頼書の内容を教えてくれる。
「へーっ、ログドル兄上とレイトル兄上も参加されるのかぁ。
まあ、サーシム領はリドミウムの森があるし、ティー山脈もあるから、マギ領よりも危険かもしれない。
きっと叔父であるサーシム侯爵に頼まれたんだろうな。
あそこは、男の跡取りが居ないから。でも、あの二人は戦えるのかなぁ……」
ルフナ王子はあまり接点のない二人の兄のことを、他人事のように話す。
考えてみれば、第五王子であるリーマス王子なんて、王立高学院に来てからルフナ王子やトーマス王子とちゃんと話をしたって言ってたもんな。
同じ王宮に住んでいても、王子同士の交流なんて殆ど無かったようだし。
「シャルロットさん、妖精学講座については、受講するための試験を妖精が行うから、希望しても受講できるとは限らないと、念押しして通知を出しておいて」
「承知しましたアコル様。
あの……エイト様、私はマギ領のテイルズ男爵の長女で、王宮警備隊で働いている兄も私も、光適性を持っているのですが、王宮勤務の者や女性は受講できないのでしょうか?」
凄く申し訳なさそうにしながらシャルロットさんは、自分の出身領の領主の子息であるエイト君にお伺いを立てる。
「あれ、シャルロットさんって光適性持ちなんだ。
そういえば、軍と魔法省はワイコリーム公爵が推薦してくれるけど、王宮警備隊を忘れてたな。
シャルロットさんの魔力量はどのくらい?」
「はい、マギ領の高学院を卒業する時は60くらいでした。兄は王立高学院の魔法部を卒業していて、魔力量は75くらいでB級魔術師を持っています」
そういえばシャルロットさんの家は武闘派で、シャルロットさんも剣術が得意だった気がする。
「マギ領の貴族として参加するのは問題ないと思うけど、王宮警備隊も参加枠を作った方がいいと思いますアコル様」
「そうだなエイト。今から王宮に行って、王宮警備隊の隊長に……って、誰だっけ?」
俺は王宮のことに興味がないから、王宮警備隊のことは全然知らなかった。
「アコル様、王宮警備隊は、王様の叔父であるカシミール公爵様(56歳、領地なし)が、王宮警備の責任者として【王宮騎士団長】と名乗られています」
「王族かぁ……よし、領主に送った文章の内容で、王宮警備隊にも案内を頼む」
俺よりも王宮警備隊の事情に詳しいシャルロットさんに、急ぎで案内状を送ってもらうように頼んだ。
王宮警備隊は悪い噂を一切聞かないので、【王宮騎士団長】には会ってみたい気がする。
◇◇ ブラックカード三人衆 ハーキム ◇◇
今朝、顔を覗けたギルドの掲示板で、信じられない貼り紙を見た。
あの生意気な小僧が、今代の覇王だと書いてある。
だからギルマスが最強のブラックカード持ちだと言ったのか?
確かに天使のように光り輝く妖精さまと契約していたが、だからって最強とは限らないだろう!
あれから俺たちは王都中の鍛冶職人の工房を訪ね、ミスリル含有の剣を金貨25枚で2本買った。槍は無かったので注文した。
どうしても早く妖精と契約したいとごねる最強魔法師ギレムット(34歳)が、今週末が締め切りの、王立高学院で行われる【妖精学講座】に申し込みたいと言うから、もう1本のミスリルの剣は、高級品ばかりを扱っている質屋で見付けた。
なんでも元は王族が所有していた訳アリの剣で、130年以上買い手がつかなかったらしい。
まあ、値段も信じられないくらいに高いし、鞘に宝石などの飾りが一切付いてないから見た目も地味だ。買い手がつかなかったのも分かる。
ミスリルの含有量が8割だと言うから、確かに国宝級だと思う。
値切って値切って金貨50枚(500万)だった。あの生意気な小僧に払えるのかどうか心配だが、これだけの品質の剣だ、文句は言わせない。
さて、今日こそ高学院に乗り込んで、ブラックカード持ちの真の実力者が誰なのかをはっきりさせよう。
相手が覇王であろうと構わない。俺が勝つ!
予想していた通り、俺の執務机の上には、たくさんの面会依頼の手紙が届いていた。
昨夜の内に、モンブラン商会のマルク人事部長が、【覇王便り】を上級地区を除いた王都中の掲示板に貼り出したはずだから、昼には覇王の存在が王都中に知れ渡っていただろう。
「アコル様、こちらは無視しても良いと思われる手紙で、こちらは領主を含む大臣からの面会依頼です。どの手紙も面会依頼と書かれていますので、捨ててもよろしいかと思います」
謁見依頼や手紙担当の秘書ベニエさんが、覇王様に対して面会と書いてくることが許し難いと言って怒っている。
「すみません、もしかして、マギ公爵家からも来てましたか?」と、エイト君が心配そうな顔をして、失礼が無かったかどうかをベニエさんに質問する。
「はい来てましたよ。マギ公爵家は謁見依頼ではなく、マジックバッグ購入依頼と、覇王講座に出席する名簿を提出されました」とベニエさんは笑って答えた。
エイト君は安堵したように息を吐き、手紙の内容を見てもいいかと俺に確認して、買う予定のマジックバッグが、金貨300枚の大が1枚と金貨200枚の小が1枚の、合計2枚だったことに驚きの声を上げていた。
……いや、俺も驚いた。まさか2枚も買う領主が居るとは思わなかった。
……でもまあ、マギ領は龍山用と領都用が必要かもしれない。もしかしたら、使用者の魔力量の問題もあるかも知れない。
「俺と姉貴が手紙でも脅しておいたから、兄さんが勉強会に来るみたいです。
あれ、【妖精学講座】に父親も参加するって書いてある・・・」
参加者名簿を見ながら、エイト君はう~んと唸る。
家族と学院内で顔を合わせるのは、とても恥ずかしいらしい。
「今のところ【妖精学講座】には、ワイコリーム公爵様、マリード侯爵様とご長男様、サナへ侯爵家のご次男様、ワートン公爵家のご長男様の参加依頼が届いております。
王族ですと、第二王子ログドル様(25歳)と、サーシム領に養子に行くことが決定している第四王子レイトル様(22歳)からも、参加依頼が届いています。
このお二人は、第一側室ユリアーナ様(サーシム領出身)がお産みになった王子です」
マジックバッグと講座受講の担当者であるシャルロットさんが、現時点で届いている申込書や依頼書の内容を教えてくれる。
「へーっ、ログドル兄上とレイトル兄上も参加されるのかぁ。
まあ、サーシム領はリドミウムの森があるし、ティー山脈もあるから、マギ領よりも危険かもしれない。
きっと叔父であるサーシム侯爵に頼まれたんだろうな。
あそこは、男の跡取りが居ないから。でも、あの二人は戦えるのかなぁ……」
ルフナ王子はあまり接点のない二人の兄のことを、他人事のように話す。
考えてみれば、第五王子であるリーマス王子なんて、王立高学院に来てからルフナ王子やトーマス王子とちゃんと話をしたって言ってたもんな。
同じ王宮に住んでいても、王子同士の交流なんて殆ど無かったようだし。
「シャルロットさん、妖精学講座については、受講するための試験を妖精が行うから、希望しても受講できるとは限らないと、念押しして通知を出しておいて」
「承知しましたアコル様。
あの……エイト様、私はマギ領のテイルズ男爵の長女で、王宮警備隊で働いている兄も私も、光適性を持っているのですが、王宮勤務の者や女性は受講できないのでしょうか?」
凄く申し訳なさそうにしながらシャルロットさんは、自分の出身領の領主の子息であるエイト君にお伺いを立てる。
「あれ、シャルロットさんって光適性持ちなんだ。
そういえば、軍と魔法省はワイコリーム公爵が推薦してくれるけど、王宮警備隊を忘れてたな。
シャルロットさんの魔力量はどのくらい?」
「はい、マギ領の高学院を卒業する時は60くらいでした。兄は王立高学院の魔法部を卒業していて、魔力量は75くらいでB級魔術師を持っています」
そういえばシャルロットさんの家は武闘派で、シャルロットさんも剣術が得意だった気がする。
「マギ領の貴族として参加するのは問題ないと思うけど、王宮警備隊も参加枠を作った方がいいと思いますアコル様」
「そうだなエイト。今から王宮に行って、王宮警備隊の隊長に……って、誰だっけ?」
俺は王宮のことに興味がないから、王宮警備隊のことは全然知らなかった。
「アコル様、王宮警備隊は、王様の叔父であるカシミール公爵様(56歳、領地なし)が、王宮警備の責任者として【王宮騎士団長】と名乗られています」
「王族かぁ……よし、領主に送った文章の内容で、王宮警備隊にも案内を頼む」
俺よりも王宮警備隊の事情に詳しいシャルロットさんに、急ぎで案内状を送ってもらうように頼んだ。
王宮警備隊は悪い噂を一切聞かないので、【王宮騎士団長】には会ってみたい気がする。
◇◇ ブラックカード三人衆 ハーキム ◇◇
今朝、顔を覗けたギルドの掲示板で、信じられない貼り紙を見た。
あの生意気な小僧が、今代の覇王だと書いてある。
だからギルマスが最強のブラックカード持ちだと言ったのか?
確かに天使のように光り輝く妖精さまと契約していたが、だからって最強とは限らないだろう!
あれから俺たちは王都中の鍛冶職人の工房を訪ね、ミスリル含有の剣を金貨25枚で2本買った。槍は無かったので注文した。
どうしても早く妖精と契約したいとごねる最強魔法師ギレムット(34歳)が、今週末が締め切りの、王立高学院で行われる【妖精学講座】に申し込みたいと言うから、もう1本のミスリルの剣は、高級品ばかりを扱っている質屋で見付けた。
なんでも元は王族が所有していた訳アリの剣で、130年以上買い手がつかなかったらしい。
まあ、値段も信じられないくらいに高いし、鞘に宝石などの飾りが一切付いてないから見た目も地味だ。買い手がつかなかったのも分かる。
ミスリルの含有量が8割だと言うから、確かに国宝級だと思う。
値切って値切って金貨50枚(500万)だった。あの生意気な小僧に払えるのかどうか心配だが、これだけの品質の剣だ、文句は言わせない。
さて、今日こそ高学院に乗り込んで、ブラックカード持ちの真の実力者が誰なのかをはっきりさせよう。
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