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商人魔王
99ー2 ようこそ王都へー2
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そして古着屋へ行った俺たちは、全員でココア村の被災者用の古着を選んでいく。
例え古着でも買い物するのは楽しいみたいで、ミレッテさんもシルクーネ先輩もエリザーテさんも楽しそうだ。
ゲイルが選んだちょっとお高い男性用のコート5着は、ギルマスが顔を引きつらせながら払ってくれた。
金貨8枚分の古着を買って、残りの金貨7枚で新品の下着や靴下、毛布や敷布団を買った。
もちろん、俺は自分のお金でエデリアちゃんとミゲール君の服やコートを買って、直ぐに着替えさせた。
子供がスノーウルフの毛皮のポンチョなんて着ていたら、襲われて盗まれる危険がある。
「それにしてもアコルって、本当に商人なんだな」と、商業ギルドでのやり取りを見ていたラノーブが、感心したように言う。
「しかも凄く怖い商人な!」とボンテンク先輩が付け加える。
「アコル君の怖さは正義のためだからいいのよ」とシルクーネ先輩。
「ブラックカードとレッドカード……子爵家の我が家よりアコル君はお金持ちだと思うわ」と、250枚の金貨を出した俺を見ていたエリザーテさんが溜息を吐く。
モカの町を出発し、ふかふかのビッグシープの毛皮を敷いた荷馬車の中で、皆は好き勝手なことを言っている。
しかも俺に御者をさせて、特別サービスで出した母さん特製のクッキーを食べながらだ。
まあ、エデリアちゃんとミゲール君が嬉しそうに食べているから許そう。
日暮れ前に、なんとかココア村の被災者が避難しているベルト村に到着した。
再びやって来た荷馬車に、ココア村の人もベルト村の人も大歓迎してくれた。
この前渡した支援物資の食料は、ほぼ底をついていたけど、近隣の村から食料を買って細々と生活していた。
思っていた通り、渡したお金は出来るだけ使わないようにしていたのか、服装は悲惨なままだった。
初めてココア村の被災者たちを見たシルクーネ先輩やエリザーテさんは、とてもショックを受けていたけど、早速モカの町で買った古着や下着や布団を配って、ココア村の人に泣きながら感謝されていた。
ココア村の村長の息子さんに、現在のココア村の様子を伝えて、ココア村に帰るとしたら1週間より後の方がいいと教えておいた。
「今夜は全員でバーベキューをしましょう。先日ビッグボアを狩ったので、手の空いている人は捌くのを手伝ってください」
俺はマジックバックから、エイト君が仕留めたビッグボアと、ラリエス君が狩った角ウサギを出してお願いする。
集まっていた二つの村人から大歓声が上がり、大人たちはこぞって解体を手伝ってくれる。
ビッグボアは高級肉なので、狩ったとしても売られるから、村人の口に入ることは稀だろう。
解体した毛皮は、ココア村の人たちで現金にして構わないと伝えた。
翌朝、モカの町の西地区で大量に焼いておいた座布団パンを差し入れ、残っていた最後のスノーウルフの肉を渡し、頑張ってねと伝えて俺たちは旅立った。
どの顔も嬉しそうで、また寄ることが出来て良かったと心から思った。
その場しのぎの救済だったとしても、俺たち【王立高学院特別部隊】にできることはここまでだ。
皆でそう言いながら、気持ちを切り替えていく。
昼過ぎにはミレッテさんの故郷であるミルクナの町に到着した。
避難していた住民が戻っていて、町には活気が溢れていた。
初めてミルクナの町に来たメンバーを、ミレッテさんが案内することになり(スノーウルフと戦った場所を中心に)、1時間だけ滞在する。
俺とゲイルは冒険者ギルドに顔を出し、その後の様子を訊くことにした。
「ドラゴンも魔獣も、あれから姿を見せない。地下室が出来たから昨日避難訓練をしてみたよ」
ミルクナの町のギルマスは、俺とゲイルを大歓迎してくれた。
執務室でお茶までご馳走になり、被害がなかったと聞き安心した。
俺はモカの町やココア村を襲ったドラゴンが、火を噴く金色の変異種であり、今のところ人を食べようとはしていなかったと情報を教えた。
「どうやらミルクナの町の上空を飛んでいたドラゴンと、金色のドラゴンはタイプが違う可能性が高いと思います。
2種類のドラゴンが春までにもっと繁殖するとしたら・・・と考えると頭が痛いです」
「それは考えたくない最悪の状況だな・・・」
俺の話を聞いたギルマスが、深い息を吐き頭を抱える。
ついでにデミル領の情報も伝えると「信じられない。身分で領民を見捨てたのか!」と、ショックを受けながら怒っていた。
「ギルマス、俺はこれから、今後の【王立高学院特別部隊】の活動の一環として、ミルクナの町の取り組みを手本にしようと考えています。
この町のように、領主や代官やギルドが、住民と団結して避難訓練をしたり避難準備をしている町はないと思います。
最高のモデルケースとして、王様にも上奏するつもりです」
「そうだなアコル。モカの町……というかサナへ領は何も対策をしていなかった。この町は凄いと思う」
ゲイルも俺の意見に賛同しながら、この町の素晴らしさを実感したと言う。
「それは嬉しい話だ。代官や領主にも伝えておくよ。他にも有効な対策があったら情報を回してくれ」
ギルマスは嬉しそうに、これからも準備や対策を怠らないよう努力すると笑った。
ミレッテさんに町を案内してもらったエデリアちゃんとミゲール君は、お菓子を買ってもらったようで、子供らしくはしゃいでいる。
今は笑っているけど、保護してから今日まで、夜になるとミゲール君はお母さんとお父さんに会いたいと言って泣きだすから、お姉ちゃんのエデリアちゃんは困った顔をして、泣いているミゲール君を抱きしめている。
自分だって寂しくて泣きたいだろうにと思うと、胸が詰まってしまう。
ミレッテさんに「またな!」と手を振って、残ったメンバーで王都を目指す。
「うわー! お姉ちゃん見て、大きな建物がいっぱいだ」と、荷馬車の中から近付いてきた王都を見て、ミゲール君が興奮しながらエデリアちゃんの服を引っ張る。
「本当だ。凄いねミゲール!」って、夕日に照らされた王都を見て、エデリアちゃんも嬉しそうに声をあげた。
「「ようこそ王都へ」」と、俺とボンテンク先輩の声が揃った。
例え古着でも買い物するのは楽しいみたいで、ミレッテさんもシルクーネ先輩もエリザーテさんも楽しそうだ。
ゲイルが選んだちょっとお高い男性用のコート5着は、ギルマスが顔を引きつらせながら払ってくれた。
金貨8枚分の古着を買って、残りの金貨7枚で新品の下着や靴下、毛布や敷布団を買った。
もちろん、俺は自分のお金でエデリアちゃんとミゲール君の服やコートを買って、直ぐに着替えさせた。
子供がスノーウルフの毛皮のポンチョなんて着ていたら、襲われて盗まれる危険がある。
「それにしてもアコルって、本当に商人なんだな」と、商業ギルドでのやり取りを見ていたラノーブが、感心したように言う。
「しかも凄く怖い商人な!」とボンテンク先輩が付け加える。
「アコル君の怖さは正義のためだからいいのよ」とシルクーネ先輩。
「ブラックカードとレッドカード……子爵家の我が家よりアコル君はお金持ちだと思うわ」と、250枚の金貨を出した俺を見ていたエリザーテさんが溜息を吐く。
モカの町を出発し、ふかふかのビッグシープの毛皮を敷いた荷馬車の中で、皆は好き勝手なことを言っている。
しかも俺に御者をさせて、特別サービスで出した母さん特製のクッキーを食べながらだ。
まあ、エデリアちゃんとミゲール君が嬉しそうに食べているから許そう。
日暮れ前に、なんとかココア村の被災者が避難しているベルト村に到着した。
再びやって来た荷馬車に、ココア村の人もベルト村の人も大歓迎してくれた。
この前渡した支援物資の食料は、ほぼ底をついていたけど、近隣の村から食料を買って細々と生活していた。
思っていた通り、渡したお金は出来るだけ使わないようにしていたのか、服装は悲惨なままだった。
初めてココア村の被災者たちを見たシルクーネ先輩やエリザーテさんは、とてもショックを受けていたけど、早速モカの町で買った古着や下着や布団を配って、ココア村の人に泣きながら感謝されていた。
ココア村の村長の息子さんに、現在のココア村の様子を伝えて、ココア村に帰るとしたら1週間より後の方がいいと教えておいた。
「今夜は全員でバーベキューをしましょう。先日ビッグボアを狩ったので、手の空いている人は捌くのを手伝ってください」
俺はマジックバックから、エイト君が仕留めたビッグボアと、ラリエス君が狩った角ウサギを出してお願いする。
集まっていた二つの村人から大歓声が上がり、大人たちはこぞって解体を手伝ってくれる。
ビッグボアは高級肉なので、狩ったとしても売られるから、村人の口に入ることは稀だろう。
解体した毛皮は、ココア村の人たちで現金にして構わないと伝えた。
翌朝、モカの町の西地区で大量に焼いておいた座布団パンを差し入れ、残っていた最後のスノーウルフの肉を渡し、頑張ってねと伝えて俺たちは旅立った。
どの顔も嬉しそうで、また寄ることが出来て良かったと心から思った。
その場しのぎの救済だったとしても、俺たち【王立高学院特別部隊】にできることはここまでだ。
皆でそう言いながら、気持ちを切り替えていく。
昼過ぎにはミレッテさんの故郷であるミルクナの町に到着した。
避難していた住民が戻っていて、町には活気が溢れていた。
初めてミルクナの町に来たメンバーを、ミレッテさんが案内することになり(スノーウルフと戦った場所を中心に)、1時間だけ滞在する。
俺とゲイルは冒険者ギルドに顔を出し、その後の様子を訊くことにした。
「ドラゴンも魔獣も、あれから姿を見せない。地下室が出来たから昨日避難訓練をしてみたよ」
ミルクナの町のギルマスは、俺とゲイルを大歓迎してくれた。
執務室でお茶までご馳走になり、被害がなかったと聞き安心した。
俺はモカの町やココア村を襲ったドラゴンが、火を噴く金色の変異種であり、今のところ人を食べようとはしていなかったと情報を教えた。
「どうやらミルクナの町の上空を飛んでいたドラゴンと、金色のドラゴンはタイプが違う可能性が高いと思います。
2種類のドラゴンが春までにもっと繁殖するとしたら・・・と考えると頭が痛いです」
「それは考えたくない最悪の状況だな・・・」
俺の話を聞いたギルマスが、深い息を吐き頭を抱える。
ついでにデミル領の情報も伝えると「信じられない。身分で領民を見捨てたのか!」と、ショックを受けながら怒っていた。
「ギルマス、俺はこれから、今後の【王立高学院特別部隊】の活動の一環として、ミルクナの町の取り組みを手本にしようと考えています。
この町のように、領主や代官やギルドが、住民と団結して避難訓練をしたり避難準備をしている町はないと思います。
最高のモデルケースとして、王様にも上奏するつもりです」
「そうだなアコル。モカの町……というかサナへ領は何も対策をしていなかった。この町は凄いと思う」
ゲイルも俺の意見に賛同しながら、この町の素晴らしさを実感したと言う。
「それは嬉しい話だ。代官や領主にも伝えておくよ。他にも有効な対策があったら情報を回してくれ」
ギルマスは嬉しそうに、これからも準備や対策を怠らないよう努力すると笑った。
ミレッテさんに町を案内してもらったエデリアちゃんとミゲール君は、お菓子を買ってもらったようで、子供らしくはしゃいでいる。
今は笑っているけど、保護してから今日まで、夜になるとミゲール君はお母さんとお父さんに会いたいと言って泣きだすから、お姉ちゃんのエデリアちゃんは困った顔をして、泣いているミゲール君を抱きしめている。
自分だって寂しくて泣きたいだろうにと思うと、胸が詰まってしまう。
ミレッテさんに「またな!」と手を振って、残ったメンバーで王都を目指す。
「うわー! お姉ちゃん見て、大きな建物がいっぱいだ」と、荷馬車の中から近付いてきた王都を見て、ミゲール君が興奮しながらエデリアちゃんの服を引っ張る。
「本当だ。凄いねミゲール!」って、夕日に照らされた王都を見て、エデリアちゃんも嬉しそうに声をあげた。
「「ようこそ王都へ」」と、俺とボンテンク先輩の声が揃った。
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