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魔王の改革
70ー1 不正疑惑ー1
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リーダー対決戦の二日後、クラス対抗戦の結果が掲示板に張り出された。
高学院の改革が開始されて初めての定期試験は、これまでのように上位成績者10人だけが貼りだされるのではなく、全科目全員の得点が全て公開され、最高点から最低点取得者まで一目瞭然となった。
それだけではなく今回から変わったのが、平均点の半分以下の得点を欠点とし、欠点を取った学生の名前の下に朱色の線が引かれていたことである。
しかも、欠点が3教科以上あった学生は親に通知が届けられ、長期休暇が短縮されることになった。
学院長の完全実力主義は、緩んでいた一部の学生たちに大きな恐怖を与え、同時に担任教授にも優劣がつけられることになった。
これまでと違って、下位の成績者は自分が無能であると知られてしまい、誰がクラスの平均点を下げたのか分かるので、身分で大きな顔をしていた学生が、皆から白い目で見られることになってしまった。
「凄いですねルフナ王子。全ての教科で平均点以上です」
「うん、アコルのお陰だよ。でも、高得点には手が届かないよエイト」
「まさに奇跡ですねルフナ王子。おっ、やった! アコルにひと科目だけ勝ってる」
「いや、でもアコルはその魔法部の科目の授業は受けてないよなラリエス」
「エイト、親友として、そこは黙っておいてやれよ」
【麗しの三騎士】は、掲示板の前でルフナ王子が欠点にならなくて良かったと喜んでいたが、後ろから聞こえてきた不穏な声に気付き表情を曇らせた。
「無能な学生のせいで、この私を不当に評価して貶めるとは、学院長でも許せない。平民ごときが評価されるなどあってはならない。生意気な平民め!」
1年A組の担任であり貴族部のリベルノ教授(数学)は、目の前にルフナ王子がいると分かっていて呟いたのか、それとも知らずに呟いたのか、どちらにしても容認はできないと【麗しの三騎士】は頷き合った。
学院改革を、理解していたようで出来ていなかったのは担任教授たちだった。
学生たちの成績表の隣に、全学年、全9クラスのクラス対抗戦三種目の其々の得点と、三種目合計得点による順位表が貼り出されていたのだ。
クラス対抗戦の一種目である、定期試験のクラス順位表の一番上に書かれた教授の名前は、1年D組のパドロール教授(特務部)で、2位をぶっちぎっての1位だった。
1年D組は、アコルが受けた20科目中18科目で最高点を取り、魔法部の科目でラリエス君が最高点を取っていたので、合計19科目で最高点を獲得していた。
全学年で行われた試験科目数は約65科目で、ちなみに2位のクラスの最高得点取得数は5科目だった。
高得点を多く取得したためクラスの平均点を大きく上げ、最低点を取った学生もいたが、結果的に1年D組がトップとなった。
そして不正がないよう、上位10番までの学生の答案用紙はそのまま貼り出されていた。
クラス対抗戦の他の結果はというと、魔力量の増加対決は1位・2年A組、2位・1年C組、3位・1年D組だった。
やはり魔法部の伸びが良かったが、今年の1年には王子が在籍している。だから良いところを見せようと同期生は頑張った。
それと【麗しの三騎士】が女子学生の魔法の練習を指導したこともあり、1年の頑張りが目立つ結果になった。
そしてリーダー対決戦は、言うまでもなくトップは1年D組で、2位は3年A組、3位は2年B組だった。
全ての結果から、クラス対抗戦で勝利したのは1年D組となった。
総評として、3年生は、魔法部の頑張りは大きかったのだが、貴族部の男子が定期試験と魔力量増加で、貴族部の女子も魔力量増加で足を引っ張った。
2年生は、貴族部の男子と特務部の学生が定期試験で足を引っ張り、魔力量増加では貴族部の男子が足を引っ張った。
「がっかりですわねエリザーテ。これでは、執行部に入りたいと仰っていた方々の入部は難しいですわ」
「ええノエル様。救済活動ではあれだけ頑張ってくださったのに・・・」
「自分よりも弱い殿方というのはどうなのかしら?」
「まあチェルシー、まだ12月になったばかりでしてよ。皆さんこれからですわ。次のクラス対抗戦の1月を楽しみに、執行部のお仕事を頑張りましょう」
「「はい、ノエル様」」
掲示板の前で、いつものように新聞部の皆さんの小芝居が始まる。
それはそれは悲しそうに、学院ナンバーワン美少女で、学院筆頭の演技力を誇るエリザーテさんは、ゆっくりと胸を押さえて息を吐く。残念そうな表情も美しい。
ノエル様とチェルシーさんは、優しいのか容赦ないのか、絶妙な表現力で貴族部の男子を落としにかかる。
俺の応援隊の皆さんは、本当に頼もしいし、とても優秀だった。
貴族部男子の半数は、完全に無能を晒した形になり、貴族部女子から冷たい目で見られている。
貴族部1・2年の女子は、救済活動で新聞部のチェルシーさんが魔獣を倒したことに触発されて、魔法の練習を始めたので、魔力量増加でとても貢献していた。
商学部に限って言うと、欠点を取るような学生は……ほぼいない。
大多数が勤勉であり、就職することを前提に入学しているので、余程の貴族のボンボンを除いて努力している。
しかも今年の1年は、アコルが何気に喧嘩を売っていたので、平民に負けるものかと魔力量増加も頑張っていた。
気落ちが激しいのは特務部である。
クラス編成が大きく変わったので、女子と同じクラスで過ごすことが増え、体力自慢や魔獣退治自慢をして女子にアピールしていたのに、定期試験の順位張り出しでメンツが潰れ、リーダー対決戦でも【麗しの三騎士】の大技を見せられ自慢の鼻をへし折られてしまった。
高学院の改革が開始されて初めての定期試験は、これまでのように上位成績者10人だけが貼りだされるのではなく、全科目全員の得点が全て公開され、最高点から最低点取得者まで一目瞭然となった。
それだけではなく今回から変わったのが、平均点の半分以下の得点を欠点とし、欠点を取った学生の名前の下に朱色の線が引かれていたことである。
しかも、欠点が3教科以上あった学生は親に通知が届けられ、長期休暇が短縮されることになった。
学院長の完全実力主義は、緩んでいた一部の学生たちに大きな恐怖を与え、同時に担任教授にも優劣がつけられることになった。
これまでと違って、下位の成績者は自分が無能であると知られてしまい、誰がクラスの平均点を下げたのか分かるので、身分で大きな顔をしていた学生が、皆から白い目で見られることになってしまった。
「凄いですねルフナ王子。全ての教科で平均点以上です」
「うん、アコルのお陰だよ。でも、高得点には手が届かないよエイト」
「まさに奇跡ですねルフナ王子。おっ、やった! アコルにひと科目だけ勝ってる」
「いや、でもアコルはその魔法部の科目の授業は受けてないよなラリエス」
「エイト、親友として、そこは黙っておいてやれよ」
【麗しの三騎士】は、掲示板の前でルフナ王子が欠点にならなくて良かったと喜んでいたが、後ろから聞こえてきた不穏な声に気付き表情を曇らせた。
「無能な学生のせいで、この私を不当に評価して貶めるとは、学院長でも許せない。平民ごときが評価されるなどあってはならない。生意気な平民め!」
1年A組の担任であり貴族部のリベルノ教授(数学)は、目の前にルフナ王子がいると分かっていて呟いたのか、それとも知らずに呟いたのか、どちらにしても容認はできないと【麗しの三騎士】は頷き合った。
学院改革を、理解していたようで出来ていなかったのは担任教授たちだった。
学生たちの成績表の隣に、全学年、全9クラスのクラス対抗戦三種目の其々の得点と、三種目合計得点による順位表が貼り出されていたのだ。
クラス対抗戦の一種目である、定期試験のクラス順位表の一番上に書かれた教授の名前は、1年D組のパドロール教授(特務部)で、2位をぶっちぎっての1位だった。
1年D組は、アコルが受けた20科目中18科目で最高点を取り、魔法部の科目でラリエス君が最高点を取っていたので、合計19科目で最高点を獲得していた。
全学年で行われた試験科目数は約65科目で、ちなみに2位のクラスの最高得点取得数は5科目だった。
高得点を多く取得したためクラスの平均点を大きく上げ、最低点を取った学生もいたが、結果的に1年D組がトップとなった。
そして不正がないよう、上位10番までの学生の答案用紙はそのまま貼り出されていた。
クラス対抗戦の他の結果はというと、魔力量の増加対決は1位・2年A組、2位・1年C組、3位・1年D組だった。
やはり魔法部の伸びが良かったが、今年の1年には王子が在籍している。だから良いところを見せようと同期生は頑張った。
それと【麗しの三騎士】が女子学生の魔法の練習を指導したこともあり、1年の頑張りが目立つ結果になった。
そしてリーダー対決戦は、言うまでもなくトップは1年D組で、2位は3年A組、3位は2年B組だった。
全ての結果から、クラス対抗戦で勝利したのは1年D組となった。
総評として、3年生は、魔法部の頑張りは大きかったのだが、貴族部の男子が定期試験と魔力量増加で、貴族部の女子も魔力量増加で足を引っ張った。
2年生は、貴族部の男子と特務部の学生が定期試験で足を引っ張り、魔力量増加では貴族部の男子が足を引っ張った。
「がっかりですわねエリザーテ。これでは、執行部に入りたいと仰っていた方々の入部は難しいですわ」
「ええノエル様。救済活動ではあれだけ頑張ってくださったのに・・・」
「自分よりも弱い殿方というのはどうなのかしら?」
「まあチェルシー、まだ12月になったばかりでしてよ。皆さんこれからですわ。次のクラス対抗戦の1月を楽しみに、執行部のお仕事を頑張りましょう」
「「はい、ノエル様」」
掲示板の前で、いつものように新聞部の皆さんの小芝居が始まる。
それはそれは悲しそうに、学院ナンバーワン美少女で、学院筆頭の演技力を誇るエリザーテさんは、ゆっくりと胸を押さえて息を吐く。残念そうな表情も美しい。
ノエル様とチェルシーさんは、優しいのか容赦ないのか、絶妙な表現力で貴族部の男子を落としにかかる。
俺の応援隊の皆さんは、本当に頼もしいし、とても優秀だった。
貴族部男子の半数は、完全に無能を晒した形になり、貴族部女子から冷たい目で見られている。
貴族部1・2年の女子は、救済活動で新聞部のチェルシーさんが魔獣を倒したことに触発されて、魔法の練習を始めたので、魔力量増加でとても貢献していた。
商学部に限って言うと、欠点を取るような学生は……ほぼいない。
大多数が勤勉であり、就職することを前提に入学しているので、余程の貴族のボンボンを除いて努力している。
しかも今年の1年は、アコルが何気に喧嘩を売っていたので、平民に負けるものかと魔力量増加も頑張っていた。
気落ちが激しいのは特務部である。
クラス編成が大きく変わったので、女子と同じクラスで過ごすことが増え、体力自慢や魔獣退治自慢をして女子にアピールしていたのに、定期試験の順位張り出しでメンツが潰れ、リーダー対決戦でも【麗しの三騎士】の大技を見せられ自慢の鼻をへし折られてしまった。
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