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高学院 1年生

67ー2 クラス対抗戦(2)ー2

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 リーダー対決戦では三つの競技種目がある。

① 3つの的に正確に当てる競技 (代表者の3人が出場)

② 7つの的を全て破壊する時間を争う競技 (代表者2人が出場)

③ 大きな的(土魔法で作られる予定)を破壊する時間を争う競技 (1人~5人が出場)

 決まりとして、選手五人は必ず①か②のどちらかに出場しなければならない。

 勝手にリーダーのように振る舞うホルヘン君が、自信満々に自分とラリエス君が②の競技に出場すると決めつけたので、ミレッテさんが文句を言い、パドロール教授が審判をすることになった。

 俺は、①の的当て競技で構わないので遠慮しておいた。
 結局②の7つの的を破壊する時間を争う競技には、ラリエス君とミレッテさんが出場することになった。パドロール教授の決定だから誰も文句は言えない。

 ホルヘン君は、今日は調子が悪かっただけだと、練習が終わるまでブツブツ文句を言っていた。

 俺は最近冒険者ランクが上がったことをパドロール教授に告げ、3つの的に風魔法であるエアーカッターをきっちり命中させておいた。
 風魔法は目に見え難いから、火や水のように派手じゃない。

 俺としたらどれでもいいけど、目立ちたくないから問題ない。
 ホルヘン君は、俺をDランクの冒険者だと思っていたので、ランクが上がったという報告に嫌な顔をした。




 大会四日目、全学生が魔力量検査と適性検査を受ける。

「やった5上がった!」という喜びの声に、凄いと歓声が上がる。
 前回の測定は入学式の前だったので、僅か二ヶ月で【5】という数字は珍しいことだった。が、しかし、続々と【5】に近い数字をたたき出す者が現れる。

 これまでの高学院の常識では、1年間に【5】伸びるのが平均的だったので、学生だけではなく教授たちも驚きの表情をしている。

「やはり、救済活動で実践的に魔法を使ったことや、クラス対抗戦出場に向け努力した結果でしょう。学院長の改革の成果です」

測定器の前で、マキアート教授がトーマス王子に嬉しい結果の推測を述べている。

「ああ、この結果には王様もお喜びになるだろう」

トーマス王子が大きな声でそう言うと、学生たちが誇らしそうに笑顔になった。

 今年から新たに加わった必須教科の5科目の影響もあったのだろう。これまでの常識では考えられなかったことだが、適性が増えている学生まで居た。

 マキアート教授が驚いて唸ったのは、貴族部の女子や商学部の学生まで、平均して【3】近くも魔力量が増えていた点だ。

 ほぼ増えていなかったのは、貴族部男子の数名で、真面目に魔法の練習をしていないことが一目瞭然となり、ある意味とても目立っていた。

 そんな大騒ぎの魔力測定で最も注目を浴びたのが、【麗しの三騎士】と呼ばれている三人だった。
 マギ公爵の子息であるエイト君は【8】、ルフナ王子が【10】、ワイコリーム公爵の子息であり天才と呼ばれているラリエス君は【12】伸びていた。

 計測した本人たちも信じられないようで、その原因に思い当たった三人が、俺ににっこりといい笑顔を向けてきた。

 ……きっと、先日練習した派手な攻撃魔法のせいだ。ハハ、ハハハハ・・・


 クラス対抗戦には関係ないけど、全クラスのリーダーも測定することになり、3年生からクラス順だったので、俺の測定が全学生の中で最後になった。

 終わった者から部屋を出ていくので、俺の測定結果を見ることになったのは、マキアート教授とトーマス王子の二人だけである。

「アコルの魔力量が本当に100を超えているのかどうか、確認することは国家レベルで必要なことだ」

「そうですねマキアート教授。アコルにはこれから、指導者的な立場としても頑張ってもらいたいから、他の学生を黙らせる実績が必要です」

「トーマス王子、そんな話は聞いていませんが? 
 まあ最短でも、魔術師資格試験で一般B級魔術師資格を取ってからです。そうしたら、妖精との契約についての講義は考えてもいいですよ。

 魔獣の大氾濫に備えて、薬師は大量に必要ですし、学力が足らなくても助手くらいできますから。
 そのために今回、もう一度適性検査をしていただいたんです。

 光適性を持っている学生全員を、トーマス王子の研究室に引っ張ってください。
 そして命の適性、または命と光の両方を持っていたら、医療チームに組み込みます。

 医療チームに選ばれた学生には、学費の免除や共通科目の受講免除などの特典を与え、光適性持ちには、何が何でも妖精と契約させます。
 早急に特典を決め、妖精との契約や、医療チームでの学習を、卒業に必要な単位に認定してください」

俺は自分の希望を言いながら【妖精との契約に関わる提案書】という名の書類を差し出した。

「提案書?・・・決定書の間違いじゃないのかアコル? 
 君はさあ、王族を便利な使いくらいに思ってない?これって、王様に上奏するんだろう?」

「妖精との契約が必要ないのなら破棄していいですよ。まあ、残念ながらトーマス王子の妖精との契約は難しくなりますけど・・・」

俺はいつものように黒く微笑んでおく。決めるのはトーマス王子と学院長だ。

「お前という奴は、本当に【魔王】のような奴だな。学院長の言う通り、気付いたらこの学院は、お前に乗っ取られる気がするぞ。
 その胡散臭い笑いを止めろ! そして早く測定機に手を載せろ!」

呆れたように俺を見て、マキアート教授は文句を言う。
 俺としたら国のためにやっていることなのだが、当分の間は【魔王】として君臨することにしよう。もうそれでいいや。

 目の前の二人も学院長も、俺が役に立つ人間だと思うところがあるから協力してくれているだけだ。
 王族や領主がどんな思考をしていて、平民をどう考えているのか、先日のレイム公爵の態度や言葉で改めて思い知った。

 ……邪魔になったら、いつでも消せるって考えてるし、危険だと思ったら排除する。
 だからこそ俺は、【魔王】と言われるような態度を変えるつもりはない。

 【覇王】ではなく【魔王】らしくニヤリと微笑んで、俺は測定機に右手を載せた。
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