キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん

文字の大きさ
上 下
71 / 709
高学院 1年生

49ー2 国王の承認ー2

しおりを挟む
 ◇◇ エクレア ◇◇


『それでどうだったのアコル? 魔術書のことは調べられた?』 

夕食を済ませて補助部屋に向かっているアコルの肩にふわりと乗り、あたしは魔術書のことを質問した。

 アコルと契約した日、あたしはアコルが王族だと直ぐに分かった。だって、前のご主人様であるブルマン王子と同じ魔力波動だったんだもん。

 だけど、王族だと分かっていたのに、あたしはそれを伝えられなかった。

 アコルは捨て子で平民として育ったから、自分の魔力量が普通じゃないことも、全適性をもっていることも、それがどれだけ凄いことなのか分かってない特殊な子だったし、あたしは主を失うのはもう嫌だったから、王族であることを言わなかった。

 王子を捨てるような王族なんて信用できないし、ブルマン王子みたいに、10歳にならないと王城で生活することが出来ないことも、当たり前のように他の兄弟が虐めたり、平気で殺したりする王族の常識なんて理解したくもなかった。

 ブルマン王子は王族でいるのが嫌で、ずっと逃げたがっていたから、あたしは王族の決まりとか魔術書のことを質問したことがなかった。だからアコルの役に立てなくて、今はちょっと後悔してる。
 
 妖精王様が【今代の覇王】とアコルをお認めになられたのだから、妖精王様の加護持ちでもある主を全力でお守りし、今度こそ主の役に立つ存在になりたい。

 今のあたしは、アコルと同じように妖精王様のお力をお借りすることができるから、この学院に住んでいる妖精全員を従えて、アコルに迫る危険を排除することだってできる。

 ……今度こそ、今度は絶対に主を守って見せる。

「うん、【上級魔法と覇王の遺言】の魔術書は、国王の子供全員が、産まれて直ぐに血判登録させられ持たされるって書いてあった」

『ふふん、やっぱりそうでしょう』

「今更国王を父親だとも思えないけど、俺を産んだ人はどうなったんだろう? 
 何故俺を捨てたんだろう? 

 どうして俺の存在を、トーマス王子やルフナ王子も知らないんだろう?
 まあいいや、そのうち分るだろう」

 アコルは自分が王子であると知ったのに、ちっとも嬉しそうじゃない。う~ん、いろいろ思うところがあって当たり前か・・・

『それでアコルは、自分が王子だって知らせるの?』

「知らせないよ。そんな面倒なことはしたくない。
 俺は王族として生きようとも、生きたいとも思わない。

 覇王として生きるのは確定しているから、今のままでいいや。
 だって国王より覇王の方が上だろう?」

『フフフ、そうね。国王は覇王に跪く立場だわ。
 知らせるなら王子じゃなくて覇王の方よね。
 アコルに悪意を抱き邪魔する者は蹴散らし、害をなそうとしたら捻り潰せばいいわ(あたしが)』

 ああ、何だか忙しくなりそうだわ。
 アコルが覇王として力を振るえるよう、あたしは情報収集を頑張ろうっと。



 翌朝、あたしの下には、たくさんの妖精たちから飛龍であるドラゴンが王都の近くの町を襲い、大きな被害を出したという報告が集まってきた。

『おはようアコル。ドラゴンが王都の近くの町を襲撃したわ』

「おはようエクレア。……そう、だから妖精たちが落ち着かない様子なんだね。予定より少し早かったな。よし、午前中は学校を休んで冒険者ギルドに行くよ」

アコルはそう言うと元気に飛び起きて支度を始める。
 食堂に向かう途中、出会った仲間の妖精たちは不安そうにしていた。

 特に草花や木から魔力を得ている妖精は、大事な場所が魔獣やドラゴンに踏み荒らされるのではと心配そうだ。

『大丈夫よ。アコル様が守ってくださるわ。だからみんなも力を貸してね』と、あたしは声を掛けていく。

 すると早速、アコル様に害意を抱いている学生や教師が居ると、教えてくれる妖精が現れた。
 その子は、まだ若い女の子の妖精で、図書館に置いてある古い本に宿っていた。

 毎日のように図書館で本を読むアコルが大好きで、アコル様と契約したいって、度々あたしに話しかけてお願いしてくる。

 妖精王様のご加護を持っているアコルなら、たくさんの妖精と契約できると思うので、もう少し様子を見てからアコルに報告しようと思っている。

 教えてくれた名前は、数学のリベルノ教授と外国語講師のヤハット。
 他の妖精たちも、アコルのクラスのダメニス(伯爵家の子息)とイバレン(フロランタン商会)が、アコルを陥れようとしているって心配してた。

 妖精王様の加護持ちで、覇王となるアコルを陥れようとするなんて、ハン! 喧嘩にもならないわね。

 でも学生ではなく、教師の分際で害意を抱くとは、これはもう正義の鉄槌を下すべきだわ。

 アコルと冒険者ギルドから帰ってきたら、学院長から名前を貰ったオペラと一緒に【秘儀、自分の周りに何かいる。もしかして幽霊?作戦】を決行しよう。

 自重なんかしないわ。だって、アコルの手を煩わせる程のことでもないでしょう?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...