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高学院 1年生
49ー2 国王の承認ー2
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◇◇ エクレア ◇◇
『それでどうだったのアコル? 魔術書のことは調べられた?』
夕食を済ませて補助部屋に向かっているアコルの肩にふわりと乗り、あたしは魔術書のことを質問した。
アコルと契約した日、あたしはアコルが王族だと直ぐに分かった。だって、前のご主人様であるブルマン王子と同じ魔力波動だったんだもん。
だけど、王族だと分かっていたのに、あたしはそれを伝えられなかった。
アコルは捨て子で平民として育ったから、自分の魔力量が普通じゃないことも、全適性をもっていることも、それがどれだけ凄いことなのか分かってない特殊な子だったし、あたしは主を失うのはもう嫌だったから、王族であることを言わなかった。
王子を捨てるような王族なんて信用できないし、ブルマン王子みたいに、10歳にならないと王城で生活することが出来ないことも、当たり前のように他の兄弟が虐めたり、平気で殺したりする王族の常識なんて理解したくもなかった。
ブルマン王子は王族でいるのが嫌で、ずっと逃げたがっていたから、あたしは王族の決まりとか魔術書のことを質問したことがなかった。だからアコルの役に立てなくて、今はちょっと後悔してる。
妖精王様が【今代の覇王】とアコルをお認めになられたのだから、妖精王様の加護持ちでもある主を全力でお守りし、今度こそ主の役に立つ存在になりたい。
今のあたしは、アコルと同じように妖精王様のお力をお借りすることができるから、この学院に住んでいる妖精全員を従えて、アコルに迫る危険を排除することだってできる。
……今度こそ、今度は絶対に主を守って見せる。
「うん、【上級魔法と覇王の遺言】の魔術書は、国王の子供全員が、産まれて直ぐに血判登録させられ持たされるって書いてあった」
『ふふん、やっぱりそうでしょう』
「今更国王を父親だとも思えないけど、俺を産んだ人はどうなったんだろう?
何故俺を捨てたんだろう?
どうして俺の存在を、トーマス王子やルフナ王子も知らないんだろう?
まあいいや、そのうち分るだろう」
アコルは自分が王子であると知ったのに、ちっとも嬉しそうじゃない。う~ん、いろいろ思うところがあって当たり前か・・・
『それでアコルは、自分が王子だって知らせるの?』
「知らせないよ。そんな面倒なことはしたくない。
俺は王族として生きようとも、生きたいとも思わない。
覇王として生きるのは確定しているから、今のままでいいや。
だって国王より覇王の方が上だろう?」
『フフフ、そうね。国王は覇王に跪く立場だわ。
知らせるなら王子じゃなくて覇王の方よね。
アコルに悪意を抱き邪魔する者は蹴散らし、害をなそうとしたら捻り潰せばいいわ(あたしが)』
ああ、何だか忙しくなりそうだわ。
アコルが覇王として力を振るえるよう、あたしは情報収集を頑張ろうっと。
翌朝、あたしの下には、たくさんの妖精たちから飛龍であるドラゴンが王都の近くの町を襲い、大きな被害を出したという報告が集まってきた。
『おはようアコル。ドラゴンが王都の近くの町を襲撃したわ』
「おはようエクレア。……そう、だから妖精たちが落ち着かない様子なんだね。予定より少し早かったな。よし、午前中は学校を休んで冒険者ギルドに行くよ」
アコルはそう言うと元気に飛び起きて支度を始める。
食堂に向かう途中、出会った仲間の妖精たちは不安そうにしていた。
特に草花や木から魔力を得ている妖精は、大事な場所が魔獣やドラゴンに踏み荒らされるのではと心配そうだ。
『大丈夫よ。アコル様が守ってくださるわ。だからみんなも力を貸してね』と、あたしは声を掛けていく。
すると早速、アコル様に害意を抱いている学生や教師が居ると、教えてくれる妖精が現れた。
その子は、まだ若い女の子の妖精で、図書館に置いてある古い本に宿っていた。
毎日のように図書館で本を読むアコルが大好きで、アコル様と契約したいって、度々あたしに話しかけてお願いしてくる。
妖精王様のご加護を持っているアコルなら、たくさんの妖精と契約できると思うので、もう少し様子を見てからアコルに報告しようと思っている。
教えてくれた名前は、数学のリベルノ教授と外国語講師のヤハット。
他の妖精たちも、アコルのクラスのダメニス(伯爵家の子息)とイバレン(フロランタン商会)が、アコルを陥れようとしているって心配してた。
妖精王様の加護持ちで、覇王となるアコルを陥れようとするなんて、ハン! 喧嘩にもならないわね。
でも学生ではなく、教師の分際で害意を抱くとは、これはもう正義の鉄槌を下すべきだわ。
アコルと冒険者ギルドから帰ってきたら、学院長から名前を貰ったオペラと一緒に【秘儀、自分の周りに何かいる。もしかして幽霊?作戦】を決行しよう。
自重なんかしないわ。だって、アコルの手を煩わせる程のことでもないでしょう?
『それでどうだったのアコル? 魔術書のことは調べられた?』
夕食を済ませて補助部屋に向かっているアコルの肩にふわりと乗り、あたしは魔術書のことを質問した。
アコルと契約した日、あたしはアコルが王族だと直ぐに分かった。だって、前のご主人様であるブルマン王子と同じ魔力波動だったんだもん。
だけど、王族だと分かっていたのに、あたしはそれを伝えられなかった。
アコルは捨て子で平民として育ったから、自分の魔力量が普通じゃないことも、全適性をもっていることも、それがどれだけ凄いことなのか分かってない特殊な子だったし、あたしは主を失うのはもう嫌だったから、王族であることを言わなかった。
王子を捨てるような王族なんて信用できないし、ブルマン王子みたいに、10歳にならないと王城で生活することが出来ないことも、当たり前のように他の兄弟が虐めたり、平気で殺したりする王族の常識なんて理解したくもなかった。
ブルマン王子は王族でいるのが嫌で、ずっと逃げたがっていたから、あたしは王族の決まりとか魔術書のことを質問したことがなかった。だからアコルの役に立てなくて、今はちょっと後悔してる。
妖精王様が【今代の覇王】とアコルをお認めになられたのだから、妖精王様の加護持ちでもある主を全力でお守りし、今度こそ主の役に立つ存在になりたい。
今のあたしは、アコルと同じように妖精王様のお力をお借りすることができるから、この学院に住んでいる妖精全員を従えて、アコルに迫る危険を排除することだってできる。
……今度こそ、今度は絶対に主を守って見せる。
「うん、【上級魔法と覇王の遺言】の魔術書は、国王の子供全員が、産まれて直ぐに血判登録させられ持たされるって書いてあった」
『ふふん、やっぱりそうでしょう』
「今更国王を父親だとも思えないけど、俺を産んだ人はどうなったんだろう?
何故俺を捨てたんだろう?
どうして俺の存在を、トーマス王子やルフナ王子も知らないんだろう?
まあいいや、そのうち分るだろう」
アコルは自分が王子であると知ったのに、ちっとも嬉しそうじゃない。う~ん、いろいろ思うところがあって当たり前か・・・
『それでアコルは、自分が王子だって知らせるの?』
「知らせないよ。そんな面倒なことはしたくない。
俺は王族として生きようとも、生きたいとも思わない。
覇王として生きるのは確定しているから、今のままでいいや。
だって国王より覇王の方が上だろう?」
『フフフ、そうね。国王は覇王に跪く立場だわ。
知らせるなら王子じゃなくて覇王の方よね。
アコルに悪意を抱き邪魔する者は蹴散らし、害をなそうとしたら捻り潰せばいいわ(あたしが)』
ああ、何だか忙しくなりそうだわ。
アコルが覇王として力を振るえるよう、あたしは情報収集を頑張ろうっと。
翌朝、あたしの下には、たくさんの妖精たちから飛龍であるドラゴンが王都の近くの町を襲い、大きな被害を出したという報告が集まってきた。
『おはようアコル。ドラゴンが王都の近くの町を襲撃したわ』
「おはようエクレア。……そう、だから妖精たちが落ち着かない様子なんだね。予定より少し早かったな。よし、午前中は学校を休んで冒険者ギルドに行くよ」
アコルはそう言うと元気に飛び起きて支度を始める。
食堂に向かう途中、出会った仲間の妖精たちは不安そうにしていた。
特に草花や木から魔力を得ている妖精は、大事な場所が魔獣やドラゴンに踏み荒らされるのではと心配そうだ。
『大丈夫よ。アコル様が守ってくださるわ。だからみんなも力を貸してね』と、あたしは声を掛けていく。
すると早速、アコル様に害意を抱いている学生や教師が居ると、教えてくれる妖精が現れた。
その子は、まだ若い女の子の妖精で、図書館に置いてある古い本に宿っていた。
毎日のように図書館で本を読むアコルが大好きで、アコル様と契約したいって、度々あたしに話しかけてお願いしてくる。
妖精王様のご加護を持っているアコルなら、たくさんの妖精と契約できると思うので、もう少し様子を見てからアコルに報告しようと思っている。
教えてくれた名前は、数学のリベルノ教授と外国語講師のヤハット。
他の妖精たちも、アコルのクラスのダメニス(伯爵家の子息)とイバレン(フロランタン商会)が、アコルを陥れようとしているって心配してた。
妖精王様の加護持ちで、覇王となるアコルを陥れようとするなんて、ハン! 喧嘩にもならないわね。
でも学生ではなく、教師の分際で害意を抱くとは、これはもう正義の鉄槌を下すべきだわ。
アコルと冒険者ギルドから帰ってきたら、学院長から名前を貰ったオペラと一緒に【秘儀、自分の周りに何かいる。もしかして幽霊?作戦】を決行しよう。
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