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高学院 1年生
48ー2 ドラゴンの来襲ー2
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そして私たちは、開設準備中の【魔獣大氾濫対策研究室】に向かい、私はアコルから妖精との契約について教えを受けていた。
偶然にも、トーマスは王宮から緊急呼び出しを受け留守にしていたので、申し訳ないが私だけ特別にコツを教えてもらった。
「妖精は自分から欲しいモノを言ったりしません。
ですが私の経験上、妖精は自分が好きなものが目の前にある時、何らかのアクションを起こします。
私の時は香木の香りでしたが、それは花だったり木だったり、歌だったり、剣や武具だったりと様々です。
妖精の気配を感じた時に、妖精が好きなモノをプレゼントし、名前を付けて呼んでみてください。
気に入ってもらえたら、必ず合図が返ってきます。そして、可愛い姿を現してくれるでしょう」
アコルはそう言うと、読書のために図書館へと戻っていった。
心当たりが大有りな私は、逸る気持ちを抑えながら、急ぎ足で自分の執務室に戻り、いつものように横笛を取り出すと、妖精さんに捧げるつもりで一番好きな曲を演奏した。
「私の一番好きな曲をプレゼントしたんだ。もしも気に入ってくれたら合図して欲しい。私はモーマットだ」と私が言うと、何処からか草笛のような音色が響いてきた。
「ありがとう。嬉しいよ。君のことを【オペラ】と呼んでもいいだろうか?」と問うと、また草笛のような音色が聴こえて、執務机の上に、可愛い男の子の妖精がすうっと姿を現した。
5色の羽根は透き通るように美しく、頭の上にちょこんと三角帽子を載せ、5色の葉のような服を着て、どこか悪戯っぽい笑顔で私をじっと見ている。
大きさはエクレアちゃんより少し大きくて、首に笛のような物をぶら下げている。
……ああぁぁー、なんて幸せなんだ! こんな日が本当に来るなんて! ありがとうアコル。ありがとうございます神様!
『僕は音楽が大好きで、ずっと学校の音楽室に居たんだけど、音楽の教授が病気で授業が休みになっていて、とっても寂しかったんだ。
モーマットは演奏が好きそうだから、ずっと友達になりたいって思ってたんだ。そしたらアコル様が、大丈夫だよって言ってくれた。これ、友達のしるしにあげる』
オペラはにっっこりと笑いながら、小さな手からピンク色の丸い石をプレゼントしてくれた。
「オペラはアコルと話したことがあるんだね。妖精と契約したら、私も他の妖精が見えたり話したりできるのかなぁ」
ワクワクが止まらず、私は可愛いオペラに色々と質問して、たくさん話をする。
『たぶん無理だよ。主の居る妖精は、主が許可したら姿を見せたり話したりするけど、僕とモーマットは契約じゃなくて友達だし……アコル様は特別なお方だから。
ねえモーマット、アコル様を疑うのは止めて。もしもアコル様を害するようなことをしたら、僕はモーマットとは一緒に居られない』
「私とオペラは契約じゃないのかい? それにアコルが特別な方?」と、なんだか納得できない気持ちで、オペラに少しキツイ視線を向けてしまった。
『妖精が契約を許可するのは、自分よりも魔力量が多いか、自分が持っていない適性を持っていたり、相性がいいと確信できてからだよ。これ以上は話せない。
アコル様のことは、きっと直ぐにその意味が分かると思うよ』
オペラはそう説明すると、逆に厳しい視線を私に向けてきた。
その視線を受けた瞬間、オペラの魔力量は100を超えていて、自分よりも多いのだと何故だか分かった。
「またねモーマット」と可愛く手を振って、オペラはスーッと飛び上がり何処かへ行ってしまった。
……契約じゃなくて友達・・・ちょっとがっかりだけど、オペラと友達になれた喜びは変わらない。
オペラの可愛い姿を思い出し、幸せな気持ちで夕食後のお茶を飲んでいると、王宮からトーマスが戻ってきた。
すこぶる顔色の悪いトーマスの口から、信じたくない驚愕の話を聞き、私の幸せな気持ちは一瞬で吹き飛び眩暈がした。
「な、なんだって、王都の直ぐ近くの南の町が、ドラゴンに襲撃された?!」
「はい叔父上。直ぐに軍務大臣のデミル公爵が、軍の上官に出動命令を出し、魔法省の副大臣であるヘイズ侯爵も、A級魔法師三人を軍の大隊と共に現場に向かわせましたが、住民の死傷者は多数、兵士や魔法師の死傷者の数は・・・半数以上だと」
「それでドラゴンは、ドラゴンはどうなったんだ!」
「ドラゴンは無傷のまま、一頭は南へ、二頭は東に飛び去ったようです。襲撃された町の建物は、半分が壊滅状態になったと・・・」
頭の中が真っ白になるとは、こういうことなのだと思い知らされた。
魔法省や学者の見解では、魔獣の大氾濫まであと2年以上あったはずだ。
*****
時は待ってくれない。
王族は民を守りたいのか、貴族だけを守りたいのか、そして貴族は、自分だけが助かればいいのか、いい加減にはっきりしたらどうでしょう。
あれだけ魔獣の大氾濫が起こると言っているのに、学生たちが他人事なのは、改革する意味や目的が分からないからです。
生きるため! ただそれだけのことが分からない。
大きく発想を変えなければ、この国は滅びますよ!
学ばなければ死ぬぞと脅すだけなのか、生きるために戦えと教えるのか、頭を切り替えるべき者は誰でしょう?
皆さんは、学生たちを守りたいのでしょうか?
*****
アコルの言葉が蘇る。
あの時私は、思わず不敬が過ぎると叱咤してしまった。
私もトーマスもマキアートも、あまりの言いように腹が立ったし、目の前の学生が未成年の少年で、現時点では平民だと思っているから、怒りの感情を抑え、手を出さないよう我慢するだけで精一杯だった。
示された提案だって、実現不可能を通り越して、貴族社会を分かっていない平民が考えた絵空事だと考えようとした。
「生きるため・・・そうだ。生きるために戦う。守るために学ばせる。当たり前のことだったのに、分かっていなかったのは……私の方だった」
私は天を仰ぐように顔を上に向け目を瞑り、浅はかで無知だった己に腹を立てながら呟いた。
ドラゴンに襲われて初めて、これから先も普通に生きていられると思っていた自分に気付くとは、教育者として王族として、あまりにも無責任だった。
偶然にも、トーマスは王宮から緊急呼び出しを受け留守にしていたので、申し訳ないが私だけ特別にコツを教えてもらった。
「妖精は自分から欲しいモノを言ったりしません。
ですが私の経験上、妖精は自分が好きなものが目の前にある時、何らかのアクションを起こします。
私の時は香木の香りでしたが、それは花だったり木だったり、歌だったり、剣や武具だったりと様々です。
妖精の気配を感じた時に、妖精が好きなモノをプレゼントし、名前を付けて呼んでみてください。
気に入ってもらえたら、必ず合図が返ってきます。そして、可愛い姿を現してくれるでしょう」
アコルはそう言うと、読書のために図書館へと戻っていった。
心当たりが大有りな私は、逸る気持ちを抑えながら、急ぎ足で自分の執務室に戻り、いつものように横笛を取り出すと、妖精さんに捧げるつもりで一番好きな曲を演奏した。
「私の一番好きな曲をプレゼントしたんだ。もしも気に入ってくれたら合図して欲しい。私はモーマットだ」と私が言うと、何処からか草笛のような音色が響いてきた。
「ありがとう。嬉しいよ。君のことを【オペラ】と呼んでもいいだろうか?」と問うと、また草笛のような音色が聴こえて、執務机の上に、可愛い男の子の妖精がすうっと姿を現した。
5色の羽根は透き通るように美しく、頭の上にちょこんと三角帽子を載せ、5色の葉のような服を着て、どこか悪戯っぽい笑顔で私をじっと見ている。
大きさはエクレアちゃんより少し大きくて、首に笛のような物をぶら下げている。
……ああぁぁー、なんて幸せなんだ! こんな日が本当に来るなんて! ありがとうアコル。ありがとうございます神様!
『僕は音楽が大好きで、ずっと学校の音楽室に居たんだけど、音楽の教授が病気で授業が休みになっていて、とっても寂しかったんだ。
モーマットは演奏が好きそうだから、ずっと友達になりたいって思ってたんだ。そしたらアコル様が、大丈夫だよって言ってくれた。これ、友達のしるしにあげる』
オペラはにっっこりと笑いながら、小さな手からピンク色の丸い石をプレゼントしてくれた。
「オペラはアコルと話したことがあるんだね。妖精と契約したら、私も他の妖精が見えたり話したりできるのかなぁ」
ワクワクが止まらず、私は可愛いオペラに色々と質問して、たくさん話をする。
『たぶん無理だよ。主の居る妖精は、主が許可したら姿を見せたり話したりするけど、僕とモーマットは契約じゃなくて友達だし……アコル様は特別なお方だから。
ねえモーマット、アコル様を疑うのは止めて。もしもアコル様を害するようなことをしたら、僕はモーマットとは一緒に居られない』
「私とオペラは契約じゃないのかい? それにアコルが特別な方?」と、なんだか納得できない気持ちで、オペラに少しキツイ視線を向けてしまった。
『妖精が契約を許可するのは、自分よりも魔力量が多いか、自分が持っていない適性を持っていたり、相性がいいと確信できてからだよ。これ以上は話せない。
アコル様のことは、きっと直ぐにその意味が分かると思うよ』
オペラはそう説明すると、逆に厳しい視線を私に向けてきた。
その視線を受けた瞬間、オペラの魔力量は100を超えていて、自分よりも多いのだと何故だか分かった。
「またねモーマット」と可愛く手を振って、オペラはスーッと飛び上がり何処かへ行ってしまった。
……契約じゃなくて友達・・・ちょっとがっかりだけど、オペラと友達になれた喜びは変わらない。
オペラの可愛い姿を思い出し、幸せな気持ちで夕食後のお茶を飲んでいると、王宮からトーマスが戻ってきた。
すこぶる顔色の悪いトーマスの口から、信じたくない驚愕の話を聞き、私の幸せな気持ちは一瞬で吹き飛び眩暈がした。
「な、なんだって、王都の直ぐ近くの南の町が、ドラゴンに襲撃された?!」
「はい叔父上。直ぐに軍務大臣のデミル公爵が、軍の上官に出動命令を出し、魔法省の副大臣であるヘイズ侯爵も、A級魔法師三人を軍の大隊と共に現場に向かわせましたが、住民の死傷者は多数、兵士や魔法師の死傷者の数は・・・半数以上だと」
「それでドラゴンは、ドラゴンはどうなったんだ!」
「ドラゴンは無傷のまま、一頭は南へ、二頭は東に飛び去ったようです。襲撃された町の建物は、半分が壊滅状態になったと・・・」
頭の中が真っ白になるとは、こういうことなのだと思い知らされた。
魔法省や学者の見解では、魔獣の大氾濫まであと2年以上あったはずだ。
*****
時は待ってくれない。
王族は民を守りたいのか、貴族だけを守りたいのか、そして貴族は、自分だけが助かればいいのか、いい加減にはっきりしたらどうでしょう。
あれだけ魔獣の大氾濫が起こると言っているのに、学生たちが他人事なのは、改革する意味や目的が分からないからです。
生きるため! ただそれだけのことが分からない。
大きく発想を変えなければ、この国は滅びますよ!
学ばなければ死ぬぞと脅すだけなのか、生きるために戦えと教えるのか、頭を切り替えるべき者は誰でしょう?
皆さんは、学生たちを守りたいのでしょうか?
*****
アコルの言葉が蘇る。
あの時私は、思わず不敬が過ぎると叱咤してしまった。
私もトーマスもマキアートも、あまりの言いように腹が立ったし、目の前の学生が未成年の少年で、現時点では平民だと思っているから、怒りの感情を抑え、手を出さないよう我慢するだけで精一杯だった。
示された提案だって、実現不可能を通り越して、貴族社会を分かっていない平民が考えた絵空事だと考えようとした。
「生きるため・・・そうだ。生きるために戦う。守るために学ばせる。当たり前のことだったのに、分かっていなかったのは……私の方だった」
私は天を仰ぐように顔を上に向け目を瞑り、浅はかで無知だった己に腹を立てながら呟いた。
ドラゴンに襲われて初めて、これから先も普通に生きていられると思っていた自分に気付くとは、教育者として王族として、あまりにも無責任だった。
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