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高学院 1年生
45ー2 ルフナ王子からの招待ー2
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そして今日、俺の近くに座るメンバーが一人増えた。
確かに三人掛けの長椅子だからいいんだけど、今まで誰も座りたがらなかった俺の隣に座ってきた。
「やあ、君が噂のアコル君だね。俺はマギ公爵の次男でエイト。よろしく」
……は~っ、何でだ? 今度はマギ公爵の子息か・・・
「こちらこそよろしくお願いしますエイト……くん? さま?」
「はは、エイト君でいいよ。そう言えばルフナ王子、もうアコルに言ったんですか?」
エイト……くんは笑顔で挨拶すると、平民の隣を全く気にすることなく座りながら、前に座っていたルフナ王子に話し掛けた。
「う、うん……まだだよエイト」
「はあ? まだなんですか?」と呆れたようにエイト君が言ったところで、数学・科学を担当しているリベルノ教授が教室に入ってきた。
教壇の上に立つと、リベルノ教授はいつものように貴族部・魔法部以外の学生を威圧するように睨む。
貴族絶対主義を隠そうともしないリベルノ教授は、難しい問題は決して貴族部の学生には答えさせない。リベルノ教授は貴族部の担任なのだ。
絶対に答えられないだろうという顔をして、特務部や商学部の学生に難問題を答えさせようとする。
正解しなければ、これ見よがしな溜息を吐き、後ろに立っていろと命令する。
そんなリベルノ教授が珍しく「魔法部の学生で分かる者?」と、魔法部の学生にやや難しい問題の回答を求めた。
すると、隣に座っていたマギ公爵の子息であるエイト君が手を挙げた。
大丈夫かなと隣のエイト君のノートをちらりと覗くと、きちんと正解が書いてあった。
なのにだ、エイト君はわざと不正解の回答をして、教授に言われる前に「後ろに立つんでしたね」と笑って席を立った。
リベルノ教授は「ウッ」と言葉を詰まらせ、後ろに立っていろとも、立たなくていいとも言わず、驚くような言葉を吐いた。
「いい心掛けだエイト君。だが、平民が隣に座るのを許すとは、マギ公爵はどのような教育をされたのだろうか。やれやれ」と。
「申し訳ありませんが教授、私は彼が隣に座るのを許したのではなく、私が隣に座る了解を得て座ったんですけど? ヘイズ侯爵領の貴族は、随分と狭量なのですね」
……ん? これって完全に教授に喧嘩を売ってる? なんだよその笑顔は。
「誰が何処に座ろうと自由。王族だろうが高位貴族だろうが平民だろうが、この王立高学院に入学した者は、平等に学ぶ権利を持っている。私は国王である父からそう教わりましたが、間違っていますかリベルノ教授?」
……はい? 今度はルフナ王子?
「そうです。平民のアコル君が何処に座ろうと、私が好んでアコル君の前に座ろうと自由です。ああ、魔法部の学生からの回答をお望みでしたね。答えは3です。正解だと思いますが、私も後ろに立った方がいいですか?」
……おいおい、今度はラリエス様かよ。っていうか、何気に俺の名前を会話に織り交ぜるのはどうなんだ?
「そういう反抗的な態度は良くないなラリエス君。立っていたければ止めはしない」
超不機嫌な顔をして、リベルノ教授はそう言うと、その後の問題を全て魔法部の学生に答えさせた。
大人気ないを通り越して呆れる。
でももっと呆れるのは、何故か俺まで後ろに立たされていることだ。完全に巻き込まれている。
ラリエス様とルフナ王子に、まんまとしてやられたけど、ちょっと気持はスッキリした。
……これはもしかして、大人の派閥争いが、学院まで波及しているのか?
放課後、いつものように図書館へ向かおうとしていたら「ワイコリーム公爵家のラリエス様からお預かりしましてよ」と言って、クラス委員のスフレさんが手紙のようなものを差し出してきた。
スフレさんによると、家紋の入っていない封筒を渡すのは、友人を部屋に招く時に多く、正式なお茶会などの時は家紋入りの封筒を使うとのこと。
中を開けてみると、友人としてお茶に招待したいのだがどうだろうかという、今日の夕食後の時間を指定した招待状が入っていた。
よーく見てみると差出人はルフナ王子だ。
しかもお茶会の場所はルフナ王子の部屋になっている。メンバーは他にラリエス様、マギ公爵家のエイト君と俺・・・
「きっと皆様、アコル君と仲良くなりたいのですわ。
今日のリベルノ教授の講義の時に、あれだけ分かり易く、アコル君は自分たちの派閥の人間だと宣言していらっしゃいましたもの。
アコル君を目の敵にしているクラスのアホ伯爵家の子息、あら失礼。頭が残念な伯爵家の子息二人などは、青い顔になっていて笑えましたわ。
アコル君が【麗しの三騎士】のメンバーに加わったと、女子の間ではもう大騒ぎですの」
伯爵令嬢でありクラス委員のスフレさんは、ダージリン中級学校の卒業生で、ラリエス様たち三人をよく知っていた。
中級学校の時から弱い者虐めをする上級生や教師に立ち向かい、皆から【麗しの三騎士】と呼ばれていたのだと、ちょっと興奮気味に教えてくれた。
麗し・・・確かに三人ともイケメン男子だ。どこからどう見ても高位貴族である気品が滲み出ているし、堂々としていて独特のオーラを放っている。
……ん? 俺が【麗しの三騎士】のメンバーに加わった?
「アコル君、ここは貴族を中心とした王立高学院、王子や公爵家の子息の方から後ろ盾になると示されることなど奇跡に近いこと。このチャンスを活かすべきですわ」
にっこりと微笑み、俺の右手をがっしりと両手で包み込むと、有無を言わせない勢いでそう言って、絶対に王子の部屋を訪ねるよう念押しされた。
これは、学院長に相談した方がいいんだろうか?って、迷いながら図書館に向かっていると、忙しそうなトーマス王子にばったり出会った。
確かに三人掛けの長椅子だからいいんだけど、今まで誰も座りたがらなかった俺の隣に座ってきた。
「やあ、君が噂のアコル君だね。俺はマギ公爵の次男でエイト。よろしく」
……は~っ、何でだ? 今度はマギ公爵の子息か・・・
「こちらこそよろしくお願いしますエイト……くん? さま?」
「はは、エイト君でいいよ。そう言えばルフナ王子、もうアコルに言ったんですか?」
エイト……くんは笑顔で挨拶すると、平民の隣を全く気にすることなく座りながら、前に座っていたルフナ王子に話し掛けた。
「う、うん……まだだよエイト」
「はあ? まだなんですか?」と呆れたようにエイト君が言ったところで、数学・科学を担当しているリベルノ教授が教室に入ってきた。
教壇の上に立つと、リベルノ教授はいつものように貴族部・魔法部以外の学生を威圧するように睨む。
貴族絶対主義を隠そうともしないリベルノ教授は、難しい問題は決して貴族部の学生には答えさせない。リベルノ教授は貴族部の担任なのだ。
絶対に答えられないだろうという顔をして、特務部や商学部の学生に難問題を答えさせようとする。
正解しなければ、これ見よがしな溜息を吐き、後ろに立っていろと命令する。
そんなリベルノ教授が珍しく「魔法部の学生で分かる者?」と、魔法部の学生にやや難しい問題の回答を求めた。
すると、隣に座っていたマギ公爵の子息であるエイト君が手を挙げた。
大丈夫かなと隣のエイト君のノートをちらりと覗くと、きちんと正解が書いてあった。
なのにだ、エイト君はわざと不正解の回答をして、教授に言われる前に「後ろに立つんでしたね」と笑って席を立った。
リベルノ教授は「ウッ」と言葉を詰まらせ、後ろに立っていろとも、立たなくていいとも言わず、驚くような言葉を吐いた。
「いい心掛けだエイト君。だが、平民が隣に座るのを許すとは、マギ公爵はどのような教育をされたのだろうか。やれやれ」と。
「申し訳ありませんが教授、私は彼が隣に座るのを許したのではなく、私が隣に座る了解を得て座ったんですけど? ヘイズ侯爵領の貴族は、随分と狭量なのですね」
……ん? これって完全に教授に喧嘩を売ってる? なんだよその笑顔は。
「誰が何処に座ろうと自由。王族だろうが高位貴族だろうが平民だろうが、この王立高学院に入学した者は、平等に学ぶ権利を持っている。私は国王である父からそう教わりましたが、間違っていますかリベルノ教授?」
……はい? 今度はルフナ王子?
「そうです。平民のアコル君が何処に座ろうと、私が好んでアコル君の前に座ろうと自由です。ああ、魔法部の学生からの回答をお望みでしたね。答えは3です。正解だと思いますが、私も後ろに立った方がいいですか?」
……おいおい、今度はラリエス様かよ。っていうか、何気に俺の名前を会話に織り交ぜるのはどうなんだ?
「そういう反抗的な態度は良くないなラリエス君。立っていたければ止めはしない」
超不機嫌な顔をして、リベルノ教授はそう言うと、その後の問題を全て魔法部の学生に答えさせた。
大人気ないを通り越して呆れる。
でももっと呆れるのは、何故か俺まで後ろに立たされていることだ。完全に巻き込まれている。
ラリエス様とルフナ王子に、まんまとしてやられたけど、ちょっと気持はスッキリした。
……これはもしかして、大人の派閥争いが、学院まで波及しているのか?
放課後、いつものように図書館へ向かおうとしていたら「ワイコリーム公爵家のラリエス様からお預かりしましてよ」と言って、クラス委員のスフレさんが手紙のようなものを差し出してきた。
スフレさんによると、家紋の入っていない封筒を渡すのは、友人を部屋に招く時に多く、正式なお茶会などの時は家紋入りの封筒を使うとのこと。
中を開けてみると、友人としてお茶に招待したいのだがどうだろうかという、今日の夕食後の時間を指定した招待状が入っていた。
よーく見てみると差出人はルフナ王子だ。
しかもお茶会の場所はルフナ王子の部屋になっている。メンバーは他にラリエス様、マギ公爵家のエイト君と俺・・・
「きっと皆様、アコル君と仲良くなりたいのですわ。
今日のリベルノ教授の講義の時に、あれだけ分かり易く、アコル君は自分たちの派閥の人間だと宣言していらっしゃいましたもの。
アコル君を目の敵にしているクラスのアホ伯爵家の子息、あら失礼。頭が残念な伯爵家の子息二人などは、青い顔になっていて笑えましたわ。
アコル君が【麗しの三騎士】のメンバーに加わったと、女子の間ではもう大騒ぎですの」
伯爵令嬢でありクラス委員のスフレさんは、ダージリン中級学校の卒業生で、ラリエス様たち三人をよく知っていた。
中級学校の時から弱い者虐めをする上級生や教師に立ち向かい、皆から【麗しの三騎士】と呼ばれていたのだと、ちょっと興奮気味に教えてくれた。
麗し・・・確かに三人ともイケメン男子だ。どこからどう見ても高位貴族である気品が滲み出ているし、堂々としていて独特のオーラを放っている。
……ん? 俺が【麗しの三騎士】のメンバーに加わった?
「アコル君、ここは貴族を中心とした王立高学院、王子や公爵家の子息の方から後ろ盾になると示されることなど奇跡に近いこと。このチャンスを活かすべきですわ」
にっこりと微笑み、俺の右手をがっしりと両手で包み込むと、有無を言わせない勢いでそう言って、絶対に王子の部屋を訪ねるよう念押しされた。
これは、学院長に相談した方がいいんだろうか?って、迷いながら図書館に向かっていると、忙しそうなトーマス王子にばったり出会った。
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