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冒険者とお仕事
30ー2 新しい仲間(3)ー2
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「「「秘伝の書?」」」
いったいそれは何だぁ? みたいに怪訝な表情で皆が俺を睨む。
「家の武器庫に入ってたんです。きっと父さんの本だと思います」
「「はあ? サイモンが本? パリージアじゃなくて?」」
ギルマスもセイガさんもなんて失礼なんだ。確かに父さんが本を読んでいるところなんか見たことないけど、武器庫は父さんが管理してたから、母さんの本じゃないはずだ。
いや、でも、よく考えたら、父さんが【上級魔法と覇王の遺言】を読んでいたら、雷撃や他の魔法が使えたはずだ。
……あれ? これは母さんに確認した方がいいかもしれない。せっかく2年以上も自由な冒険者生活を送れるんだから、家に帰ったっていいよな。
「とりあえず最初の目的地をサーシム領にして、リドミウムの森とティー山脈で香木を探します。ヨウキ村に戻って母に秘伝の書について訊いてみます」
「ああ、そうしてくれ。セイガ、お前、パリージアに会って、この常識知らずの息子をどうやって育てたか確認しろ。それまで秘伝の書? とかいう本の使用を禁止する。・・・それから、仲間を助ける行為は間違っていないが、本来Eランク冒険者が助ける方に回ることはない」
ギルマスはセイガさんに指示を出し、頭を抱え再び大きな溜め息をついた。
なんか酷い言われようだけど、これ以上言い返してギルマスを怒らせるのは得策じゃない。ここは引き下がって、早く薬草担当のお姉さんに買取りして貰おう。
「【宵闇の狼】と【太陽と月】のメンバー全員に、王都支部のギルマスであるベイクドとサブギルマスのダルトン、そして龍山支店のギルマスである俺から命令を伝える。これから話すことは口外禁止であることは勿論だが、人の命と冒険者ギルドの意地が懸かっていると思え」
ギルマスが急に真面目な顔をして、低い声で俺以外のメンバーを睨みながら言った。
さっきまでの気さくな感じではなく、ピリピリと緊張感が伝わってくる。
セイガさんをはじめ全員が背筋を伸ばし、姿勢を正した。
「今回の魔獣の討伐に、アコルは一切関わっていない。常識外れの攻撃や治療や魔方陣、それらの全てをお前たちは見ていなかった。よって、アコルに報酬は分けない」
「はあ? 何だよそれ」と、セイガさんが怒気のこもった声をあげる。
「それは納得できません」と、ホルクスさんも首を横に振る。
「よく聞け。10年以内に……魔獣の大氾濫が起こる。
その前兆として、各地で魔獣の変異種が村を襲い始めた。
軍と魔法省は討伐隊を組んで、冒険者ギルドも優秀なAランクパーティーを出した。だが、結果は魔法省と軍の無能な指導者によって、冒険者は15人以上も殺され、6人もの重傷者を出した。
そのことは、お前たちも噂で知っているだろう。
今後冒険者ギルドは、魔法省がA級魔法師を出さないのなら、討伐に協力しないと決めた。
そこで魔法省の無能な副大臣は、魔獣の変異種を倒すため、妖精と契約できる魔術師を使おうと考えた。
だが現在、妖精と契約できるのはレイム公爵家とサナヘ侯爵家の血族だけだ。
この二つの高位貴族家は、魔法省の副大臣であるヘイズ侯爵と対立している。
まあ、誰だって妖精と契約できる希少な魔術師を、無能な魔法省に使われたくはないだろう。みすみす死出の旅に行かせるようなもんだからな。
そんな時、一人の子供が妖精と契約し、その事を多くの職場の同僚に知られてしまった。
運悪く、その職場の人間の中に、無能な魔法省副大臣ヘイズ侯爵の甥が居た。
直ぐに子供を確保し、捨て駒にしようと企んだが、間一髪で逃げ出した。
それがアコルだ」
「「「 はあ?!!! 」」」
信じられないとばかりに大きな声が揃い、全員の視線が俺に向けられた。
半分は口を半開きにし、半分は現実が受け入れられずぼ~っとしている。
そんな視線を向けられたら、そ~っと逸らすのが普通だよな。
……ああ、今日は月夜だな。窓の外が明るいや。お腹空いたなぁ・・・
「アコル、お前のことだろうが! 何を他人事のようにしてるんだよ本当に。
こいつは何せ魔力量も並みじゃない。おまけに魔術師でもないのに魔方陣まで使えることが知られたら、絶対に先陣に立たされて殺される。
冒険者ギルドは、将来有望な冒険者を守らねばならない!
セイガ、【宵闇の狼】の最も重要な任務は、アコルを魔法省や軍から守ることだ。
いいな、アコルのことは絶対に口外するな。助けられたことも、マジックバッグのことも忘れろ!
少しでも漏らせば、命の恩人であるアコルを殺すことになるぞ」
ギルマスの声は次第に低くなり、意識して魔力を漏らしているのか完全に威圧している。後ろで立っていた【太陽と月】の若者は、腰が抜けたようにへたりこんだ。
ダルトンさんも会頭の部屋で魔力を漏らしてたけど、目の前のギルマスの威圧は半端ない。とにかく顔が元々怖いから、俺も少し背筋が寒くなった。
「返事は?」
「はい分かりました。アコルは今回の討伐に関わっていませんでした。そして、見たことも聞いたことも全て忘れます。口外しないと誓います」
【宵闇の狼】のリーダーであるセイガさんは立ち上がり、青い顔をしてそう言った。他のメンバーもコクコクと頷いて了解する。言葉にしたくても、ギルマスが怖すぎて声が出せないみたいだ。
「皆さん、いろいろとご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。俺は薬草採取の報酬だけで充分です。ですから、早く俺の……いや、モンブラン商会のマジックバッグから、新種の魔獣を出させてください」
せっかく新種の魔獣を討伐したかも知れないのに、俺の話なんかで暗くなるのは止めて欲しい。きっと下で他の冒険者も新種の魔獣を見ようと待ち構えているはずだ。
「そうだった。そんな話もあったな。ん? 新種? 今、新種と言ったか?」
「ええ~っ、聞いてなかったんですかギルマス、耳が遠くなったんじゃないですか」
せっかく明るく言ったのに、何故か特大の拳骨を落とされてしまった。
セイガさんまで、俺の頭を拳でグリグリしてくる。
「痛い! きゃー、リーダーがいたいけな子供を虐めます。助けてー」
「そんなとこだけ子供の振りをするな。アコル、魔物の解体場に到着したら、見物人に背を向けてセイガの隣に立ち、直ぐにマジックバッグから魔獣を出せ」
「子供の振りじゃないです。俺はまだ10歳の子供ですギルマス」
「うるさい。もう早く旅に出ろ。いや、薬草係りが泣くな・・・仕方ない、仲間のケガが良くなるまで、薬草採取だけしていろ。お前はどんなに頑張っても、安全のため2年はEランクのままだからな」
全然納得できないことを言われながら、俺はみんなと一緒に解体場へと向かう。
俺のことを心から心配し、守ろうとしてくれるギルマスに感謝し、みんなの好意も嬉しくて、俺は子供らしい笑顔で階段を降りていく。
いったいそれは何だぁ? みたいに怪訝な表情で皆が俺を睨む。
「家の武器庫に入ってたんです。きっと父さんの本だと思います」
「「はあ? サイモンが本? パリージアじゃなくて?」」
ギルマスもセイガさんもなんて失礼なんだ。確かに父さんが本を読んでいるところなんか見たことないけど、武器庫は父さんが管理してたから、母さんの本じゃないはずだ。
いや、でも、よく考えたら、父さんが【上級魔法と覇王の遺言】を読んでいたら、雷撃や他の魔法が使えたはずだ。
……あれ? これは母さんに確認した方がいいかもしれない。せっかく2年以上も自由な冒険者生活を送れるんだから、家に帰ったっていいよな。
「とりあえず最初の目的地をサーシム領にして、リドミウムの森とティー山脈で香木を探します。ヨウキ村に戻って母に秘伝の書について訊いてみます」
「ああ、そうしてくれ。セイガ、お前、パリージアに会って、この常識知らずの息子をどうやって育てたか確認しろ。それまで秘伝の書? とかいう本の使用を禁止する。・・・それから、仲間を助ける行為は間違っていないが、本来Eランク冒険者が助ける方に回ることはない」
ギルマスはセイガさんに指示を出し、頭を抱え再び大きな溜め息をついた。
なんか酷い言われようだけど、これ以上言い返してギルマスを怒らせるのは得策じゃない。ここは引き下がって、早く薬草担当のお姉さんに買取りして貰おう。
「【宵闇の狼】と【太陽と月】のメンバー全員に、王都支部のギルマスであるベイクドとサブギルマスのダルトン、そして龍山支店のギルマスである俺から命令を伝える。これから話すことは口外禁止であることは勿論だが、人の命と冒険者ギルドの意地が懸かっていると思え」
ギルマスが急に真面目な顔をして、低い声で俺以外のメンバーを睨みながら言った。
さっきまでの気さくな感じではなく、ピリピリと緊張感が伝わってくる。
セイガさんをはじめ全員が背筋を伸ばし、姿勢を正した。
「今回の魔獣の討伐に、アコルは一切関わっていない。常識外れの攻撃や治療や魔方陣、それらの全てをお前たちは見ていなかった。よって、アコルに報酬は分けない」
「はあ? 何だよそれ」と、セイガさんが怒気のこもった声をあげる。
「それは納得できません」と、ホルクスさんも首を横に振る。
「よく聞け。10年以内に……魔獣の大氾濫が起こる。
その前兆として、各地で魔獣の変異種が村を襲い始めた。
軍と魔法省は討伐隊を組んで、冒険者ギルドも優秀なAランクパーティーを出した。だが、結果は魔法省と軍の無能な指導者によって、冒険者は15人以上も殺され、6人もの重傷者を出した。
そのことは、お前たちも噂で知っているだろう。
今後冒険者ギルドは、魔法省がA級魔法師を出さないのなら、討伐に協力しないと決めた。
そこで魔法省の無能な副大臣は、魔獣の変異種を倒すため、妖精と契約できる魔術師を使おうと考えた。
だが現在、妖精と契約できるのはレイム公爵家とサナヘ侯爵家の血族だけだ。
この二つの高位貴族家は、魔法省の副大臣であるヘイズ侯爵と対立している。
まあ、誰だって妖精と契約できる希少な魔術師を、無能な魔法省に使われたくはないだろう。みすみす死出の旅に行かせるようなもんだからな。
そんな時、一人の子供が妖精と契約し、その事を多くの職場の同僚に知られてしまった。
運悪く、その職場の人間の中に、無能な魔法省副大臣ヘイズ侯爵の甥が居た。
直ぐに子供を確保し、捨て駒にしようと企んだが、間一髪で逃げ出した。
それがアコルだ」
「「「 はあ?!!! 」」」
信じられないとばかりに大きな声が揃い、全員の視線が俺に向けられた。
半分は口を半開きにし、半分は現実が受け入れられずぼ~っとしている。
そんな視線を向けられたら、そ~っと逸らすのが普通だよな。
……ああ、今日は月夜だな。窓の外が明るいや。お腹空いたなぁ・・・
「アコル、お前のことだろうが! 何を他人事のようにしてるんだよ本当に。
こいつは何せ魔力量も並みじゃない。おまけに魔術師でもないのに魔方陣まで使えることが知られたら、絶対に先陣に立たされて殺される。
冒険者ギルドは、将来有望な冒険者を守らねばならない!
セイガ、【宵闇の狼】の最も重要な任務は、アコルを魔法省や軍から守ることだ。
いいな、アコルのことは絶対に口外するな。助けられたことも、マジックバッグのことも忘れろ!
少しでも漏らせば、命の恩人であるアコルを殺すことになるぞ」
ギルマスの声は次第に低くなり、意識して魔力を漏らしているのか完全に威圧している。後ろで立っていた【太陽と月】の若者は、腰が抜けたようにへたりこんだ。
ダルトンさんも会頭の部屋で魔力を漏らしてたけど、目の前のギルマスの威圧は半端ない。とにかく顔が元々怖いから、俺も少し背筋が寒くなった。
「返事は?」
「はい分かりました。アコルは今回の討伐に関わっていませんでした。そして、見たことも聞いたことも全て忘れます。口外しないと誓います」
【宵闇の狼】のリーダーであるセイガさんは立ち上がり、青い顔をしてそう言った。他のメンバーもコクコクと頷いて了解する。言葉にしたくても、ギルマスが怖すぎて声が出せないみたいだ。
「皆さん、いろいろとご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。俺は薬草採取の報酬だけで充分です。ですから、早く俺の……いや、モンブラン商会のマジックバッグから、新種の魔獣を出させてください」
せっかく新種の魔獣を討伐したかも知れないのに、俺の話なんかで暗くなるのは止めて欲しい。きっと下で他の冒険者も新種の魔獣を見ようと待ち構えているはずだ。
「そうだった。そんな話もあったな。ん? 新種? 今、新種と言ったか?」
「ええ~っ、聞いてなかったんですかギルマス、耳が遠くなったんじゃないですか」
せっかく明るく言ったのに、何故か特大の拳骨を落とされてしまった。
セイガさんまで、俺の頭を拳でグリグリしてくる。
「痛い! きゃー、リーダーがいたいけな子供を虐めます。助けてー」
「そんなとこだけ子供の振りをするな。アコル、魔物の解体場に到着したら、見物人に背を向けてセイガの隣に立ち、直ぐにマジックバッグから魔獣を出せ」
「子供の振りじゃないです。俺はまだ10歳の子供ですギルマス」
「うるさい。もう早く旅に出ろ。いや、薬草係りが泣くな・・・仕方ない、仲間のケガが良くなるまで、薬草採取だけしていろ。お前はどんなに頑張っても、安全のため2年はEランクのままだからな」
全然納得できないことを言われながら、俺はみんなと一緒に解体場へと向かう。
俺のことを心から心配し、守ろうとしてくれるギルマスに感謝し、みんなの好意も嬉しくて、俺は子供らしい笑顔で階段を降りていく。
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