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サンタさん、目標を決める
36 聖地イオナ(5)
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「これって魔術具だよね?」
ペタペタと銀色の扉のような物を触りながら、アレス君が問う。
「うん、私もそう思う。きっとこの赤と黒のスイッチを押せば・・・あれ、斜めから見たら、このスイッチも魔核みたい。
この遺跡っていうか施設は、全て移動する度に魔力が必要ってこと?
私の魔力って、あとどのくらい残っているのかなぁ? ねえサーク爺分かる?」
赤と黒のスイッチを睨みながら、私は魔力量についてサーク爺に質問する。
「サーク爺? あれ、トキニさん?」
「どうしたのサンタさん?」
「ど、ど、どうしようアレス君、サーク爺とトキニさんが居ない・・・」
「えっ? いつから?」
私は凄く不安になって、アレス君の腕を掴んで2人の守護霊がいないことを知らせる。
「最初の扉を開けて階段を登っている時は一緒だった。
2つ扉の空間に居た時は・・・微かに2人の話が聞こえていたと思う」
「それじゃ、ひとつ前の空間に戻ってみよう。あっ、此処って元の場所に戻れないんだったっけ?」
そう言いながらアレス君は、元の空間に戻るため、閉じた扉を開けることができるかどうかを調べ始めた。
アレス君の言葉を理解したかのように、光猫のシリスがにゃ~んと鳴いて、扉の下の部分をガリガリと引っ搔いて何かを知らせてくれる。
よく見たら、この扉には内側にも魔核が埋め込まれていた。
アレス君がその魔核に魔力を流すと、綺麗な紫色になって再びガチャリと音がして、ゆっくりと扉が開いた。
開いた途端、サーク爺とトキニさんの「聞こえるかサンタや」というサーク爺の声と、「サンタさん、無事でよかった」というトキニさんの声が聞こえた。
『どうやらこの先には、何かの結界が張ってあるようじゃ。
わしの見解じゃと、この空間までは超古代文明紀に作られたものじゃと思うが、この先は魔術具が使われておるから、高度文明紀に作られたものと思われる』
私はサーク爺の見解を、直ぐアレス君に伝える。
「この先に進みたいけど、私とアレス君の魔力が足りるかどうか分からないんだけど、どうかなあサーク爺」
『この先の魔術具に、どれだけの魔力が必要なのか、わしが確かめることができんから、今日はここで諦める方がいいじゃろう。
どうしても先に進みたいなら、高位・魔術師くらいは同行させるべきじゃ。
わしらはこの先にすすめんから、何かあっても助けられん』
「そうだね。もしかしたら帰れなくなるかもしれないし・・・」
先に進みたい気持ちは強いけど、アレス君を危険に晒すことはダメだ。
あっ、アレス君のアロー公爵家は、祖父も父親も高位・魔術師だ。
トレジャーハンター協会の魔術師では、この先の扉まで進むことはできないだろうから、ホッパーさんに頼んで公爵様に来てもらおう。
そう言えば、毒を盛られて療養中のお父さんは大丈夫かな?
「アレス君、今回はここまでにしよう。魔術具がきちんと作動しない可能性もあるし、魔術具のことをもっと勉強してから出直すか、高位・魔術師の信用できる大人を連れてきて再挑戦しよう」
「うん、そうだね。その方がいいかもね」と、少し残念そうだけど、アレス君も同意してくれた。
先程ファーズさんが開けた扉の魔核に、今度は私が魔力を流す。
そして、ガチャリと開いた扉から地上に出た。
「何ここ!」って、私とアレス君の声が揃う。
そこは【聖なる地】の、あの巨大な三角の遺跡の石段の途中だった。
高さで言えば遺跡の3分の1くらいの地点だけど、地上からは5メートル、いや8メートルはあると思う。
閉じた扉を振り返ると、そこに扉があることが分からないくらい、表面は周辺の巨石と同じ素材で作られていて見分けがつかない。
扉らしき装飾もなければ、取っ手や魔核も埋め込まれていない。
……ここも完全に一方通行だ。外からは入れそうにない。
私はアレス君に頼んで、扉があった場所の下方に目印となるよう絵具で太陽と月を小さく描いてもらった。
「どうしよう・・・私、こんな大きな石積みを一人じゃ下りれない」
「僕も無理だと思う。ファーズさんは何処だろう?」
2人でファーズさんの姿を探していると、トキニさんがこの場所の裏側には、子供でもギリギリ上り下りできそうな階段があると教えてくれた。
落ちないよう気を付けながら裏というか表?側に回ると、地上に下りたファーズさんがイオナロードの方に向かって歩いているのが見えた。
……ああ良かった。
「ファーズさーん!」
2人で手を振りながら叫んで、ゆっくりと階段を下りていく。
地上に下りて合流した私たちは、他のメンバーが来るまで巨大な柱だけが残る神殿のような場所で待つことにした。
「あの巨大な三角遺跡の中に、まさか道が通じてるとは思わなかったね」
「そうだよね、びっくりだよねアレス君。しかも、魔法使いしか入れないってとこが、ワクワクするよね」
「そうなんだが、協会の魔術師だけでは調査ができないってことだ。
どうしたもんかなぁ・・・しかも、一方通行だからなあ。
あれだけのお宝・・・じゃなくて、あの扉の魔核を使った開閉技術だけでも、未知の魔術具として認定される大発見だぞ。まあ、解体できそうにないが」
ファーズさんは浮かれている私たちとは違い、協会の幹部として今後のことを考えているみたい。
最初の金や宝石や魔核まで使った扉は、どうやら魔術具扱いになるらしい。
待つこと20分、仲間の半数が地上に出てきた。
私たちの姿を見たサブチーフが、最初の扉の前で待っている他のメンバーを呼びに戻った。
……お爺様やホッパーさんを、心配させちゃったな。
再会したお爺様によると、最速踏破者のメンバーが日頃の私の無茶ぶりを暴露し、絶対に大丈夫だと言ったらしい。
うちのメンバーの中ではサンタさんが一番強いとか、サーク爺とトキニさんも付いてるから、私は1人でもパーティーを組んでいるに等しいとか、本当に何を言ってくれてるのかしら?
……うぅぅ、お爺様の笑顔が怖いんだけど。まだ王都には行きたくないのに。
思わぬ発見やハプニングはあったけど、全員が揃って【聖なる地】をぐるりと視察し、今日のところは帰ることにした。
……あの扉のことは、暫く公表されないだろうな。
ペタペタと銀色の扉のような物を触りながら、アレス君が問う。
「うん、私もそう思う。きっとこの赤と黒のスイッチを押せば・・・あれ、斜めから見たら、このスイッチも魔核みたい。
この遺跡っていうか施設は、全て移動する度に魔力が必要ってこと?
私の魔力って、あとどのくらい残っているのかなぁ? ねえサーク爺分かる?」
赤と黒のスイッチを睨みながら、私は魔力量についてサーク爺に質問する。
「サーク爺? あれ、トキニさん?」
「どうしたのサンタさん?」
「ど、ど、どうしようアレス君、サーク爺とトキニさんが居ない・・・」
「えっ? いつから?」
私は凄く不安になって、アレス君の腕を掴んで2人の守護霊がいないことを知らせる。
「最初の扉を開けて階段を登っている時は一緒だった。
2つ扉の空間に居た時は・・・微かに2人の話が聞こえていたと思う」
「それじゃ、ひとつ前の空間に戻ってみよう。あっ、此処って元の場所に戻れないんだったっけ?」
そう言いながらアレス君は、元の空間に戻るため、閉じた扉を開けることができるかどうかを調べ始めた。
アレス君の言葉を理解したかのように、光猫のシリスがにゃ~んと鳴いて、扉の下の部分をガリガリと引っ搔いて何かを知らせてくれる。
よく見たら、この扉には内側にも魔核が埋め込まれていた。
アレス君がその魔核に魔力を流すと、綺麗な紫色になって再びガチャリと音がして、ゆっくりと扉が開いた。
開いた途端、サーク爺とトキニさんの「聞こえるかサンタや」というサーク爺の声と、「サンタさん、無事でよかった」というトキニさんの声が聞こえた。
『どうやらこの先には、何かの結界が張ってあるようじゃ。
わしの見解じゃと、この空間までは超古代文明紀に作られたものじゃと思うが、この先は魔術具が使われておるから、高度文明紀に作られたものと思われる』
私はサーク爺の見解を、直ぐアレス君に伝える。
「この先に進みたいけど、私とアレス君の魔力が足りるかどうか分からないんだけど、どうかなあサーク爺」
『この先の魔術具に、どれだけの魔力が必要なのか、わしが確かめることができんから、今日はここで諦める方がいいじゃろう。
どうしても先に進みたいなら、高位・魔術師くらいは同行させるべきじゃ。
わしらはこの先にすすめんから、何かあっても助けられん』
「そうだね。もしかしたら帰れなくなるかもしれないし・・・」
先に進みたい気持ちは強いけど、アレス君を危険に晒すことはダメだ。
あっ、アレス君のアロー公爵家は、祖父も父親も高位・魔術師だ。
トレジャーハンター協会の魔術師では、この先の扉まで進むことはできないだろうから、ホッパーさんに頼んで公爵様に来てもらおう。
そう言えば、毒を盛られて療養中のお父さんは大丈夫かな?
「アレス君、今回はここまでにしよう。魔術具がきちんと作動しない可能性もあるし、魔術具のことをもっと勉強してから出直すか、高位・魔術師の信用できる大人を連れてきて再挑戦しよう」
「うん、そうだね。その方がいいかもね」と、少し残念そうだけど、アレス君も同意してくれた。
先程ファーズさんが開けた扉の魔核に、今度は私が魔力を流す。
そして、ガチャリと開いた扉から地上に出た。
「何ここ!」って、私とアレス君の声が揃う。
そこは【聖なる地】の、あの巨大な三角の遺跡の石段の途中だった。
高さで言えば遺跡の3分の1くらいの地点だけど、地上からは5メートル、いや8メートルはあると思う。
閉じた扉を振り返ると、そこに扉があることが分からないくらい、表面は周辺の巨石と同じ素材で作られていて見分けがつかない。
扉らしき装飾もなければ、取っ手や魔核も埋め込まれていない。
……ここも完全に一方通行だ。外からは入れそうにない。
私はアレス君に頼んで、扉があった場所の下方に目印となるよう絵具で太陽と月を小さく描いてもらった。
「どうしよう・・・私、こんな大きな石積みを一人じゃ下りれない」
「僕も無理だと思う。ファーズさんは何処だろう?」
2人でファーズさんの姿を探していると、トキニさんがこの場所の裏側には、子供でもギリギリ上り下りできそうな階段があると教えてくれた。
落ちないよう気を付けながら裏というか表?側に回ると、地上に下りたファーズさんがイオナロードの方に向かって歩いているのが見えた。
……ああ良かった。
「ファーズさーん!」
2人で手を振りながら叫んで、ゆっくりと階段を下りていく。
地上に下りて合流した私たちは、他のメンバーが来るまで巨大な柱だけが残る神殿のような場所で待つことにした。
「あの巨大な三角遺跡の中に、まさか道が通じてるとは思わなかったね」
「そうだよね、びっくりだよねアレス君。しかも、魔法使いしか入れないってとこが、ワクワクするよね」
「そうなんだが、協会の魔術師だけでは調査ができないってことだ。
どうしたもんかなぁ・・・しかも、一方通行だからなあ。
あれだけのお宝・・・じゃなくて、あの扉の魔核を使った開閉技術だけでも、未知の魔術具として認定される大発見だぞ。まあ、解体できそうにないが」
ファーズさんは浮かれている私たちとは違い、協会の幹部として今後のことを考えているみたい。
最初の金や宝石や魔核まで使った扉は、どうやら魔術具扱いになるらしい。
待つこと20分、仲間の半数が地上に出てきた。
私たちの姿を見たサブチーフが、最初の扉の前で待っている他のメンバーを呼びに戻った。
……お爺様やホッパーさんを、心配させちゃったな。
再会したお爺様によると、最速踏破者のメンバーが日頃の私の無茶ぶりを暴露し、絶対に大丈夫だと言ったらしい。
うちのメンバーの中ではサンタさんが一番強いとか、サーク爺とトキニさんも付いてるから、私は1人でもパーティーを組んでいるに等しいとか、本当に何を言ってくれてるのかしら?
……うぅぅ、お爺様の笑顔が怖いんだけど。まだ王都には行きたくないのに。
思わぬ発見やハプニングはあったけど、全員が揃って【聖なる地】をぐるりと視察し、今日のところは帰ることにした。
……あの扉のことは、暫く公表されないだろうな。
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