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19 揺れる想い(1)
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◇◇ 中川 悠希 ◇◇
9月24日、春樹の歌は俺の予想を越えて、ポイントランキングでベスト10に入っていた。
春樹が作った映画用の曲を初めて聴いた時は、春樹には音楽の才能があるのではないかと軽く思った程度だった。
しかし【青い彼方】を聴いてみたら、凄く心が揺さぶられた。
ますます春樹を好きになり、春樹を俺に繋ぎ止めるため、俺は欲を出してしまった。
その結果がこれだ。このままでは、春樹の将来や人生を変えてしまうかもしれない。
もしも入賞したりして、春樹の個人情報や顔や通っている高校等が表に出たら、大変なことになるだろう。
自分の手元に閉じ込めておきたかった目標は、完全に達成されないどころか、心配事が増えて、また眠れない日々が戻ってきそうだ。
春樹に近付く害虫が増えるのは間違いない。
一番気掛かりなのは、伯がエイブだと覚醒し、春樹がラルカンドだと分かってしまうことだ。間違いなく、2人の距離は一気に近付くだろう。
既に春樹は、無意識に伯を意識していた。
俺だけが3人の関係を知っているが、俺は自分がガレイル王子であると知られたくない。知られてしまえば、2人は俺を警戒する。特にエイブである伯は、春樹を俺に近付けたくないだろう。
伯のバンドが【青い彼方】を文化祭で歌ったあの日、歯車は大きく回り始めた。
いや違う、そうじゃない。
俺が自分の欲のために【青い彼方】をコンテストに出品したことで、運命の歯車を回してしまったんだ。
自業自得……いや、もしかしたら、それさえも決められていた運命なのだろうか?
そんな不安な気持ちを引き摺ったまま目覚めた翌日、俺は元気を補充するため部活に顔を出した。こんな時は、春樹の笑顔でライフポイントを上げるしかない。
春樹は俺の期待に応えるかのように、相談があるから部活後スタジオに寄りたいと言ってきた。
当然笑顔で了解したが、相談って何だろう? コンテストのことだろうか?
一抹の不安を抱えながら、俺は春樹を連れて家に帰った。
そして衝撃の話を聞いてしまう。
相談内容を聴いた俺は、完全に頭に血がのぼった。
山見高の先輩に、無理矢理付き合えと脅され、電車の中で体を触られたと。……そして、事もあろうに伯に助けられたと。
俺は感情が押さえられず「何だと! 体を触られた?」と大声を上げ、思わず春樹を睨んでしまった。被害者である春樹を睨んだのは、半分は敵に対する怒り、半分は伯が助けたこと対する焦りからだ。
「いや、頭とか肩とかですけど・・・ちょっとヤバイ先輩で、暴力行為で停学になったりしてて、助けてくれた伯が、啓太や蒼空先輩にも相談した方がいいと言うので、マ〇クで相談に乗って貰ったんです」
俺の余裕のない態度に、春樹が慌てて頭や肩だったと説明し、伯に助けられた後の話をチラリとした。
「春樹、包み隠さず全部話せ。昨日の話し合いの内容も、相手のことも全部だ!」
俺は冷静になれ落ち着けと自分に言い聞かせながら、感情が表に出ないよう怒りや焦りを押し込めながら、春樹に全部話せと命令した。
「レイプ? 啓太にもう抱いたのかと訊いただと! 文化祭の時のヤツか?」
ゲス野郎の説明を聞いた俺は、相手が文化祭の時の男だと確信し、あのにやけた顔を思い出し拳を強く握った。
ゲス野郎はまるで、ガレイル王子の記憶の中に登場する、同じ歳の侯爵家の次男と行動や言動がそっくりだった。猟奇的な視線も、考え方も、しつこさも……完全にリンクしている。
あの侯爵家の次男を撃退したのは、ガレイル王子ではなくエイブだった。エイブは決闘を申し込んだのだ。
まさか新入生に負けるとは思わなかった男は、大勢の騎士学校の学生の前でエイブを叩きのめし、ラルカンドを抱き人形にしてやると宣言していた。だが終わってみれば、捩じ伏せたのはエイブだった。
「それで伯は、伯はお前になんて言ったんだ?」
前世の記憶で混乱する頭を静めるため、俺はグレープフルーツジュースを一口だけ飲み、その先を確認するのが怖くて、冷静に話を聴くため窓の方に移動しながら伯のことを質問した。
「ええっと、強くなれとか、自分の身は自分で守れとか、いつも警戒している啓太の気持ちが分かったとか、俺が傷つけられるのは嫌だとか……スクールバスが一番安全だからバスにしてくれって……」
きっと春樹は嬉しそうに伯の話をしているはずだ。俺はその顔を見る自信がない。少し弾んだような、惚気るような声で、自分を救ってくれた男の話をする春樹に、分かっていたはずだ! と己を戒める。
いろいろな感情が沸き上がってくるのを必死で押さえて、窓の外の景色を見て大きく息を吐く。
俺は春樹の顔を見ないまま「そうか」と答えて、一気にカーテンを閉めた。
ダメだ! 感情的になるな! もう失敗しないと決心しただろう! と心の中で叫びながらも、伯に対する嫉妬心と、抗えない運命に絶望しそうになる。
「西陽が眩しいから……クソッ、同じか……そのタイミングで助けに現れるのか」
懸命に押さえていた感情が、思わず溢れ出てしまう。
……どうして、何故、俺は細心の注意を払いながら、前世と同じことにならないよう努力してるのに、伯は、エイブはまたラルカンドである春樹を助けてしまうんだ!
押さえろ! 春樹に感情をぶつけるな! と、中川悠希である俺が歯を食い縛って止めようとするが、ガレイル王子の悔しい思いが止められず、ツカツカと早足で春樹の所に向かい、座っている春樹を抱き締めた。
「春樹、あんまり心配させるな……俺はもう失敗したくない。お前を失いたくないんだ」
どうしても押さえきれない感情が、行動と言葉になって溢れてしまった。
……抱き締めた春樹に好きだと言いたい。
……このまま押し倒して、春樹は俺のものだと印を付けたい。
……伯に、エイブに春樹を渡したくない!
俺は自分の危うい感情と必死で戦う。思いをぶつけたら終わりなんだと、自分とガレイル王子の気持ちを抑え込む。
でも、抱き締めた腕に思わずギュッと力が入る。春樹の背に触れた指先が、もっと触りたいと動こうとする。辛うじて残っている理性で指の動きを止めると、指先が震えてしまう。
春樹の温もりを感じながら葛藤していると、突然春樹が俺の背中に手を回してきた。
思わず動揺し目を見開いて固まると、春樹は俺の背中をポンポンと、まるで子供をあやすように優しく右手でリズムをとり始めた。
時間にして3分? いや5分?……春樹の温もりと優しさに、極上の幸せを感じながら、俺は抱き締めていた腕を緩めた。そして春樹から体を離して隣に座り直した。
ジュースを一気に飲み干し「ごめん、気が動転した」と言って俺は謝った。
「いいえ、心配かけてすみません」と、春樹は小さな声で言いながら微笑んだ。
「まあ、いつの時代にも害虫のようなヤツはいる。捻り潰してもいいが、無視するのが一番だろう。俺だって啓太たちと一緒だ。何かあればお前を守る。最善の方法でな」
春樹の微笑みに救われ、冷静さを取り戻した俺は、部活の先輩であり頼れる先輩として、いつもの調子で守ってやると宣言した。
「先輩が捻り潰すなんて言ったら、本当にやりそうで心配です」
春樹はちょっとビビった感じだけど、そう言って嬉しそうに笑った。
10月1日、いよいよポイント投票結果が発表される。
間違いなく10位以内には入るだろうと確信し、お祝いを兼ねて2人でパーティーをすることにし、昨日ラインで泊まれる準備をしてこいと指示を出しておいた。
久し振りにラルカンドから拒絶される夢を見て、泣きながら目覚めた俺は、自分をより強く戒める。
もう感情を乱したりしない。春樹を失えば、俺はまともに生きていけないのだと、己にしっかりと言い聞かせた。
ここ数日間の葛藤が功を奏して、俺は終始笑顔で春樹と過ごせた。
4位に入ったことを2人で喜び、これからの活動について話し合う。
入賞は無理だろうけど、歌は発信し続けようと約束し合って、次はバラードもいいんじゃないかと提案してみた。
例え俺のための詩じゃなくても、春樹が愛を歌う姿が見れて、甘い声で歌ってくれたら幸せだ。
運命は変えられないかもしれない。
動き始めた歯車も止められない。それでも俺は懸命に抗って、春樹の側に居る。
春樹の喜ぶ顔を見るためなら、エイブである伯だって受け入れる。
敵ではないと刷り込み、仲良くするくらい何でもない。
俺は俺にできる精一杯で春樹を応援し、守り、必要とされる男になってみせる。
流石に一緒に風呂に入るのは遠慮したが、同じ部屋で眠れる夜を迎えられたことに、俺は自分で自分を褒めた。
そして、決して全てが前世と同じではないのだと実感し、嬉しくてなかなか眠れなかった。
春樹の寝顔を見て、春樹の吐息を聞いて、安心して深い眠りに入ったのは、午前2時を過ぎた頃だった。
いつもより少し早く目覚めた俺は、ガレイル王子の夢を見て泣いていた。
ハッと慌てて起き上がり、隣に寝ていた春樹の布団を見ると、そこに姿はなかった。
既に起きていた春樹は、着替えを済ませていて、いつもとはどこか違う雰囲気で、窓辺に置いてある長椅子に座って、外の庭を眺めていた。
「おはようございますガレイル王子。今朝は少し肌寒いですね」
俺の方に体の向きを変えた春樹は、朝日を浴びて瞳は青み掛かっており、髪の毛の半分が群青色になっていた。
そして・・・信じられない挨拶を俺にした。
9月24日、春樹の歌は俺の予想を越えて、ポイントランキングでベスト10に入っていた。
春樹が作った映画用の曲を初めて聴いた時は、春樹には音楽の才能があるのではないかと軽く思った程度だった。
しかし【青い彼方】を聴いてみたら、凄く心が揺さぶられた。
ますます春樹を好きになり、春樹を俺に繋ぎ止めるため、俺は欲を出してしまった。
その結果がこれだ。このままでは、春樹の将来や人生を変えてしまうかもしれない。
もしも入賞したりして、春樹の個人情報や顔や通っている高校等が表に出たら、大変なことになるだろう。
自分の手元に閉じ込めておきたかった目標は、完全に達成されないどころか、心配事が増えて、また眠れない日々が戻ってきそうだ。
春樹に近付く害虫が増えるのは間違いない。
一番気掛かりなのは、伯がエイブだと覚醒し、春樹がラルカンドだと分かってしまうことだ。間違いなく、2人の距離は一気に近付くだろう。
既に春樹は、無意識に伯を意識していた。
俺だけが3人の関係を知っているが、俺は自分がガレイル王子であると知られたくない。知られてしまえば、2人は俺を警戒する。特にエイブである伯は、春樹を俺に近付けたくないだろう。
伯のバンドが【青い彼方】を文化祭で歌ったあの日、歯車は大きく回り始めた。
いや違う、そうじゃない。
俺が自分の欲のために【青い彼方】をコンテストに出品したことで、運命の歯車を回してしまったんだ。
自業自得……いや、もしかしたら、それさえも決められていた運命なのだろうか?
そんな不安な気持ちを引き摺ったまま目覚めた翌日、俺は元気を補充するため部活に顔を出した。こんな時は、春樹の笑顔でライフポイントを上げるしかない。
春樹は俺の期待に応えるかのように、相談があるから部活後スタジオに寄りたいと言ってきた。
当然笑顔で了解したが、相談って何だろう? コンテストのことだろうか?
一抹の不安を抱えながら、俺は春樹を連れて家に帰った。
そして衝撃の話を聞いてしまう。
相談内容を聴いた俺は、完全に頭に血がのぼった。
山見高の先輩に、無理矢理付き合えと脅され、電車の中で体を触られたと。……そして、事もあろうに伯に助けられたと。
俺は感情が押さえられず「何だと! 体を触られた?」と大声を上げ、思わず春樹を睨んでしまった。被害者である春樹を睨んだのは、半分は敵に対する怒り、半分は伯が助けたこと対する焦りからだ。
「いや、頭とか肩とかですけど・・・ちょっとヤバイ先輩で、暴力行為で停学になったりしてて、助けてくれた伯が、啓太や蒼空先輩にも相談した方がいいと言うので、マ〇クで相談に乗って貰ったんです」
俺の余裕のない態度に、春樹が慌てて頭や肩だったと説明し、伯に助けられた後の話をチラリとした。
「春樹、包み隠さず全部話せ。昨日の話し合いの内容も、相手のことも全部だ!」
俺は冷静になれ落ち着けと自分に言い聞かせながら、感情が表に出ないよう怒りや焦りを押し込めながら、春樹に全部話せと命令した。
「レイプ? 啓太にもう抱いたのかと訊いただと! 文化祭の時のヤツか?」
ゲス野郎の説明を聞いた俺は、相手が文化祭の時の男だと確信し、あのにやけた顔を思い出し拳を強く握った。
ゲス野郎はまるで、ガレイル王子の記憶の中に登場する、同じ歳の侯爵家の次男と行動や言動がそっくりだった。猟奇的な視線も、考え方も、しつこさも……完全にリンクしている。
あの侯爵家の次男を撃退したのは、ガレイル王子ではなくエイブだった。エイブは決闘を申し込んだのだ。
まさか新入生に負けるとは思わなかった男は、大勢の騎士学校の学生の前でエイブを叩きのめし、ラルカンドを抱き人形にしてやると宣言していた。だが終わってみれば、捩じ伏せたのはエイブだった。
「それで伯は、伯はお前になんて言ったんだ?」
前世の記憶で混乱する頭を静めるため、俺はグレープフルーツジュースを一口だけ飲み、その先を確認するのが怖くて、冷静に話を聴くため窓の方に移動しながら伯のことを質問した。
「ええっと、強くなれとか、自分の身は自分で守れとか、いつも警戒している啓太の気持ちが分かったとか、俺が傷つけられるのは嫌だとか……スクールバスが一番安全だからバスにしてくれって……」
きっと春樹は嬉しそうに伯の話をしているはずだ。俺はその顔を見る自信がない。少し弾んだような、惚気るような声で、自分を救ってくれた男の話をする春樹に、分かっていたはずだ! と己を戒める。
いろいろな感情が沸き上がってくるのを必死で押さえて、窓の外の景色を見て大きく息を吐く。
俺は春樹の顔を見ないまま「そうか」と答えて、一気にカーテンを閉めた。
ダメだ! 感情的になるな! もう失敗しないと決心しただろう! と心の中で叫びながらも、伯に対する嫉妬心と、抗えない運命に絶望しそうになる。
「西陽が眩しいから……クソッ、同じか……そのタイミングで助けに現れるのか」
懸命に押さえていた感情が、思わず溢れ出てしまう。
……どうして、何故、俺は細心の注意を払いながら、前世と同じことにならないよう努力してるのに、伯は、エイブはまたラルカンドである春樹を助けてしまうんだ!
押さえろ! 春樹に感情をぶつけるな! と、中川悠希である俺が歯を食い縛って止めようとするが、ガレイル王子の悔しい思いが止められず、ツカツカと早足で春樹の所に向かい、座っている春樹を抱き締めた。
「春樹、あんまり心配させるな……俺はもう失敗したくない。お前を失いたくないんだ」
どうしても押さえきれない感情が、行動と言葉になって溢れてしまった。
……抱き締めた春樹に好きだと言いたい。
……このまま押し倒して、春樹は俺のものだと印を付けたい。
……伯に、エイブに春樹を渡したくない!
俺は自分の危うい感情と必死で戦う。思いをぶつけたら終わりなんだと、自分とガレイル王子の気持ちを抑え込む。
でも、抱き締めた腕に思わずギュッと力が入る。春樹の背に触れた指先が、もっと触りたいと動こうとする。辛うじて残っている理性で指の動きを止めると、指先が震えてしまう。
春樹の温もりを感じながら葛藤していると、突然春樹が俺の背中に手を回してきた。
思わず動揺し目を見開いて固まると、春樹は俺の背中をポンポンと、まるで子供をあやすように優しく右手でリズムをとり始めた。
時間にして3分? いや5分?……春樹の温もりと優しさに、極上の幸せを感じながら、俺は抱き締めていた腕を緩めた。そして春樹から体を離して隣に座り直した。
ジュースを一気に飲み干し「ごめん、気が動転した」と言って俺は謝った。
「いいえ、心配かけてすみません」と、春樹は小さな声で言いながら微笑んだ。
「まあ、いつの時代にも害虫のようなヤツはいる。捻り潰してもいいが、無視するのが一番だろう。俺だって啓太たちと一緒だ。何かあればお前を守る。最善の方法でな」
春樹の微笑みに救われ、冷静さを取り戻した俺は、部活の先輩であり頼れる先輩として、いつもの調子で守ってやると宣言した。
「先輩が捻り潰すなんて言ったら、本当にやりそうで心配です」
春樹はちょっとビビった感じだけど、そう言って嬉しそうに笑った。
10月1日、いよいよポイント投票結果が発表される。
間違いなく10位以内には入るだろうと確信し、お祝いを兼ねて2人でパーティーをすることにし、昨日ラインで泊まれる準備をしてこいと指示を出しておいた。
久し振りにラルカンドから拒絶される夢を見て、泣きながら目覚めた俺は、自分をより強く戒める。
もう感情を乱したりしない。春樹を失えば、俺はまともに生きていけないのだと、己にしっかりと言い聞かせた。
ここ数日間の葛藤が功を奏して、俺は終始笑顔で春樹と過ごせた。
4位に入ったことを2人で喜び、これからの活動について話し合う。
入賞は無理だろうけど、歌は発信し続けようと約束し合って、次はバラードもいいんじゃないかと提案してみた。
例え俺のための詩じゃなくても、春樹が愛を歌う姿が見れて、甘い声で歌ってくれたら幸せだ。
運命は変えられないかもしれない。
動き始めた歯車も止められない。それでも俺は懸命に抗って、春樹の側に居る。
春樹の喜ぶ顔を見るためなら、エイブである伯だって受け入れる。
敵ではないと刷り込み、仲良くするくらい何でもない。
俺は俺にできる精一杯で春樹を応援し、守り、必要とされる男になってみせる。
流石に一緒に風呂に入るのは遠慮したが、同じ部屋で眠れる夜を迎えられたことに、俺は自分で自分を褒めた。
そして、決して全てが前世と同じではないのだと実感し、嬉しくてなかなか眠れなかった。
春樹の寝顔を見て、春樹の吐息を聞いて、安心して深い眠りに入ったのは、午前2時を過ぎた頃だった。
いつもより少し早く目覚めた俺は、ガレイル王子の夢を見て泣いていた。
ハッと慌てて起き上がり、隣に寝ていた春樹の布団を見ると、そこに姿はなかった。
既に起きていた春樹は、着替えを済ませていて、いつもとはどこか違う雰囲気で、窓辺に置いてある長椅子に座って、外の庭を眺めていた。
「おはようございますガレイル王子。今朝は少し肌寒いですね」
俺の方に体の向きを変えた春樹は、朝日を浴びて瞳は青み掛かっており、髪の毛の半分が群青色になっていた。
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