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2章 Queen ANT (アリの女王編)

31. Hole & Ant Queen 2(アナと蟻の女王2)

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 空気が重い!

 まるでその場の重力が一瞬で変化したかの様に体が何倍も重たく感じた。

 ゴゴゴゴゴゴーーーッと轟音がトンネル内を響きわたり異様なまでの威圧感を放ちながらは地面を揺らしながら震えている様子だった。

『予想以上…ええ…予想以上だったわ!ママ!』

 アリなどの昆虫に感情と言うものがあるとしたらまさにが浮かべる表情は歓喜に満ち溢れていた。

『これでやっと…これでやっと…』

 は目の前で起こった出来事を目の当たりにして打ち震え、そして笑みを浮かべた。

「マズイ事になりそうだ!月斗!ココから下がるぞ!一旦引くんだ!」

 堂島が月斗を含む生徒達に声を掛ける。

 それに反応して月斗と陸がくるりと素早く身体を反転させて一目散にその場から逃げ出そうと試みた。

『待って!』

 の思考が脳に伝わる!

「⁈⁈⁈」

「振り返るな!急げ!」

『待って!』さっきからずっとの懇願する様な悲痛な叫びが月斗達の頭の中へ届く。

『行かないで!行かないで!行かないで!』

 何度も何度もお願いする様な悲痛な叫び声とも取れる感情と同時に落ち着き払った様な相反する感情が入り混じっていた。

 次第にゆっくりとその身体から伝わる振動も収まっていく。

『ゴメンなさい…』

 心からの詫びと受け取れるその感情と共に月斗達の周りを取り巻く空気が穏やかに変わっていくのを感じた。

 やがては落ち着きを取り戻し

『ゴメンなさい。驚かせてしまって…』

 月斗達の脳裏に更に思考が流れ込む。

 ゆっくりと身体を地面に下ろすと両膝と両手をついてこうべを垂れた。

 ????土下座⁈

 土下座をしている。

 誰が見ても見事な土下座だった!

 一糸纏いっしまとわぬ姿を露わに両膝をついて正座をし、こうべを垂れて両手の掌を上に向けている!

「どこかで見た事がある……コレは…!!!この所作は……敵意は無いと言うことか⁈」

 人のカタチをしていた。

 蟻の特徴である黒くて硬い外殻を持たず柔らかそうな肌の色は透き通る様に白い。

 頭から伸びた触覚が辛うじて蟻の特徴を呈してはいるが人間の女性の様な柔らかくしなやかな肢体を惜しげも無く晒している。

『ゴメンなさい、驚かせてしまって。』

 再度、一行の脳裏にの思考が伝わって来る。

 無抵抗なの行動に戸惑いながらも敬意を払い堂島は思わず

「頭を上げて下さい。」と口に出した。

 その言葉に反応する様にゆっくりと頭をあげる。

 驚く事にその顔は蟻のソレとは程遠く人間の女性、それもかなり美しい女性の姿をしていた。

 その閉じられた両目には白く長い睫毛が印象的だった。

 アルビノ…その姿を目にした堂島 海里はその身体的特徴からこそがこのコロニーの女王であると確信した。

 白い肌を持った蟻の女王は、ゆっくりとしなやかに身体をくねらせ静かに地面に両足をつけ立ち上がる。

 程よく膨らんだ2つの乳房。

 淡いさくらんぼ色をした乳首と乳輪のバランスは大き過ぎず小さ過ぎない…まさに黄金比と言える。

 そしてくびれた腰から伸びた長い足とその付け根に綺麗に整えられたかの様な白い陰毛は濃過ぎず、ソレでいて薄過ぎず…なんかいい感じだった。

 堂島はその姿を見て慌てて目を背ける。

 月斗達、高校生には…童貞の男子高校生にはかなり刺激が強かった。

 その場の男子全員が固まっている。

『大丈夫です!私の事をエロい目で見ていただいても大丈夫です!いいえ…むしろ見て欲しいのです!』

「!!!」

『何も身に着けてないわたくしの姿を!』

「!!!」

姿わたくしを見て欲しいのです。』

「………」

『興奮してしまってすみません…でも聞いて下さい。』


 こうなったら目を背けるのも逆に失礼だと思い月斗と陸はお互い目配せをした後うなずいて、カッと目を見開いてアリの女王を姿を凝視した。

 堂島 海里は冷静さを装い、鏡の様なサングラスをクイッとしながら身体をやや斜め横に向ける。

 道修 空太の位置からは堂島の目の動きが見える。

 サングラスで目線を隠してはいるが間違いなく女王アリの裸体をガン見している!

 淡路 駿は長い前髪で片方の目を隠してはいるがおそらくもう片方の目で全集中して裸体を直視しているに違い無かった。

 梶に至っては細い目を必死に見開いて普段の顔と随分違う別人の様になっていてキモかった。

『ええ…と、皆さん…すごい、グイグイ来ますね…アア…すごい…予想以上です…』

 横目でガン見しながら平静を装いつつ堂島が質問をする。

「その格好だと寒くないですか?何か上に羽織るとか…」

 その堂島の提案に少し笑みを浮かべてアリの女王は答えた。

『エエ、ありがとう…でも少しも寒くないわ!…むしろ…見られてると思うと…身体がほてって来てしまって…ああああぁ』

『あっ…アア…そっちか!』

 とその場にいる男子たちは思った。

 気を取り直して堂島が質問する。

「さっき我々を待っていた!って言ってましたがどういう意味です?それと他のメンバーは無事なんですか?」

『ええ、そうですね…では順を追ってお話しいたします。』

 そういうと彼女はこれまで閉じていた目を大きく見開いた。

 その白い眼球には黒目や瞳が無い。

「!!!」

『まずあなた方のお連れ様達は働きアリたちにオモテナシを受けています。今頃食事を済まされて街にでも出掛けられてるのでは…」

「街?街があるんですか?みんな無事だと言うのは嘘じゃないでしょうね?」

『ええ、ご覧の様に私達アリには声と言うものがなく…思念波でコミュニケーションを取ります。頭に思い浮かべた事が直接相手に伝わるのです…その為、嘘がつけません…ありのままの感情が相手に伝わるのです…アリだけに…』

「………」

「じゃあさっきの『邪魔物は消えて貰った!』っていうのはどういう意味なんです?嘘がつけないってのが本当なら南たちは消されたって事にならないですか?」

『そうですね…おっしゃる通りです。嘘がつけないと言うことなのでコレを使って思念波を変換したのです。』

 そういって彼女はレトロな雰囲気のリモコンの様なモノを月斗たちに見せた。

「………………」

『ええ、その通りです。』

「???」

『今、その方と思考を通わせました。』

 そう言って女王アリは淡路 駿を指差した。

『その方がご質問なさった様に「こっちに来るな!」は「こっちへ来て!」「中に入るな!」は「中に入って!」「待っています」は「失せろ!このチンカス童貞野郎共!」

 と言う事になります!』

 急にすごい罵声来たーー!

『因みにこのダイヤルで弱、中、強の切替が可能でそれによって効果が変わります!今は弱で使用してますが弱ですらこの効果なのでウッカリ強なんかにダイヤルを合わせてしまうとあなた方の様な童貞包茎野郎共などには即死呪文ザラキ並の効果を発揮してしまいます………失礼ながら、あなた方の思考パターンを読ませていただきました。その結果、逆の事=嘘をつく事によってあなた方にここまで来ていただいたのです』

「………」

『あなた方人間は絶対にこの箱を開けないで下さいね!と言われたらついつい開けてみたくなってしまったり、決してこの障子を開けて中を見ないで下さいねって言われると開けてみたくなったり、押すなよ、押すなよっ、絶対押すなよ!って言われたらついつい押してみたくなったりする!種族だと言う事…』

「最後のはちょっとニュアンスが違うんだが…そんな長いやり取りをこの一瞬で?俺たちには全く聞こえなかった…そうなのか駿?」と言って堂島が駿の方を振り返ると
駿はコクリ!と頷いた。

『ええ、私達アリは相手の思考を読み取るのです。なのであなた方の考えてる事は手に取る様にわかる筈なのです…が…あなた方の種族の特徴なのでしょうか…?言葉で発している内容と思考が一致しない…と言うことが多々あるのですが…何故でしょう』

「⁉︎!!!なるほど…確かに…特に日本には嘘も方便と言う言葉もある…いい嘘ならついても良い…みたいな慣習が自然と身についてるのかも知らない…本音と館前たてまえというのもそうだな。心ではそんなこと思って無くても本心と違う事を口にしてしまう事もある……私幾つに見える?って女の人に歳を聞かれても中々本心で思ってる事を言えない…トラップに引っかかる事もある…」

「アレは聞いて欲しくないですね……」

「聞いてくる女の人は大体自信があって聞いてくるんですよね…」

「ああ!知らんてって言いたいが言えない……外国人は割とストレートに物を言うのに対して日本人はそういった面ではお国柄といったところか…忖度そんたくなんかもしてしまうしな…」

「本当は50歳くらいにしか見えないのに42歳って言ってしまう忖度そんたく

「本当は私今年で82歳なのよ!と言われて「エッ見えないですねー」と言ってしまう忖度そんたく

 堂島は質問をしながらある程度納得をしていった。

「ところでチョイチョイ、あなた方アリが我々の世界の事を言って来るのは何故なんです?我々の事を知ってるんですか?さっきの働きアリ達の会話も関西弁だったり…」

 堂島が質問をする。

『ええ、関西弁って言うのがどう言ったものかわかりませんが…それは直接あなた方の脳に我々の思念が届く際にに言葉が変換されているのです。

「………なるほど、さっきから貴女がありのままの~だとか、アリだけに!だとかオッサンがいいそうな寒いダジャレっぽい事を言うのはそのせいなんですね!」

『ええ、決して私があなた方に寄せていってる訳ではありません。知らんけど!』

「……寄せてる!ってそう感じるのもこちら次第…って事か。」

『ええ… オヤジギャグでも無ければ、少しも寒くもないんです!むしろそう感じるあなた方の方が寒くて痛い童貞野郎なのです。』

「……なるほど!ストレートに何の躊躇いも無くガンガン、ディスって来る!嘘がつけない…か。」

『エエ』

「では先程、貴女(あなた)が発した「の事かー!」ってのは何ですか?」

『エエ…っていうのは女王アリの…』

「えっ!えっ!えっ!えっ⁉︎今、女王アリロボ⁉︎って言った?サラッとロボって言った?」

『エエ、今ここは女王アリの体内の中で「」って言うのは…ちょっと口では説明しにくいんで図で解説しますねー!どうぞこちらに!』

 そう言って彼女は月斗ら一行をそこから先にある部屋へと招き入れた。

「‼︎!!!」

 そこは壁から天井から何から一面にズラリと沢山の計器類…まるで車のスピードメーターやらタコメーターやらアリとあらゆるメーターみたいなのがビッシリと並んでいる部屋だった。

「すごい!!!まるで銀河超特急の機関室みたいだな…こんなの三原さんがみたらめちゃくちゃ喜びそうな…てか、メーター多っ!ってこんなにメーターいる?」

『フフ…驚くのも無理もありませんね。ここは女王アリの出産の管理をする管制室なのです。そしてこの一つ一つのメーターを常に監視して我々はこのコロニー内の働きアリ、兵隊アリ、雄アリなどの割合を調整したりしてコロニー内の人口の管理と維持をしているのです。』

「えっ!出産って女王アリの役目じゃ無いんですか?」

『エエ…本来は私のママが雄のアリとをして受精をしその胎内に一生分の精子を蓄えて休む暇も無く私たち子どもを産み続けていくのですが、私たちのママのママの代から働き方改革ってのが盛んに唱えられる様になって働きアリにも休む権利が与えられ、兵隊アリにも除隊が認められる様になり、女王アリにもそう言った権利が認められる様に改革されたのです。』

「えっと…交尾じゃなくてっていう直接的な表現になってたのは我々の思考のせいって事なんですよね?」

『エエ、その通りです。あなた方のいやらしい妄想がそう言った表現になるのです!私は嫌いでは無いですが!』

「………」

『そして「」というのはあなた方が破壊した子宮靭帯という部分を含めて主にこの辺り一帯の事を言います。』と言ってスクリーンに図が大きく映し出された。

『こちらのスクリーンでいうところのココ!代表的なのがコノ管制室に通じる入り口!あなた方が入って来た辺りにあるコノ小さい豆みたいな突起物の事を主に「クリリソ」って呼んでます。…』

「ワァーーーーーーー!○✖️△⁉︎!!!コレR15じゃダメなヤツじゃないですか?⁉︎」

『???』

『アラ?フフっ!そうなんですか!不思議ですねー!代表的なこの部分はあなた方の世界の呼び方でも似たような呼び方なんですねー!略して「クリちゃん」って言うんですか⁉︎かわいい!』

「ワァーーーーーーー!○✖️△!」

 その場にいる男子高校生たちの顔が真っ赤になる。

「すみませんー!!!、我々の思考を勝手に読むの辞めて貰ってもいいですか…ホントすみません…」

『エッ、ゴメンなさい…気をつけます!』

「…………」

『では気を取り直して本題に移りますね。』

 そう言って彼女は説明を続けた。

「……なるほど、ではその貴女のお母さんが女王アリって事で良いんですね?」

『エエ、あくまでもこのは出産の管理をするのみなので私たちは私たちのママなんです!』

「……アリのママ⁉︎」

『エエ、!そして、本来女王アリは一つのコロニーに1人のみ…と言うのが常識なのです。』

「…………」

『他の…わたくしのお姉さま方は成長しセックスが出来る時期が来ると背中の翅(はね)を広げ雄を求めてと共にコロニーから飛び立って行くのです。』

「セックス…専用のロボ⁉︎」

『いえ…セックス専用のロボではありません…それだとまるでセックスマシーンみたいで物凄く卑猥なロボっていう印象を与えてしまいますわ…そんなものがあるとしたらなんて素敵なんでしょう……そうぢゃ無くて自分専用のロボ…なのです…ですが…私はママの遺伝子を色濃く受け継いだ為、この様に白い肌を持つアルビノとして生まれてしまいました。』

『先天性白皮症!これによって私ははねを持たず…外の世界を知らずにずっとこのの中で暮らしていますの…そう…もう身体は成熟していつでもカモンカモンな状態ですのに…』

『売れ残りのわたくしがいるせいでこのコロニーには女王が2人いるという事です…そう…わたくしのママとわたくしの2人…』

『なので…ママはこのコロニーの蟻達から「蟻の女王1ワンと呼ばれていて…』

1ワン?」

『更に彼女たちはわたくしの事をアナから出て行けない事から2!などと呼ぶのです…』

「………それって若干……ディスられてませんかね?………」

『…………………』

To be contonued in Who Killed Cock Robin (誰が彼女を殺ヤったのか?)
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