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2章 Queen ANT (アリの女王編)
28. The one who almost dies(大体死ぬヤツ)
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堂島 海里32歳。
兵庫県の西宮市にある私立応徳学園高等部の物理教師であり、日向月斗達の所属するハンドボール部の顧問である。
私立応徳学園は、堂島 海里が新任の教師となって2年目にあたる設立から100周年を迎えた年に伝統的な男子校から新しく学部を開設し男女共学校となった。
理系教科の教師と言うことで直接教壇で授業を受ける事の無い女子生徒たちにもその類稀な容貌と白衣を纏った姿、そして理系男子に似合う眼鏡(実際は視力も良く伊達メガネ)のその姿から瞬く間に人気を集め「カイちゃん」の愛称で親しまれた。
さらに堂島 海里は応徳学園OBであり、在校中にはハンドボール部のキャプテンとして2度全国大会で優勝を果たしている。
まさに頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能と三拍子を兼ね備えていた。
ただ一つファッションセンスをのぞいては…非常に残念なことだが。
――――――――――――――――――――――――
↑↑↑↑↑↑
ピキーン!
「!!!!!まずい!何か今、先生の事が語られてる気がする!」
「大丈夫か?月斗!語られるって誰に?」
唐突に喋りはじめた月斗に陸が声を掛ける。
「ワルイ!取り乱してしまった。」
「ああ、しっかりしてくれよキャプテン!」
陸に声を掛けられ月斗は辛うじて落ち着きを取り戻した。
スマホで時間を確認すると丁度、堂島 海里がアナの中に入ってから30分が過ぎようとしていた。
「30分たった…時間だ。」
「どうする?月斗(げっと)」
「ああ」しばらく沈黙したあとに
「気付いたか?さっきまで鮮明に伝わって来た女王アリの思考が止まっているのを?」
「ああ、全く聞こえなくなった。」陸はそう答えると堂島の入っていったアナを眺めた。
「嫌な予感がする。」
「先生に何も無ければいいけど…」
「やめろ陸!それは言うな!」
「………」残された生徒5人は互いに顔を見合わせる。皆が額に汗をじんわり滲ませながら立ち尽くす。
「行こう!」月斗はそう言うと意を決した様に語気を強めた。
「外にはアリの衛兵がいる。このままココにいるより先に進もう!」
「お前がそう決めたんなら俺はお前に従う!」
陸がそう切り出すと
「ボクも月斗先輩について行きます。」
この中で唯一の1年の梶も答えた。
「…………」
「声小っさ!」
「オレも月斗に賛成だ!と駿も言ってる。オレも賛成だ」
一同はお互いに顔を見合わせ自然と円陣を組み始めた。
皆が一斉に片手を差し出して順番に手を重ね合わせた。
「行くぞ!」
「おお!」「おお!」「おお!」「…」「おお!」
※
「よし!行くか!」と意気込んだ月斗に
「月斗後ろ、後ろ!」と陸が声を掛ける。
振り返ると堂島が月斗の後ろに立っていた。
なんか肩透かしを喰らった様に「…………」
「ああ!良かった!無事だったんですね!先生のセリフが大体死ぬヤツだったので!良かったです。」と月斗が声を掛ける。
「そうですね!この中だと真っ先に年長の人とか師匠とかが大体死ぬヤツだったので良かったです。」と陸が続く。
「大体、大事なモノを預けるとか、大体死ぬヤツだったので良かったです。」梶もそう言うと
「…………」ボソボソと淡路 駿が喋る。
「声、ちっさ!」一同が一斉につっこむ。
「手を怪我してかすり傷だ!とかって大体死ぬヤツだったので良かったです。って言ってます。」淡路 駿の小さな言葉を道修 空太が代弁する。
「すまん心配かけたな!」堂島は額から白い液体をべっとりと垂らしながら生徒達に声をかけた。
「先生!その頭についてるネバッとしたのって何なんですか?大丈夫なんですか?」
「ああ、コレか…舐めてみたら蜂蜜みたいな味がしたな」
「!!!えっ!舐めたんですか?普通舐めます?」
「ああ、無意識にハナクソを食べるかの如く舐めた…」
「無意識にハナクソなんて食べませんよ!てか蜂蜜?アリなのに?」
「ああ!しかもコイツにはすごい栄養があるぞ!すごいお腹が満たされて体力が一気に戻る様な!」
よく見るとズボンの股間の辺りにもその白い液体がべっとりと付着している。
「センズ…ですか?」
「馬鹿言え!いくら1人になったからと言ってそんな事するか!」
何か急に怒りだした…
「いや、じゃ無くて…」
「まぁ、……そもそもアリはハチ目アリ科に属していてミツバチとアリは、スズメバチよりも種族としては近いんだ。恐らく栄養価の高い…」
「えっと、その話長くなりますか?」月斗が食い気味に言葉を遮った。
「………」
堂島は軽く咳払いをする。
「とにかく、この奥に女王アリの本体がいる」
「???」
「本体?本体って何ですか?」
「この巨大なのが女王アリじゃ無いんですか?」
少し勿体ぶって
「ソレな!とにかくみんなでこのアナを通って先に進むとしよう。」と堂島はアナを指差す。
そして思い出したかの様に振り返ると
「その前に大事なソレを返して貰えるかな?」と言って月斗に預けた鏡の様なサングラスを指指した。
本当に大事なものだった様だ。
兵庫県の西宮市にある私立応徳学園高等部の物理教師であり、日向月斗達の所属するハンドボール部の顧問である。
私立応徳学園は、堂島 海里が新任の教師となって2年目にあたる設立から100周年を迎えた年に伝統的な男子校から新しく学部を開設し男女共学校となった。
理系教科の教師と言うことで直接教壇で授業を受ける事の無い女子生徒たちにもその類稀な容貌と白衣を纏った姿、そして理系男子に似合う眼鏡(実際は視力も良く伊達メガネ)のその姿から瞬く間に人気を集め「カイちゃん」の愛称で親しまれた。
さらに堂島 海里は応徳学園OBであり、在校中にはハンドボール部のキャプテンとして2度全国大会で優勝を果たしている。
まさに頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能と三拍子を兼ね備えていた。
ただ一つファッションセンスをのぞいては…非常に残念なことだが。
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ピキーン!
「!!!!!まずい!何か今、先生の事が語られてる気がする!」
「大丈夫か?月斗!語られるって誰に?」
唐突に喋りはじめた月斗に陸が声を掛ける。
「ワルイ!取り乱してしまった。」
「ああ、しっかりしてくれよキャプテン!」
陸に声を掛けられ月斗は辛うじて落ち着きを取り戻した。
スマホで時間を確認すると丁度、堂島 海里がアナの中に入ってから30分が過ぎようとしていた。
「30分たった…時間だ。」
「どうする?月斗(げっと)」
「ああ」しばらく沈黙したあとに
「気付いたか?さっきまで鮮明に伝わって来た女王アリの思考が止まっているのを?」
「ああ、全く聞こえなくなった。」陸はそう答えると堂島の入っていったアナを眺めた。
「嫌な予感がする。」
「先生に何も無ければいいけど…」
「やめろ陸!それは言うな!」
「………」残された生徒5人は互いに顔を見合わせる。皆が額に汗をじんわり滲ませながら立ち尽くす。
「行こう!」月斗はそう言うと意を決した様に語気を強めた。
「外にはアリの衛兵がいる。このままココにいるより先に進もう!」
「お前がそう決めたんなら俺はお前に従う!」
陸がそう切り出すと
「ボクも月斗先輩について行きます。」
この中で唯一の1年の梶も答えた。
「…………」
「声小っさ!」
「オレも月斗に賛成だ!と駿も言ってる。オレも賛成だ」
一同はお互いに顔を見合わせ自然と円陣を組み始めた。
皆が一斉に片手を差し出して順番に手を重ね合わせた。
「行くぞ!」
「おお!」「おお!」「おお!」「…」「おお!」
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「よし!行くか!」と意気込んだ月斗に
「月斗後ろ、後ろ!」と陸が声を掛ける。
振り返ると堂島が月斗の後ろに立っていた。
なんか肩透かしを喰らった様に「…………」
「ああ!良かった!無事だったんですね!先生のセリフが大体死ぬヤツだったので!良かったです。」と月斗が声を掛ける。
「そうですね!この中だと真っ先に年長の人とか師匠とかが大体死ぬヤツだったので良かったです。」と陸が続く。
「大体、大事なモノを預けるとか、大体死ぬヤツだったので良かったです。」梶もそう言うと
「…………」ボソボソと淡路 駿が喋る。
「声、ちっさ!」一同が一斉につっこむ。
「手を怪我してかすり傷だ!とかって大体死ぬヤツだったので良かったです。って言ってます。」淡路 駿の小さな言葉を道修 空太が代弁する。
「すまん心配かけたな!」堂島は額から白い液体をべっとりと垂らしながら生徒達に声をかけた。
「先生!その頭についてるネバッとしたのって何なんですか?大丈夫なんですか?」
「ああ、コレか…舐めてみたら蜂蜜みたいな味がしたな」
「!!!えっ!舐めたんですか?普通舐めます?」
「ああ、無意識にハナクソを食べるかの如く舐めた…」
「無意識にハナクソなんて食べませんよ!てか蜂蜜?アリなのに?」
「ああ!しかもコイツにはすごい栄養があるぞ!すごいお腹が満たされて体力が一気に戻る様な!」
よく見るとズボンの股間の辺りにもその白い液体がべっとりと付着している。
「センズ…ですか?」
「馬鹿言え!いくら1人になったからと言ってそんな事するか!」
何か急に怒りだした…
「いや、じゃ無くて…」
「まぁ、……そもそもアリはハチ目アリ科に属していてミツバチとアリは、スズメバチよりも種族としては近いんだ。恐らく栄養価の高い…」
「えっと、その話長くなりますか?」月斗が食い気味に言葉を遮った。
「………」
堂島は軽く咳払いをする。
「とにかく、この奥に女王アリの本体がいる」
「???」
「本体?本体って何ですか?」
「この巨大なのが女王アリじゃ無いんですか?」
少し勿体ぶって
「ソレな!とにかくみんなでこのアナを通って先に進むとしよう。」と堂島はアナを指差す。
そして思い出したかの様に振り返ると
「その前に大事なソレを返して貰えるかな?」と言って月斗に預けた鏡の様なサングラスを指指した。
本当に大事なものだった様だ。
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