上 下
18 / 48
序章〜観測者

18. Recollection (回想3 南 千里) want to play handball(ハンドがしたいです)

しおりを挟む
 中学時代のみなみ 千里ちさと類稀たぐいまれなフィジカルを有し、高身長で長い手足とその身体能力の高さから1年の時から女子ハンドボール部のエースとして活躍をしていた。
 
 千里の通っていた関西小倉中学は、運動部の活動も盛んで、中高一貫教育の為、エスカレート式に高校へ進学しハンドボールを続けて行くつもりだった。

 

 3年の夏、関西小倉中学ハンドボール部は、全国大会で男女共に優勝を果たす快挙を成し遂げた。

 が無ければ、男子チームは無得点のまま敗退し優勝する事は無かった。

 て言うか1点も取れなかったチームに負ける決勝の相手って何?

 しかもこれまで2連覇してる学校でしょ?

 めちゃくちゃ強そうなのに何で0点のチームに負けるの?

 てか0点て?

 野球か?

 の○太のテストか?

 口には出さなかったが千里はそんな事を考えていた。

 夏の大会が終わり、9月の新学期が始まった頃、千里たち3年は部を引退する。

 エスカレート式に高校に進学する生徒がほとんどで、受験勉強をする必要がない為、卒業間際まで部に残る者もいるが一応節目として引退セレモニーと称して3年の男女混合チーム対1.2年の選抜チームによる対抗戦が恒例となっていた。

 千里も丁度1年前に選抜チームとして先輩達をこのセレモニーで送り出した事を思い出していると、男子部のキャプテンが千里に話かけて来た。

「南!今日は1.2年を軽くひねってやろうぜ!」妙に甲高い耳障りの悪い声だ。

「……」

 千里は、またフラグが立つのでそう言う事言わないでくれる?と口に出しそうになるのを抑えて無言で試合の準備に取り掛かる。

 尚もその男は、「優勝チーム男女キャプテンがお前らの相手をしてやるぜ!」と1.2年の混合チームに声をかけた!

「………」半ば呆れて黙っていると
「知ってるか?南!応徳の金髪の奴!高校でも大会に出れないらしいぞ!それと赤毛の奴もそれに付き合って大会には出ないって噂だ!ヒャハ!暴力を振るった報いだな!いっそ辞めちまえば良いのに!ヒャハ!」
「⁈」
「その噂、私も聞いた。」
 同じく引退をする千里のチームメイトが会話に加わる。
 千里はしばらく間を置いて

「ゴメン、私、あなたとは同じコートに立ちたく無いわ!私、この試合には出ません!」

「なっ!なっ!何を言ってるんだ?」

「私も千里と同意見だわ!」

「私も!」

 そう言って3年の他の女子も試合を放棄すると言い出した。

「敵チームとは言え、同じスポーツで頑張ってる人に対してそんな事言う人…なんか嫌だ!」千里がそう言うと

「なっ!なっ!なっ!なっ!アイツらがした事、肯定するってのか?」

「肯定はしない!暴力はダメだし!…でも否定するつもりも無い!けれどあなたの言動は否定する!」

「ふん!ふん!ふん!ふん!勝手に言ってろ!」

 男子部のキャプテンはそう悪態をついてその場を離れた。

 せっかく後輩たちが時間を割いてくれたセレモニーを無駄にしてしまったと言う後悔に千里が心を痛めていると女子部の後輩達が集まって来てくれた。

「先輩!大丈夫です!今日の事は、残念ですけど私たちも先輩方の意見に同意見です!」

 2年の次期キャプテンのかじ潮来いとこが千里達に声をかけてくれた。

「それで提案なんですが、私たちだけでちょっとした企画を考えてみます!なので先輩方、それには是非参加して下さいね!」

 女子部員が体育館をあとにして、男子部員のみがポツンと残された。

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 それから1週間後の日曜日、千里達は、新大阪駅で後輩たちと待ち合わせることになった。

 改札を出て後輩達と合流をすると駅の北口から西にしばらく行くとフットサルのコートがずらりと並んでいた。

 土日はさすがにコートの予約がいっぱいだったが、午後の14時から2時間Dコートを借りる事が出来たらしい。

 フットサルとハンドボールのサイズはコートやゴールのサイズもほぼ同じなのでプレーするにはここでも、問題無さそうだった。

 コートは、砂なしゴムチップなしの短い人工芝の為、ドリブルを無理にしようとすればイレギュラーしたり、跳ね返りが無い為パスのみになりそうだった。

 ここの人工芝はショートパイルで、フットサルとして使うと、パススピードが上がりやすくコートサイズも16m×28mと初心者でもプレーしやすくて人気だ。

 ハンドボールコートとしては小さいがストリート形式で楽しむには申し分無さそうだった。

 後輩達に招かれるままクラブハウスに入り、ロッカーに荷物を置いてユニフォームに着替え終わりコートへ3人が到着すると梶 潮来達、1.2年の在籍メンバーが全員で千里(ちさと)達を3人を歓迎してくれた。

「先輩、よく来てくれました!」と梶はそう言うと

「もうすぐ対戦相手も到着すると思うんで、それまで軽く身体動かしませんか?」

「対戦相手?」

 と不思議に思っていると間もなくしてクラブハウスから目立つ髪色のユニフォーム姿の男子達があらわれて千里達のコートに向かって来た。

「えっ?あれは!」

「ええ、実は私の従兄弟いとこが応徳学園のハンドボール部にいるんです!」

「…?」

「せっかくなんで、私たちと応徳学園で交流試合を組んでみました。コートのサイズは小さいですが、レクリエーションって感じでストリートハンドボール形式で楽しめば問題無いかと…」

 梶 潮来はそう言うと

「大ちゃん!こっちこっち」

 と言って応徳学園のユニフォームを着た天然パーマの10番の少年に手を振った。

 その集団の中に、赤毛の2番、RBと金髪のLB、3番の姿もあった。

 応徳学園の選手達は千里達の方にやって来ると一礼をした。

「俺、日向 月斗って言います!今日はありがとう、こんな機会を与えてくれて。」と言って千里に右手を差し出した。

 左利きの千里は咄嗟に左手を出しそうになったがすぐに引っ込めて右手を差し出し握手をした。

 中学生で挨拶として握手をしてくる異性も珍しかったのと、千里よりも背が低いのに身長からは想像がつかないほど、がっしりと鍛えあげられた硬く大きな手がとても印象的でドキドキした。

「あの試合…残念だったね…」と千里は言い出しそうになったが

「こちらこそ、よっ、よろしく。」とだけ答えた。

 その年の夏の大会の覇者となった関西小倉高校女子ハンドボール部のフルメンバー対、応徳学園中等部の対戦がここに実現した。

 和気あいあいとした雰囲気の中、全員がプレーを楽しんだ。

 中でも千里はこれまで戦ったどんな対戦相手とのゲームよりもこの目の前にいるチームとのプレーが1番に楽しかった。

 彼らのプレーをこれから、高校に進学しても各大会などで見る事が出来ないと思うと残念で仕方が無かった。

 あっという間の2時間が過ぎて、コートを後にしなければいけなくなった時、千里は、とても気持ちが昂って、赤毛の少年に

「また、あなたとハンドがしたいです!」

 千里は思わず出た自分のセリフが、ハンドボールの事をハンドって言ってしまった事や同学年なのに敬語っていうとこなど、頭の中がぐるぐるする感じがしてとても恥ずかしくなり、その場にうずくまってしまった。

 すると赤毛の少年は、優しい目をして千里に手を差し伸べながら

「俺も、そう思ってたんだ!」と告げニッコリと微笑んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...