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第26章 慶子の上京

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 われわれは愛に飢えた人々の元へ出向き、身の回りの世話や世間話、肩をもんであげたり、お茶を飲んだりなど、愛を注ぐのだ。社会貢献にはさまざまな種類がある。それを実践するアイデアはわれわれの優れた、研ぎ澄まされた脳を活性化し、愛を普及することにある。ともに、手をつなぎ愛を広げることにまい進しよう」
 慶子は壁に掛けられたパネルの文字を読み進める。読むに従い慶子の心臓の鼓動が速くなる。大学生がボランティア活動を目的とするサークルとは言え、あまりにも組織的で、企業からは多額の支援を受けて奉仕活動をしている。
 なるほど、お年寄りの中には、年金以外に、役員報酬、株主配当など、公にはできない収入を得ている人もいる。つまり、収入のあるなしにかかわらず、このスタッフから受ける愛を、感謝という形の謝礼を差し出すのだ。有償サービスではあるが、決して営利目的ではない。ここには無償の愛を提供する、という基本理念がある、と書かれていた。
 慶子には無償の愛という意味が不明だった。見返りを求めない愛、ということは察しが付いた。それがボランティア精神の基本なのだ。つまり、すべてが無償ではやっていけない、でも、基本は無償、ということなのだろう。
 低収入の個人向け、高収入の個人向け、など、金額に悩まないよう、サービスを受ける人の所得により、本部でサービスの価格を設定している。お金のある人からは満足したサービスに素直な気持ちで感謝をしてもらう。感謝の数量化、実体化したものが金額である。お金持ちはお金のない人にその恩恵を共有する。今田ファンクラブは手厚いサービスを区別することなく愛を欲する人々に平等に提供する。
 パネルを読み進めていた慶子は今田純子の掲げる「世界を愛で変える」スローガンに深く感動し、今田純子の熱い志、理念に感銘した。慶子は目を閉じ、愛に満ちた世界をイメージして興奮した。
「純子さま、なんて素敵なかたなのかしら……」
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