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窓野枠

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第23章 幸せの共有

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「え? だって純子さまからきょうは残業しないから、遊びに来てね、って…… 電話があるんですけどぉー」
 純子は慶子の言葉に驚いた。自分がいつ慶子に連絡をしていた、というのだろう。全く記憶がない。昼と、夜の純子の統合がなかなか完全にいっていない。20年以上も人格が分離していたのだから、経験をリアルタイムで共有するには、まだ、時間が掛かるに違いない。分離はあっという間だった、というのに。それの逆だ。20年以上の歳月を統合するのはたやすくない。
 そう思った純子が、テーブルに用意されている席に座ろうと見ると、4人分のナイフとフォークが置かれていた。ワイングラスも4人分、置かれていた。
「あら? 慶子さん、どうして4人分なの?」
 純子が慶子に声を掛けた。ピンポーン そのとき、訪問者による呼び出し音が響いた。純子が壁についているモニターを見るために近づいた。そこには植木係長が写っていた。
「植木さん、お待ちしていましたわ、どうぞ、お入りになって」
 即座に答えた潤子の声に反応した植木がにっこりと笑った。夜の人格・潤子が植木を自宅に招いていたことに驚いた。純子はモニターの前で固まっていた。どんな顔をして植木を迎え入れたらいいのか分からない。職場以外で会うのは緊張する。キッチンを見ると、相変わらず、進一と慶子は何か会話しながら楽しく料理を作っている様子だ。
「ねえ? これから植木係長が部屋にいらっしゃるわ」
 純子が慶子に声を掛けた。
「はい、ちょうど料理が終了です。これから盛り付けて並べますわ」
「慶子さん、ちょっと教えてくれるかしら? あたしの記憶がまだ完全に戻らないのよね。植木さんはよくこちらへいらっしゃるのかしら?」
「はい、植木さんをお呼びするとき、あたしが料理人みたいに呼ばれています」
「そうなのね? 何回目くらいになるのかしら? 進一はどうしていたのかしら?」
「何を言ってるのさ、僕の部下を私的に使っていて僕が帰らないわけないだろ? いつだって一緒さ」
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