トライアングルパートナー

第16章 純子の不安

４

　慎之介は額を床に接触させていたが、冷や汗が床に垂れていた。
「オオオォー　慶子ちゃんの笑顔はいつ見てもステキだねぇー　戻ったねぇー　いいねぇー　慎之介ちゃん、慶子ちゃんを悲しませたらだめだからねぇー　もし、また、慶子ちゃんが泣いたりした顔を見たら、おいら、怒り狂っちゃうかもぉー　ね？　分かってるよね？　じゃ、気ばってぇーなぁーーーーぁーー」
　エロＭエッサイ無の語尾の声が少しずつ小さく消えていった。慎之介は床につけていた額をゆっくり持ち上げた。上半身を起こした後、大きく息をはいた。
「フゥー　そういえば、あれから、慶子ちゃんは大丈夫かなぁー　様子でも見てこようかな、進一と、どうなったろ？」
　慎之介のエロＭエッサイ無からの指令は人類愛を拡散させることだった。つまり、だれでも分け隔てなく愛し合うことだ。エロスにまみれた社会は人類を歓喜させる。エロＭエッサイ無様はその喜びを、歓喜にあふれた雄たけびを見るのが大好きなのだ。
　先日、小山内慶子から「彼氏ができない」というクレームを受けた。なぜか、エロＭエッサイ無様は小山内慶子とどういう関係なのか。慶子に特別に目を掛けるように、と言う指示だ。
　その場しのぎで、ヒトメボレを使って、自ら慶子の彼氏になった。慶子は自分の能力を理解していないようだが、隠された能力を開眼したら恐怖で社会はこんとんとするかもしれない。それほど、大きな存在だ。そこで、今田進一という男の存在を思い出した。
　ヒトメボレのプログラムを修正し、同じ職場で働く今田進一と小山内慶子を相思相愛の関係にすることができた。慶子は進一に一目ぼれし、進一も慶子に一目ほれさせた。その後も、アプリの効果は順調である。このまま、口コミでヒトメボレのうわさが広がるだろう。そうなれば、数年後には人間界の人類のだれもが相思相愛になり、人類愛にあふれる。