トライアングルパートナー

第14章 三人の会食

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　慶子は係長の妻の名前を聞いた日の夜、興奮して寝られなかった。係長に妻がいたことも驚きではあったが。あの輝かしい容姿とりりしいオーラーを放ったスーパーキャリアウーマンである純子様が、こともあろうに、今田係長の妻とは、この、たった今の、この昼食の席を目の当たりにするまで信じられないことだった。
「えっ？　今田係長とあの純子様はやはり夫婦なの？」
　慶子はこの事実に失望が湧いたが、なぜという疑念を瞬時に抱いた。慶子の疑念は当然のことだ。さかのぼるが、フツメンの進一と超美ぼうの純子が交際していた当時、周囲は暖かな目で見た。若い頃の純子はまだ頭角を現していなかった。あのころ、だれもがスーパーキャリアウーマンの純子を神さま、仏様、弁天様、生き神様とたたえるまでになっていなかった。慶子はオーラを放つ純子の姿しか知らない。
　慶子の熱い思いを向けた純子様が、目の前にいる。自分の満身の料理を純子様が食べようとしている。慶子は熱烈な恋心に近い思いを心中に描き、純子を昼食に誘った。慶子の恋心を知らない純子は、弁当を見つめた。純子の弁当の印象は。
「まあ、手堅く日本食なのね。玉子焼き、芋の煮っころがし、きんぴらごぼう、伝統的な日本料理ばかりだわ」
　その中で、ひときわ、黄色に輝く卵焼きが目に入った。適度な歯ごたえのある卵は口の中でかみしめると、ふわーと溶けるように味が広がった。甘くなく塩辛くもない甘みである。純子は口の中に広がるうまみを飲み込んだ。
「慶子さん、この卵焼きは口の中でふわーと溶けるように広がってほんのりした甘みが絶妙に美味しいわ」
　純子は慶子の顔を見つめた。隣りにいる進一も純子の言葉に頭を上下に振ってうなずく。