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第12章 ゲームの対戦相手
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「ふーーん、あんたって、なんかさ、営業トークが上手で、遊び人、って感じだよね? こうして、口説いてものにした女はあたしで何番目くらいなの?」
慶子は今まで自分は自由な生き方ができない生い立ちだったが、犯罪には巻き込まれないで生きて来られた。それも、きょう限りで終わりか、と思いながら、慎之助の顔を見る。どう見ても犯罪者の顔ではないが、人は外見で判断してはいけない、と言う。やはり、第一印象は大事である。初めての男としては及第点であろう、と自ら納得させた。仮に、このまま、こいつと結婚し、小山内グループのトップを務めることができるか、という不安が湧き上がる。父に反対されたら、駆け落ちするのか、というあり得ない未来も考えていた。それほど、この男を愛しているという感情がない。ヒトメボレが感情をプログラムしてくれるのだろうか。
父はゲームを作る男との結婚は許さないだろう。それより、今、これからが問題だ。今までたくさんの男と付き合ったが、肉体関係にまで発展しなかった。相手の男に対し、慶子がセックスしたい、と思わなかったからだ。だから、彼女はまだ経験したことがない。慶子は、これからこいつとセックスをするとなったら、すごく緊張してきた。
「えぇ? 彼女? 何番目も何も、きみが初めてさ」
慎之助はそう言った。こいつ、男なのに、セックスをしたい、とか今まで考えたことがなかったのだろうか。慶子は慎之助の言葉を疑った。慶子は彼を同じ人間と思っているから当然だ。慎之助は、恋の橋渡しをする使命に一生を捧げるためだけに、修業をして生きてきたことを慶子は知らない。彼は、神の使いに昇格することに希望をいだいてきた。それが女神の思いがけない一言で悩んだ。彼は悩みに悩んで、気が付いたら、天界から転落し、落ちぶれ、今は、人間に限りなく近づいている境遇なのだ。
「もちろん、女性とはお付き合いしたことはないよ。きみが初めてになるな。だから、よろしくね。ネクタイを引っ張ったりするなんて刺激的で驚いたよ」
慎之助は片手でネクタイを摘むと、ヒラヒラゆらした。
「あんた、そういうのが好きなの?」
「うーん、苦しいな、って思ったけど、あの感覚は悪くなかったね」
「そうなの? じゃさ、もっとやってあげようか?」
「ああ、僕はかまわないさ。さあ、店を閉めて上へ行こうよ。戸締まりしてくるね、待ってて」
慎之助は立ち上がると、店長室のドアをあけて店に行った。店内の照明が消されて暗くなった。ソファーに座った慶子は足が震えてきた。しばらくして、慎之助が戻った。
「お待たせしました」
慎之助は慶子の手を引いてエスコートする。なんか、いい雰囲気ね、と慶子は彼の横顔を見た。慎之助は店長室の隅までエスコートし、金属製のドアの前に立った。脇のボタンを押すと、ドアがスーと音を立てて開いた。
「さあ、どうぞ」
慎之助がドアの方へ手を引きながら慶子を先に入れた。四角い狭い空間? 慶子は緊張した。エレベーターの箱みたいに思えた。
「えぇっ? ここ2階建てだよね? なんでエレベーターなわけ?」
慶子は今まで自分は自由な生き方ができない生い立ちだったが、犯罪には巻き込まれないで生きて来られた。それも、きょう限りで終わりか、と思いながら、慎之助の顔を見る。どう見ても犯罪者の顔ではないが、人は外見で判断してはいけない、と言う。やはり、第一印象は大事である。初めての男としては及第点であろう、と自ら納得させた。仮に、このまま、こいつと結婚し、小山内グループのトップを務めることができるか、という不安が湧き上がる。父に反対されたら、駆け落ちするのか、というあり得ない未来も考えていた。それほど、この男を愛しているという感情がない。ヒトメボレが感情をプログラムしてくれるのだろうか。
父はゲームを作る男との結婚は許さないだろう。それより、今、これからが問題だ。今までたくさんの男と付き合ったが、肉体関係にまで発展しなかった。相手の男に対し、慶子がセックスしたい、と思わなかったからだ。だから、彼女はまだ経験したことがない。慶子は、これからこいつとセックスをするとなったら、すごく緊張してきた。
「えぇ? 彼女? 何番目も何も、きみが初めてさ」
慎之助はそう言った。こいつ、男なのに、セックスをしたい、とか今まで考えたことがなかったのだろうか。慶子は慎之助の言葉を疑った。慶子は彼を同じ人間と思っているから当然だ。慎之助は、恋の橋渡しをする使命に一生を捧げるためだけに、修業をして生きてきたことを慶子は知らない。彼は、神の使いに昇格することに希望をいだいてきた。それが女神の思いがけない一言で悩んだ。彼は悩みに悩んで、気が付いたら、天界から転落し、落ちぶれ、今は、人間に限りなく近づいている境遇なのだ。
「もちろん、女性とはお付き合いしたことはないよ。きみが初めてになるな。だから、よろしくね。ネクタイを引っ張ったりするなんて刺激的で驚いたよ」
慎之助は片手でネクタイを摘むと、ヒラヒラゆらした。
「あんた、そういうのが好きなの?」
「うーん、苦しいな、って思ったけど、あの感覚は悪くなかったね」
「そうなの? じゃさ、もっとやってあげようか?」
「ああ、僕はかまわないさ。さあ、店を閉めて上へ行こうよ。戸締まりしてくるね、待ってて」
慎之助は立ち上がると、店長室のドアをあけて店に行った。店内の照明が消されて暗くなった。ソファーに座った慶子は足が震えてきた。しばらくして、慎之助が戻った。
「お待たせしました」
慎之助は慶子の手を引いてエスコートする。なんか、いい雰囲気ね、と慶子は彼の横顔を見た。慎之助は店長室の隅までエスコートし、金属製のドアの前に立った。脇のボタンを押すと、ドアがスーと音を立てて開いた。
「さあ、どうぞ」
慎之助がドアの方へ手を引きながら慶子を先に入れた。四角い狭い空間? 慶子は緊張した。エレベーターの箱みたいに思えた。
「えぇっ? ここ2階建てだよね? なんでエレベーターなわけ?」
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