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第8章 二人だけの執務室

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 次の朝、進一が職場の事務室のドアを開けて入る。進一は4人を部下に持つ係長というポジションである。進一の座る係長席の右側に二人。反対側に二人。4人を補佐するかのように進一は窓を背にして4人の横顔を見るように座っている。すでに、去年、入った新人の小山内慶子が右側奥の机に座り、いつものように手にしたスマホをのぞいている。
「おはよ…… 小山内くん、いつも早いね……感心だ…… そのだれよりも早く来て仕事をしようという意欲がいいね」
 進一が小山内慶子に声を掛ける。新人は褒めて育てろ、と人事部長からしつこく言われて実践中なのだ。そんな浮いた褒め言葉は掛けたものの、心中では他のことを考えていた。朝、早く来たんだから、スマホなどを見てないで、早く仕事に取り掛かってもいいものを、と思っている。慶子は、言葉とは反対の進一の心中の気持ちなど知る由もない。彼女は朝一からスマホの小さな画面を見ることが大事な一日を左右する儀式みたいなものなのである。特にきょうの占いは絶対はずせない。進一は座っている慶子の後ろを通りながら、自席に着く。せめてあいさつくらい、あのとびっきりの笑顔でしてくれるとうれしいのだが、と毎回、通り過ぎるたびに思いながら自席に着く。
「なんだろねー 早く来ても、机の上を拭くわけでもなく、スマホをいじってるのか…… 2年目になっても、今どきの何も知らない新人そのものだね」
 あいさつもろくにしない慶子を見ながら心中でつぶやく。席に座って、改めて慶子の横顔を見ながら、ノートパソコンの電源スイッチを入れた。
 ピピーピピーピピー
 進一の背広の内ポケットに入れた例のヒトメボレの呼び出し音が鳴った。ポケットから取り出し、小さなパネルを見た。文字が表示されていた。

 係長さん、おはようございます。
 ごめんなさい、スマホに夢中で気が付きませんでした。これからは気をつけます。

  慶子
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