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第16章 新天地へ
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「えぇーーい、本日の儀式は中止じゃ、」
家臣はそう言って直ぐ、仁美の後を追っていった。仁美は王の寝室にこもってドアを閉じた。
「あぁー わたしは何で、席を立ってしまったの?」
仁美はしばらく考えていた。そしてハーレムに夜がやってくると、仁美は寝室を出て勘太郎が監禁されている牢獄の前にやってきた。勘太郎は穴蔵の隅に体を丸くして横たわっていた。
「ねえ? わたし…… あなたを助けたい……」
仁美は背中を向けた勘太郎に小さな声で話し掛けた。恐怖で寝られないでいた勘太郎は体を反転させ仁美に顔を向けた。
「おまえらは俺を無理矢理連れてきて、何を言うんだ。このけだものめ、ここから抜け出して、おまえらを一人残らず殺してやるからな」
勘太郎は寝ていた上体を起こして大声を上げた。
「おまえのツラを見せろ」
勘太郎は暗い穴蔵の奥から四つん這いになって柵の前まで這ってきた。彼は仁美を見て驚いた。
「おい、ウソだろ? きみはなんて美しいんだ」
仁美の姿に見入ってしまった彼はその後の言葉が出なかった。
「あなた、なんてうれしいことを言うの? わたし、うれしい、すごく……」
仁美は勘太郎に笑顔で声を掛けた。仁美のいかめしかった顔が彼の声を聞いて満面の笑顔に変わったのだ。彼女の心臓がドキドキドキドキ、激しく速く脈打つ。走ってもいないのに鼓動がどうして速まるのか彼女には分からなかった。
彼女がその理由を認知したとき、新けだもの族が誕生するのかもしれない。
「こらぁー そんなうまいこと言ってもなぁー 俺は狼男だぞ、おまえなんかこの柵を出たら、その美しい体にかぶりついてなぁー 首筋を一口でかみ殺してやるからなぁー」
牢屋の柵を両手で握りしめる彼は、心からそう思って仁美の体を見つめた。
「おい、おまえ、いいなぁー かみ殺すにはもったいないなぁ…… いいや、ぜってぇ、殺す」
家臣はそう言って直ぐ、仁美の後を追っていった。仁美は王の寝室にこもってドアを閉じた。
「あぁー わたしは何で、席を立ってしまったの?」
仁美はしばらく考えていた。そしてハーレムに夜がやってくると、仁美は寝室を出て勘太郎が監禁されている牢獄の前にやってきた。勘太郎は穴蔵の隅に体を丸くして横たわっていた。
「ねえ? わたし…… あなたを助けたい……」
仁美は背中を向けた勘太郎に小さな声で話し掛けた。恐怖で寝られないでいた勘太郎は体を反転させ仁美に顔を向けた。
「おまえらは俺を無理矢理連れてきて、何を言うんだ。このけだものめ、ここから抜け出して、おまえらを一人残らず殺してやるからな」
勘太郎は寝ていた上体を起こして大声を上げた。
「おまえのツラを見せろ」
勘太郎は暗い穴蔵の奥から四つん這いになって柵の前まで這ってきた。彼は仁美を見て驚いた。
「おい、ウソだろ? きみはなんて美しいんだ」
仁美の姿に見入ってしまった彼はその後の言葉が出なかった。
「あなた、なんてうれしいことを言うの? わたし、うれしい、すごく……」
仁美は勘太郎に笑顔で声を掛けた。仁美のいかめしかった顔が彼の声を聞いて満面の笑顔に変わったのだ。彼女の心臓がドキドキドキドキ、激しく速く脈打つ。走ってもいないのに鼓動がどうして速まるのか彼女には分からなかった。
彼女がその理由を認知したとき、新けだもの族が誕生するのかもしれない。
「こらぁー そんなうまいこと言ってもなぁー 俺は狼男だぞ、おまえなんかこの柵を出たら、その美しい体にかぶりついてなぁー 首筋を一口でかみ殺してやるからなぁー」
牢屋の柵を両手で握りしめる彼は、心からそう思って仁美の体を見つめた。
「おい、おまえ、いいなぁー かみ殺すにはもったいないなぁ…… いいや、ぜってぇ、殺す」
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